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【短編小説】女子高生、投資を始めてみる

※本作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
※投資を題材としていますが、投資を推奨するものではありません。

18歳初日、口座開設

「美香、誕生日おめでとー!!」
朝起きると、スタンプとともに由実からJIMEアプリにメッセージが届いていた。

今日は美香の18歳の誕生日。いよいよ成人だ。
「18歳になったらやってみたいことがあるんだよね」
以前から友達にそう話していた。
でも「何をしたいの?」と聞かれると「内緒」とはぐらかしていた。
だって「投資がしたい」なんて…絶対とやかく言われるに決まっている。

美香の両親は「お金は会社員として稼ぐもの」として投資を毛嫌いしていた。
そのため、どうしても美香には「投資=悪いこと」というイメージがついてしまっているのだ。

でも、最近は本屋に行くと平積みにされている投資の本が多い。
「楽してお金が手に入るなんて、理想的じゃん。
世界のお金持ちも、投資でお金持ちになっているんでしょ?」
そう考えて、美香は18歳になったら投資を始めると決めていたのだ。

美香の誕生日は4月2日であり、まだ春休み中。
高3に上がったばかりで、受験という気持ちでもない。
早速投資を始める準備に取り掛かった。

まずは目星をつけていたJIME証券に口座開設依頼をする。
今、美香が貯めていたお金は1万円。
大手の証券会社だと、100株単位でしか購入できないようで、最低でも数万円くらいかかる。
だから、1株から買えてるJIME証券にしたのだ。
いつも友達との連絡に使うツールだから安心感があるし、これなら株も数百円から買える。

口座開設は最短で翌日らしいので、申し込みが終わったら今日はもうやることがない。
「あー、待ち遠しい!!」
はやる気持ちを抑えながら、由実と出かける準備を整える。
せっかくの誕生日だからと、カフェでケーキをおごってくれるのだ。
行かない理由がない。

2日目、初めての株取引

翌日、JIME証券から口座開設完了の連絡が来た。
JIMEで完結するから、親にバレる可能性も低くて安心だ。
美香はせっせと貯めたお小遣い1万円をもって、ファイブ銀行に向かう。
コンビニのファイブ銀行ATMから、JIME証券にお金を入金するためだ。

外出。ーそして入金。
あっけなく入金ができてしまった。
では、いざ始めん、株式投資!!

今までに調べた知識だと、現物取引であれば借金をすることはないらしい。
投資した会社が倒産したら、買った株が0円になる、それだけのようだ。
ただ、頑張って貯めたお金が0円になって悔しくないわけがない。
だから少しづつ投資していこうと考えている。

はじめに買う株は「後藤園」。
コンビニでよく見かけるお茶のメーカーで、美香も良く買っている。
「これだけ有名な企業なら、倒産はないだろう」と考え、恐る恐る、1株購入してみた。

購入は、画面のボタンを数回タップするだけで完了。
あまりにもあっけなく、拍子抜けしてしまうほどだ。
ただ、すでに購入金額よりも株価が下がってしまっている。
「私には見る目がないのかな…」
自分に落胆しつつ、様子を見ることにした。

美香は認識していなかったが、JIME証券では手数料がかかる。
そのため、購入時にマイナスになってしまうのは仕方ない部分もあるのだ。

眠れない日々

始業式は4月7日。
それまで日中は暇であり、暇だとつい自分が買った株が気になってしまう。

美香が買ったとき、後藤園の株は1株4200円だった。
JIME証券の手数料も合わせると、美香の購入金額は4215円。
大きく下がることもないのだが、4000円になることはある。

「これならお菓子買った方がよかったかな」
友達との買い食いを我慢して貯めていたこともあり、後悔しそうにもなる。

購入して3日、株価が4300円になった。
明日は始業式で、これ以降は株取引がやりにくくなる。
金額が動くことに耐えられなかった美香は売ることにした。

「4300円なら、利益は100円。儲かるならいい!」と考えた。
しかし、手数料や税金の存在を忘れている。
手数料を除くと売却金額は4284円、売却益は69円となる。
この売却益に税金がかかるので、口座に振り込まれる金額は54円である。

実際に口座に振り込まれた金額を見た美香は驚きを隠せなかった。
だって、想定していた金額の半分だけなのだ。
ここ数日の緊張感からしたら、儲けが少なすぎる。

「もういいや」
ぼそっとつぶやき、JIME証券の画面を閉じた。

想定外の値上がり

美香が後藤園の株を売ってから数日。
なんとなく気になってJIME証券で後藤園の株の金額を確認すると、1株4500円となっている。

「ウソ!?」
驚きながらチャートをよくよく見ると、確かに上下はあるものの、後藤園のここ1か月ほど値上がり傾向のようだ。

「今日まで持っていれば数百円儲けられた…」
そう考えると、悔しさが湧いてくる。
「もう一度…」
悔しさと、金額が上がり続けていることから、美香は再び後藤園の株を購入した。

上昇と下降

前回の反省をふまえて、今回は株価を見ないこととした。
「気になる…すっごく気になるが、ここは我慢。」
自分に必死に言い聞かせる。

言い聞かせて我慢できたのも2週間ほど。
つい株価を見てしまった。
株価は…なんと4800円!
購入時よりも300円ほど上がっている。

「もっと、もっと!」
順調に上がる株価を見て安心した美香は、もっと上がるだろうと期待して、そのままJIME証券のページを閉じた。

GW明け、「そろそろ5000円超えたかな?」とウキウキしながらJIME証券にログインすると…
なんと、後藤園の株価は4000円まで下がっていた。

後藤園の権利落ち日は4月末であり、それまでは株主優待品をもらいたい人たちが多少高くても買っていたのだ。

そんなことは知らない美香は、どうしていきなり株価が下がったのかもわからない。
「やっぱり投資は失敗だったのかな…」
無気力になり、後藤園の株はそのままに、JIME証券を見るのをやめた。

頑張りは無駄にならない

数か月後、JIME証券からいきなり「配当金が入金されました」との連絡が来た。
投資のことは黒歴史として記憶から消去していた美香は、いきなりの連絡に驚いた。

久々にJIME証券にログインしてみると、後藤園の株価は買ったときと同じ4300円に戻っており、配当金も15円入っていた。

「つまり…15円、儲かったということ?」
すっかり忘れていた投資で15円入ったなんて、なんか得した気分。
早速コンビニに行き、そのお金でおやつカルパスを購入した。

「もうちょっと、投資勉強してみようかな」
思いっきり値下がりしたときはショックだったが、こうして得をすると気分が良くなる。

「配当金の仕組みとか、株価が変わる理由とか、学ぶことはたくさんあるな~」
気軽に始めた投資だが、真剣にやろうと考えると大変そうだ。
でも、自分がやりたいと心から思ったことだからか、嫌な気持ちに全くならない。

おやつカルパスのごみを捨てて空を見上げると、未来へのワクワク感からか、いつもより空が青く見えた。

                            ー完ー

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