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【やさしさの方程式】やさしさ=想像力×創造力×他者への関心

☆「自己責任」はいつから?

あなたがもし、2006年10月27日に改訂された国語辞典、『大辞林』第3版を手にする機会があったら、ぜひ「自己責任」という言葉を引いてみてほしい。(ちなみに最新版は2019年9月5日に出た第4版である。)

…見つからないはずだ😝

私が確認した中では、最初に「自己責任」という語が辞書に登場したのは2008年1月11日に改訂された『広辞苑』の第6版である。

そこにはこうある。

【自己責任】(じこせきにん) 自分の判断がもたらした結果に対して自らが負う責任。

このことからもわかるように、「自己責任」という日本語を私たちが日常的に使い始めたのは比較的最近になってからである。やさしさの対極にある、とても冷たい言葉であるように思う。日本人は元々やさしくないから「自己責任」という言葉が生まれたのか、それとも「自己責任」という言葉が生まれたから日本人はやさしくなくなったのか、あるいはその両方か。

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☆松下幸之助

今から126年前、1894年11月27日に生まれた松下幸之助は、20代で今の「パナソニック」を創業した。当時の日本において、家事は女性の労働であった。食事の支度、洗濯や掃除に追われる日本の女性たち。その姿を「想像」し、もっと家族団欒の時間を持つためにどうしたらいいかと考えた松下幸之助は、炊飯器や洗濯機や掃除機など、さまざまな家電製品を「創造」した。家事にかかる時間を大幅に短縮できたことが、今日における女性の社会進出の大きなきっかけになったことは疑いようがないだろう。海外からの来賓に「私は、日本の女性を台所から解放したんですよ」と松下幸之助が言ったというエピソードもあるそうだ。

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☆ジェンダー・ギャップ指数121位の日本

というわけで、技術的には女性の社会進出、男女平等はすぐに達成できそうであるが、しかし残念ながら日本人の意識や民度は技術に追いついていないようだ。

日本は、ジェンダー・ギャップ指数が世界153か国中121位(2020年)。残念ながら、世界でも有数の、女の子が虐げられている国となっている😭

✅東大生は20%未満、衆議院議員は10%程度しか女性がいない。民間企業における管理職や総合職もまだまだ女性は少ない。

✅医学部入試で、女の子というだけで180点満点のうち80点も減点していた酷い大学の存在も明らかになっている。

✅選択的夫婦別姓は未だ認められる気配すらなく、慣習的には女性が姓を変えないと法律婚ができない状態が長らく続いており女性のキャリアにとって重大な支障を来すに至っている。

まだまだ枚挙に暇はないがキリがないのでこの辺にしておく。今の日本を、天国から松下幸之助はどのようにご覧になっているだろうか。

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☆やさしさとは想像して創造できる力

人にやさしくできるきっかけとして、たまたま身近に男女差別で苦しんでいる就活中の女子学生がいたとか、たまたま知り合いに在日外国人がいたとか性的マイノリティの当事者がいたとか、そういうケースもあってもよいとは思う。やさしくできないまま一生を終えるのに比べればだいぶマシだ。

でも本当は、たとえ身近に苦しんでいる人たちがいなくても、そういう人たちを取り巻く状況を「想像」できる力が私たちには求められている。「自分さえよければいい」ではなく、自分と異なる他者の立場をどれだけ「想像」できるか。そして「想像」できた者だけが初めて、ではそういう人たちを苦しみから解放するにはどうすればよいのか、その仕組みや工夫を「創造」することができるのである。

もともと、日本は年間で2万人も自殺してしまう国だ。自殺率はG7でワーストワンである。若者の死因1位は事故や病気を大きく抑えて自殺がトップである。そこへきて、コロナ禍で例年以上に自殺者が急増、それも女性の自殺増加率が顕著に高いとの報道もある。

自己責任を声高に叫ぶギスギスした社会から、社会的連帯を重視したやさしい社会へ。そのためには私たちが弛まぬ思考により「想像」して「創造」し続ける努力をすることが必要だ。社会的弱者にやさしくできる、想像力と創造力に富んだ社会は、社会的弱者だけでなくあらゆる人にとって生きやすい社会であると私は信じる。

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☆やさしさの方程式

『晴れ、時々くらげを呼ぶ』という青春小説がある。(鯨井あめさん、著。講談社。)

作中で、主人公の所属する図書委員の先輩、矢延恋が好きな作家の言葉を引用する形でこのように発言している。私の大好きなセリフの一つである。

🍓「無関心であることは、人に優しくできないということだ。自分勝手であることは、感情の矛先を間違えるということだ。優しさの本質は他者への興味だ。」

やさしさの本質は他者への興味。至言であると思う。

「興味」という言葉を辞書で引いてみると、「ある対象に対する特別の関心」とある(デジタル大辞泉、小学館)。

だから、興味と関心はほぼ同じ意味と考えてよい。

関心とは、文字とおり「(他者やある対象に)関わろうとする気持ち」のことである。

つまり、誰かと関わりたいと想う気持ちこそがやさしさなのだ。

別の場面で矢延恋は、クラスメイトの「ある非行」を偶然見てしまった主人公に対して、やはり好きな作家の言葉を引用する形でこうも言っている。

🍓「見た限りは話を聞いてあげるなり、諭してあげるなり、何か手を差し伸べてあげるべきだよ。それが目撃者の義務であり、この世で生きていくために必要なことなんだって。」

「目撃者の義務」

この言葉に、私は「ああ、そうか」という気持ちを強く持った。

今となっては昔のことだが、私は司法書士として同性婚カップルの公正証書作成やシングルマザーの養育費請求訴訟、生活に困窮する方の生活保護申請の同行などいろいろやってきた。そのきっかけは、先輩から「知ってしまった者の責任」という言葉を教わったからである。社会問題に気づいてしまった以上、何とかしようと努力するのが法律家としての務めであると。

否、法律家だけでなく、この理はどんな人にでも当てはまるように思う。他者と積極的に関わろうとして初めて、他者の立場や気持ちを想像して、その苦しみを和らげる方法を創造することができるのだ。

🍎やさしさ=想像力×創造力×他者への関心

これが、私が長年かけて発見できた、日本や世界を男女平等でハートフルでピースフルにするための【やさしさの方程式】である。

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<参考文献>

🎄自己責任論の嘘(宇都宮健児、著。ベストセラーズ)

🎄晴れ、時々くらげを呼ぶ(鯨井あめ、著。講談社)


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