【イベントレポ】スタートアップ3社がプロダクト開発の裏側を語る「ゲンバビト」
2月20日に、スタートアップ3社が語る!開発の裏側ーープロダクト開発の「ゲンバビト」と題し、グラム × トランスリミット × ヤプリの3社が、開発現場やチーム開発の進め方において実際に抱える課題や改善策、取り組みなどについてお話しするイベントを開催しました。
各社主軸としているプロダクトが異なる中で、開発手法や組織においてどのような工夫をしているのかを中心に、ゲンバならではのリアルな話が多くあがった本イベントの様子を、ちょっとだけお見せします。
登壇者のプロフィール
株式会社トランスリミット CTO 松下 雅和(まつした まさかず)
早稲田大学卒。 新卒でSIerに入社。世界ソフトウェア品質会議登壇。 2011年より株式会社サイバーエージェントへ転職し、3年間で7つのサービスの企画・開発・運用に携わる。
2014年10月に株式会社トランスリミットへ入社し、CTOに就任。 サーバサイドの開発からインフラ構築、運用、組織作りまで幅広く担当。現在は新規開発チームのプロダクトオーナーも兼任中。
今回のトークテーマは、「全世界6,500万ダウンロード達成! ヒットゲームを作り上げたチームの道のり」。
グラム株式会社 プロダクトマネージャー 城後 建人(じょうご けんと)
1993年 福岡県久留米市生まれ。中央大学商学部卒業。新卒でモバイルコンテンツ事業会社に入社。同年フリーランスのプロダクト・プロジェクトマネージャーとしても活動開始。
2016年よりグラム株式会社へ入社し、現在は性格傾向データをもとにした人材マッチングサービス「Jobgram(ジョブグラム)」のプロダクトマネジメントを担う。
今回のトークテーマは、「人が欲しいと思うものを『見つける』プロダクト開発」。
株式会社ヤプリ CTO室 室長 梶原 成親(かじわら なりちか)
新卒で入社したNTTを経て、楽天株式会社に入社。開発環境および生産性を向上するプロダクトオーナーを経験。スクラムでの開発および運用体制を確立する。その後2014年に、株式会社リクルートライフスタイルに入社し、HOT PEPPER Beautyの開発責任者を務める。SIer主導のレガシーな開発チームから自立させ、持続的に成長できるチームへ変革させる。
2016年には株式会社エウレカに入社し、開発チームのチームビルディング・情報システム管理・エンジニア採用・技術広報・CTO室責任者を歴任。2019年1月より、株式会社ヤプリにジョイン。
今回のトークテーマは、「チームの状況を見える化して自己組織化されたチームの作り方」。
では、いよいよゲンバビトがスタートです。
イベント最初のスピーカーは、トランスリミットCTO・松下 雅和さん(以下、松下さん)。
トランスリミットCTOが語る「ヒットゲームを作り上げたチームの道のり」
ハードワークをしない今があるのは、終電帰りの日々から
トランスリミットは、スマートフォン向けゲームアプリの開発・運用をしているスタートアップです。これまでに『Brain Wars』『Brain Dots』『Craft Warriors』をリリースしていて、全世界で累計6,000万ダウンロードを突破しています。
「世界に響くサービスをつくる」という会社のビジョンからトークがスタート。
松下さん
世界中のユーザーが楽しめるものを作りたい、だからシンプルかつ直感的なプロダクトづくりを意識しています。
今回のトークでは、開発の流れを「開発にあたって重視したポイント」「開発の進め方」「得たもの」という構成で、サービスごとにくわしく解説していただきました。
松下さん
前作の「Brain Wars」もシンプルでしたが、そこからよりシンプルにしようと。「触って数秒で面白さがわかる」という点を重視しました。
また、何度プレイしても毎回異なる状況をつくるランダム性と、ユーザー生成コンテンツ(User Generated Content)にしたことで運用しなくても上手くワークしていったタイトルでした。
そして、「Craft Warriors」開発時の苦労したエピソードも。
松下さん
これまでカジュアルゲームをリリースしてきたのですが、ここでミッドコアゲームを作りたいと。結果、開発に2年かかってしまいました。
この頃は残業が何日も続いたり、土日はテストプレイ、そして6回ものスケジュール延期……正直大変でした(笑)
この開発で得たものは、「最後まで頑張り続けられるメンバー」と語った松下さん。どれほど大変だったのかが垣間見えた気がした一言でした。
その後リリースしたハイパーカジュアルゲームの開発では、Craft Warriorsの開発経験から「開発期間3ヶ月」と先にスケジュールをかためる試みをしたのだそう。
松下さん
ハイパーカジュアルゲームの場合、一般的にこのくらいの短期間で開発しますし、無理なく年末商戦に合わせてリリースすることができました。
ここまでの開発エピソードを受けて、「これからのトランスリミットの開発はこうなっていくよ」というお話へ。
過去の経験を踏まえて、「ハードワークを避ける体制」が実現されていったんですね。
イベント時のスライドはすべてアップされているので、興味のある方はこちらからどうぞ。
続いては、グラムのプロダクトマネージャー城後健人(以下、城後)。
グラムのPMが語る「人が欲しいと思うものを『見つける』プロダクト開発」
いかに無駄な作業を減らし、最速で進むのかが成長の鍵だと思います
「人が欲しいと思うものを『見つける』プロダクト開発」というトークテーマで、グラムの開発現場における価値観、チームとしての動き方・考え方などを話してもらいました。
城後
今回は、僕がこの「Jobgram(ジョブグラム)」のプロダクト開発をする経験から学んだことをベースにお話ししようと思います。
