コールサック社様より、第二詩集「もぎ取られた言葉」が10月27日発売になりました。第1詩集「声を上げずに泣く人よ」ともども、よろしくお願いいたします。装画は前作に続きmichiakiさんです。 世界を解釈する際には、その地域で引き起こされている悲劇的な犠牲者の行為そのものを、「既成の言葉」を超えていく「新たな言葉」として認識していく必要がある。高細玄一氏の詩篇は現代詩の限定された言葉の美の世界を食い破っていき、不条理な世界の地域社会で犠牲者となって、この世界から抹殺されてい
来年3月で廃止になる美術館に向かった 美術館の入り口付近には「美術館をなくさないでください」と立て札がいくつも立つ 美術館の前は噴水が二つある池があり白鳥がのんびりと過ごしている 池は人工的な手入れが行き届き 池の周りにはベンチが配置され ヨーロッパのお城の前にある庭に佇んでいるような静かな時間が流れる こんな景色の前に立つとなにかを語らずにはいられない 家族のこと むかしからの習慣に囚われて来た自分の人生 ある者は30代で子どもを捨てて自分の好きな人と一緒になる道を選んだ
あくびが出る今日も。身体は疲れ切って考えることを拒否している。着やすい服とギリギリ出かけられる化粧。黒の汚れにくいニューバランスのスニーカー。仕事は立ち仕事。あくびが出るよ。止まらない。 期待しないで生きる。不明確なものを選ぶ時は周りに合わせる。めんどうなことには関わらない。 主語のない言葉の意味を探っても無駄だし。男はいつまでも女より上だと思いたい生きもの。幹部候補生募集とかそれノルマ押し付けられてるよね。そうやって押し付けられるよりあくびしてた方がいい。 ブーンとモー
インフルエンザの注射はあんたはいくらね?大阪では1000円だったよと母が言う 妻が今年は1万円以上するとか言う え~えそんなにするのか!あなたもインフルだけでもちゃんと打ってね歳なんだからいつも打ってないでしょ!と妻に念をされる まあそのうちにとかむにゃむにゃ返事をしておく 翌日の朝 母がインフルの注射を打ちに行く日 毎度のことだが朝からソワソワしている 洗面にこもってちゃんと準備し テレビを見ながらコートもちゃんと着て 立ったり座ったりして落ち着かない 病院に行くことは母
📖「温々」 📍文学フリマ東京39|な-20/温々 🗓12/1(日) 12:00〜開催! 📕イベント詳細→ bunfree.net/event/tokyo39/ c.bunfree.net/p/tokyo39/43079 #文学フリマ東京 試し読みできます。 ゆきのともしび「迷彩」部分 森耕「俺の本能」 https://c.bunfree.net/p/tokyo39/43079
別れというものはだいたいは個人的なものだ そして案外いきなりやってきたり する。 別れということが一枚の絵のように今日を形作る いつも乗っている電車の音 どんよりした空 何かに夢中になる若い女性 クーラーの音 ここにあるべきものと ここにないもの 遠くに薄く見える名前さえ意識したことがない山々 美しくもない木々 どこにでもある街並み コンビニの店員のテキパキとした応対 いつもと同じ いつもと同じそれなのに ないことだけが浮き上がる 別れ でもね 実は近くにいたりするんだ 昨日
世界野球プレミアム12を見ている 満塁のチャンスで牧がバッター ここはチャンスやね!牧は恐ろしい男やきっと打つとか盛り上がっていると 母がこういうところでいっちょん打たん いつもダメや ストライクが入るとほうらやっぱダメやとけちょんけちょんに言う いやいやストライクだけだからまだわからないだろと言っても もうダメやほら見てみ もうダメや と言って譲らない と 牧はしぶとく泳ぎながらセンター前にヒット!二点タイムリー! 母はそれでも1点じゃダメやと言うので いやいや2点入ったよ
ざわめきは人の声の集積だ ひとつの声が集まりあって 声は何かの暗号なる 自分を探して進んだつもりで穴におち 吸い込まれていく そんなことが何回あっただろう そんな時 空を見上げた 空の青さが染みた いつもある空なのに 誰も語ってくれぬことを ぼくに語ってくれるように そこにあった 「何も答えなくていいよ」そう言われたような気がして ぐるぐる考えてもしょうがない ひとはひとり そうなのだ この世界のどこかでなんとか自分で立とうとしている どちらを向けばいいか
