詩)小出川の彼岸花
稲穂が揺れる9月
追出橋から大黒橋まで
小出川に真っ赤な彼岸花が咲く
天上から赤い帯が降りてきて
地上に道を作ったようだ
なあ 親父 見えるか
親父が元気なころ
小出川まで歩いてきて
カワセミを見つけたことがあった
本当にあの時だけだった
カワセミを見たのは
あれ以来見たことはない
小出川は地元の守る会の人たちが
コンクリートで護岸を固めないようにずっと守ってきた河だ
春は河津桜に菜の花
梅雨の頃は紫陽花
そして秋は彼岸花
富士山が 花たちと重なる景色
親父を車いすに乗せて
桜を見たとき
少し寒かったけれど喜んでくれた
あの頃はまだマスクなしで動けた
親父の命日の9月
彼岸花の真っ赤な列
穏やかに
静かに
何かにとらわれるのはもう辞めて
そうっと生きたいと
独り思う
2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します