今日のようにいろんな役割やポジション、さまざまな事業フェーズの方があつまる場だからこそのテーマでお話してできたらなと。
城後
人もお金も時間も限られているスタートアップにおいて、いかに無駄な作業を減らし最速で進むのかが成長の鍵になりますよね。
でもグラムでは、開発した機能がほとんど使われないということが度々ありました。
こうした状況からPMとしてどう考え、チームがどう動いていったのかというお話。「頑張って開発して実装したのに…」という城後の言葉に、会場の参加者が数名「わかるわかる」と頷く場面も。
これは、全ゲンバビトにとってのあるあるなのかもしれませんね。
城後
そうした無駄は省きたいけれど、「リリースしてみないと必要であるかどうかわからない」。
ではどうしたら、スピードを落とすことなく、効率よく不確実性を減らしていけるのだろう? と考えました。
ここから、無駄の少ない・スピードの落ちない開発を実現するために「最小単位での課題・解決策の検証」を実施したというエピソードへ。
グラムの運用環境についても詳しく解説してもらったのですが、今回のイベントで話した内容を、スライドと合わせてnoteに全てまとめてくれているので、ここでは割愛します。
ちなみにイベントレポの手を抜いたわけではなく、とてもわかりやすくまとまっているので(笑)、こちらのnoteでぜひくわしくお読みください。
会場でとくに感じたのは、「Google Apps Script(GAS)とGoogleスプレッドシートを活用した、本運用の開発環境とは別立てした機能開発環境」の話に、参加者から高い関心が寄せられていたようでした。
そして、ゲンバビト最後のスピーカーは、株式会社ヤプリのCTO室室長の梶原さん。
ヤプリCTO室室長が語る「チームの状況を見える化して自己組織化されたチームの作り方」
人が集まっただけでは、チームになりません
ヤプリは、アプリ運営プラットフォーム「Yappli」を開発・提供しているテクノロジーカンパニー。
梶原さん
私たちはとても複雑な制約の中でプロダクト開発をしています。不確実性の高いソフトウェア開発において、自分の能力の範囲をカバーするためにチームで開発を行う。
そのチーム自身が、変化に対応しつつ、生き残れるための能力を身に付けることを自己組織的に行えることが強さの意味となってきました。自分たちの立ち位置を理解して、ステークホルダーからの期待に答える方法について紹介できればと思います。
今回のお話には、ロイ・オシェローブ著『エラスティックリーダーシップ』の内容を用いた箇所がしばしばあるとのこと。気になる方はこちらの書籍もチェックしてみてください。
梶原さん
プロダクト開発には「2つのループ」があります。
プロダクトに正しい価値を見つけ、ユーザーの課題を見つけて仮説を立てる『ディスカバリーループ』と、それらをもとに正しくプロダクトを作り、継続的に届ける『デリバリーループ』です。
今回は、この『デリバリーループ』のお話をしたいと思います。
ヤプリでは、すべてのチームを「自己組織化」させることを目指しているのだと、梶原さん。
「自己組織化」された状態とは?
・チームにスキルがあるorチーム自身でスキルを獲得する方法を知っている
・自分たちで意思決定ができる
・衝突を内部で解決できる能力を持っている
この3つをクリアしているのが、自己組織化されたチーム。
自己組織化されたチームをどうやって作るのか、ヤプリのチームが実際にどう改善したのかの事例をたどりながら解説していただきました。
梶原さん
人が集まっただけで「チーム」にはなりません。
自ら課題を解決していけるチームを作るために、ヤプリではスプリントごとにプロセスを振り返る『ふりかえり会』や、業務の進行を妨げているものを可視化する『妨害リスト』の作成などを行っています。
こうした振り返りによって改善すべきポイントを明らかにし、課題の性質に合わせた方法で調整していくそうです。
たとえばこれは、「完了の定義」。
何をもってDONEとするかが曖昧だと、気づかないうちに全体の進捗がズレてしまうことにつながるので、これは大事なプロセスですね。
また、チームの約束事をチームで出し合って合意するという取り組みも。
梶原さん
チームビルディングに正解はありません。メンバーによってフェーズによって規模によって……それぞれ異なります。
だから、対話と学びから微調整していくしかないんです。
ヤプリ梶原さんのスライドもアップされているので、よりくわしく知りたい方はこちらから。
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その後、主催者と参加者との懇親会へ。
登壇者が語ったエピソードから派生して、「私の会社も同じような失敗を昔したんですけど……」「逆にこういうケースにはどう対処されてます?」などなど、互いに質問し合う場面が多く見られました。
そして、予定よりちょっとだけ時間をオーバーしつつイベント終了となりました。ご来場いただいた方々、ありがとうございました!
(イベントのライブツイートや、終了後の感想ツイートなどは#genbabito にて。)
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『ゲンバビト』というイベントタイトルに相応しく、ゲンバビト同士の交流ができて、とてもよい機会だったなと思います。
最後になりましたが、今回のイベント開催にあたっていろいろとご教示・ご協力いただきましたヤプリ、トランスリミットの皆さま、どうもありがとうございました!
またこのように現場の人ならではの話が聞けるイベントができたらなと思っていますので、その際はぜひご参加ください。
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