天丼のどんぶりの底についたごはん粒を 一粒ずつ拾って食べる あの人は天丼の海老が好きだった 海老は尻尾が美味しいのよと前進座の公演を見たあとの深大寺そば 大ぶりの海老の尻尾をガリガリと音を立て食べた 女傑という言葉が浮かんだ 彼女と一緒に会社を経営していた連れ合いが亡くなった時 連れ合いには離婚せずにいた正式な妻がいたから 葬式に出られなかった 川崎の駅前蕎麦屋であの人を見た 悲しいくらい美しかった あの人は蕎麦が好きだった 川崎の登戸の蕎麦屋でほんとの蕎麦好き
11月7日、第19回難民映画祭が始まりました。オープニング上映会としてTOHOシネマズ六本木ヒルズシアター2で、10分の短編で詩の朗読劇「リスト:彼らが手にしていたもの」の上映と関根光才監督のあいさつがありました。 リスト:~は、難民となった人たちが何をもってまず逃げたかをそれぞれが語る構成です。お金、服、スマホ、バッテリー、バック、水筒。恐怖のさなか、生きるための最低限の持ち物。昨日まで普通の暮らしをしていた人々の明日を作るもの。関根監督はアメリカ大統領選挙のトランプ勝利
イスラエル占領軍の爆撃が激化し、状況が悪化する中でどこへもいけないパレスチナ人家族がガザ北部のジャバリア難民キャンプとベイト・ラヒヤへ避難した。 アメリカ大統領選挙の投票が一週間後という空白の時を狙って、世界中が沈黙する中、イスラエルのクアッドコプター機による虐殺が実行された。AI が搭載され顔認識機能を持つクアッドコプター機は子どもと女性が多数の93人を一瞬で殺害した。続いてベイト・ラヒヤにある住宅街へのイスラエル軍の戦闘機の爆撃が行われ、250人が犠牲になり、あとの人々
10月だというのに暑い日が続く 午後からはずっと母と一緒に過ごす 僕はやることがありずっとノートパソコンの前にいる 母はテレビを見ていたが なんも見るもんないねといい本を読みだす 僕はちょっと期日の迫った書き物があり16時くらいまで母とほとんど口を利かない 母がまだ晩御飯作らなくていいのね?と聞くので 大丈夫 今日は煮魚だからすぐできるからというと言うと ほら この前買ったカニカマ明日くらいで期限だからと言い出す 暗に早く使わないとと急かしているのだ この前スーパーで自分がこ
同じ時間の中で 生きている なにをしたのか なにをしなかったのか 同じ時間の中で 生きている 知ろうとしたのか 知らないままだったのか 同じ時間を生きている 知らないままで終わったのか 知らないふりをしたのか 同じ時間を生きている 生きている人間の上に祝福の花びらが降る 生きている人間の上に爆弾が炸裂する 同じ時間を生きている 子どもは親の肩にもたれてぐっすり眠る 子どもは父も母も殺されショックで震えている 同じ時間を生きている 目のまえの紅葉の景色におもわず微笑む
まともなものは だいたい地味だ 技巧ではない 根っこを持っている 上げ底では伝わらない 同情でもない 高潔な精神 魂の深さを 知る ヒバクシャという言葉が世界に伝わるまで 苦悩 差別 ためらい 自暴自棄 就職 結婚 あらゆるときに その声を上げるために ゆっくりと言葉を発しよう 迷うことがあっていいのだ 威勢のいいことばがどんなに薄っぺらいか 声にしないで読む 時代にじゃれあうことなく 測るのだ ほんものはどこにあるか じっと見つめ 声なき声を まともな声を発するものは
僕には昨日がなかった 明日も 少ししかなかった 今日はあるけれど 瞬間 いや ほんとうはなにもない ないのにあるようにしていて 繕っている もし好きな人に好きと言っていいなら 明日はぼんやり見えて来るが 言えない言葉 もともとないものが光 握りしめて 意思を持つ
言葉にしてみて 少なくとも 文字を書く あなたは 思っている その思いを どうか言葉に もっと言葉に 言葉とは 悲しいと書く 嬉しいと書く 言葉とは 空は青いと書くし 僕はあなたが好きだと書く 嫌いと思うことを書く 半端でわからないかもしれないけれど その空間を書く 書くと わかる 僕の気持ち あなたの迷い さよなら ごめん 歌ってみようぜ 言葉は書くと違う意味が出るんだ 暗い言葉が今日は嘘のように真っ赤になったり どうしよう 明日は ないのかもと思って 逆