アクティブ・ラーニング,個別最適な学び,協働的学び。そして主体的,対話的な深い学習について。(2,632文字)
はじめに:教育基本法における変化
ここ10年ほどは内閣府,文部科学省を中心として,教育施策の刷新がはかられているような様相を示している。平成18年(2006年)新教育基本法が成立し施行され(教育基本法について:文部科学省 (mext.go.jp))その改正(改正前後の教育基本法の比較 (mext.go.jp))を受けた教育内容の変化ということが出来ると思われます。
新教育基本法は,その内容を個人の尊重と人間的自立から社会に参画する社会人の自覚と責任を強調するような変化が見られ,そのため学校教育も社会を構成する一員としていかに成長するか,というような内容的変化が見られるようになったと考えられます。(詳しくは改正前後の教育基本法の比較をご参照ください)
アクティブ・ラーニングとは
文部科学省が定義するアクティブ・ラーニングは,「伝統的な教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり,学習者の能動的な学習への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学習者が能動的に学ぶことによって,後で学んだ情報を思い出しやすい,あるいは異なる文脈でもその情報を使いこなしやすいという理由から用いられる教授法。発見学習,問題解決学習,経験学習,調査学習などが含まれるが,教室内でのグループ・ディスカッション,ディベート,グループ・ワークなどを行うことでも取り入れられる。」とされています(1212958_002.pdf (mext.go.jp) 文部科学省(2013),用語解説より)。
主体的・能動的学びとして解されることが多く,受動的とされる従来の「聴く」授業から,ディスカッションやグループワークを取り入れた授業を指すと考えられます。
主体的,対話的な深い学習
これらは現在「主体的,対話的な深い学習」とされ,文部科学省では次のように説明されています(Microsoft PowerPoint - 【案】171013_新しい学習指導要領の考え方(講演用) (mext.go.jp)。)
主体的な学び。「学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。」
対話的な学び。「子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え
方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。」
深い学び。「習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。」
このように,個人を主体とした,自己の考える力を伸ばすような教育の取り組みを重視していると考えられます。従来の教え,そして理解を促す教育とは違い,個人の学ぶ姿勢に大きく重点を置いていることが伺えます。
個別最適な学びと協働的な学び
次に,個別最適な学びと協働的な学びであるが,これらは,学習指導要領による3本の柱を基礎としている。三本の柱とは「学習指導要領では学校教育を通じて児童生徒が「何ができるようになるか」という各教科等において 育成を目指す資質・能力を「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性 等」の3つの柱に整理しています。 」(個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に関する参考資料 (mext.go.jp))( 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)第1章の第1の3,中学校学習指導要領(平成 29 年告示)第1章の第1の3,高等学
校学習指導要領(平成 30 年告示)第1章第1款の3)とされています。
個別最適な学びは,生徒の個性に合わせた「指導の個別化」,生徒の興味関心に応じた「学習の個別化」,さらにそれらを実現するための教師による「個に応じた指導」として整理され,生徒の個々の状態や進度による違いに合わせ,さらにそれを実現するための指導を組み合わせることで行われるとしています。
協働的な学びとは,「探究的な学習や体験活動などを通じ、子供同士で、あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」を充実することも重要である。」(文部科学省,令和3年答申 p.18,教育課程部会における審議のまとめ p.4)とされており,他者とのコミュニケーションを中心とした学びのこととして考えることが出来ると思われます。
個別最適な学びと協働的な学びを同時に行うことにより,協働的な学びにより生まれる興味関心を個別最適な学びにより還元されるような教育が期待されていると考えられます。
まとめ
このように,現在の学校において行われる教育では,「アクティブ・ラーニング」から始まり,そして「主体的,対話的な深い学習」としてその内容は受け継がれ,さらに「個別最適な学びと協働的な学び」を実施方針として行われているということが出来ます。
これらは,個人の責任が大きく感じられますが,教員が適切に指導すること,また,個別に最適な学びを提供することがその責務であると考えることが出来,また,そのための情報提供や機会の提供,さらにそれらに適した指導を求める内容となっていると考えられるため,高い教員の能力を必要とすることもあわせて知ることが出来るといえるでしょう。
実際にはこれらは21世紀の新しい学習として,海外において述べられた教育のありようのローカライズされたものと言え,その内容を労働者の育成により近づけている点に特徴があると考えられます。
以上,簡単ではありますが,現在の日本の教育における基本的な理念について,書き出してみました。
今後は海外の動向も含め,関連する記事を書いてみたいと思います。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。
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今後ともよろしくお願いいたします。
※記事中にある情報は2022年12月9日現在です。
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