城山 ジョージ

星新一さんのような小説家に憧れる30代女性。 不定期ながら、小説をアップしていきたいと思っている。

城山 ジョージ

星新一さんのような小説家に憧れる30代女性。 不定期ながら、小説をアップしていきたいと思っている。

最近の記事

【短編小説】長生きする方法

バーで働いている。 目の前の男から相談を受けた。 「長生きするためにはどうしたらいいかな…」と。 聞くと、親として息子には色々な選択肢を持たせてあげたいそうだ。 昔から不老不死の夢を見る人はいるし、長生きする方法も伝えてあげたいという。 「もちろん、運動、睡眠、食事が大切なことは知っている。だが、この社会ではそれを確保することはなかなか難しい…。私も手本を見せられない…。何か簡単で確実な方法はないのだろうか?」 男は手元のグラスを見つめながら続けた。 僕は最も確実な方法を

    • 【創作ショートショート】ブーメラン発言道

      何かを極めるのは難しい。 しかし、何かを極めなければ生きていけない環境では、そんなことを言っても仕方ない。 木登り、ゲーム、芸…みんなが知っているジャンルには、すでに天才がいて、太刀打ちできない。 逆にマイナーなジャンルなら…例えばオレンジを皮ごと早食いするとか? だが、オレンジを手に入れるのも楽ではない。 彼はしばらく考え、ある案を思いついた。 時間もないし、さっそく実行することにした。 目の前にいる白衣を着た人から質問された。 「今の生活はどうですか?」と。 俺は答

      • 【短編小説】レベルアップ

        「あなたがレベルアップしたいことは何ですか?」 帰りの電車の中にある広告に目が吸い寄せられた。 レベルアップ。 いい響きだ。人生は壮大なRPGゲーム、そう考えたら、レベル上げが必要に決まっている。 そして、ゲームであれば当然のことながら、レベルを上げれば、新しいエリアに行けるようになる。 実際のゲームと違うのは、死んだらゲームオーバーで、リプレイもできない。ハードゲームに心が燃えるぜ! 誰に教えられるでもなく、サトルは人生についてそう考えていた。 だから、いつも新しいことに

        • 【短編小説】伝説の安心感

          「へぃ、らっしゃい」 元気な大将の声に迎えられ、僕はカウンター席へと足を運んだ。 還暦を過ぎた、でも50歳前半に見える大将が、湯気の向こうで元気にラーメンを作っている。 「いつものだね」 と、確認のように声をかけられ、僕はうなずくが、大将はその反応を見る前に作り始めていた。 何しろ、僕が幼稚園の頃から通っているラーメン屋さんだ。 昔は家族で来ていたが、大学生となった今は一人で通っている。 目の前にラーメンが置かれると、さっそく食べ始め、男子学生得意の早食いであっという間に

          【創作ショートショート】無理無理グリム童話88

          おばあさんの家に行った帰り道、赤ずきんが森の中を歩いていると、棺の前で嘆く7人の小人たちがいた。 大好きな白雪姫が死んでしまって、嘆いているのだ。 亡くなった時間を聞くと、ちょうど赤ずきんがオオカミに食べられて、三途の川の岸辺へ行っていたころだ。 それであれば、死んでいるのはおかしい。 その時間に死んでいたら、向こうで出会っているはずなのだから。 赤ずきんが白雪姫に触ると、喉に詰まっていたリンゴが取れて、白雪姫はあっさり息を吹き返した。 大喜びの小人たち。 そこに白雪姫の

          【創作ショートショート】無理無理グリム童話88

          【創作ショートショート】グリム童話ATM

          ある駄菓子屋が、グリム童話ATMを導入した。 親がATMを使うのを見て、子供たちも使いたいと騒ぎ、親が手に負えなくなっているそうだ。 グリム童話ATMからは、童話に出てくる食べ物を引き出すことができる。 価格も子供たちのお小遣いで選べるよう、10円〜100円のものだ。 もちろん、普通の自販機と違い、利息もつく。 10日で1割。ただし、最大でも30日間しか利息はつかない。 かしこい子供は、100円を預けて30日間待つ。 結果、133円のものを引き出せる。我慢できない子は、

          【創作ショートショート】グリム童話ATM

          【短編小説】グリム童話銀行

          ※「#毎週ショートショートnote」として書き始めたのに、2000文字近くなってしまった作品です。。。 毎日残業で、食事と言えば味気のないコンビニ弁当。 「これじゃまるで、グリム童話で虐げられていたシンデレラだ」 そう思いながら、夜道を歩いていると、ポツンと一つ光っている建物がある。それはグリム童話銀行のATM店舗だった。 とつぜん、記憶がよみがえる。 いつの記憶か定かではないが、私はグリム童話銀行に口座を開いた。 「預け入れるものは、グリム童話の二次創作作品。 引き出せ

          【短編小説】グリム童話銀行

          【短編小説】神様

          人は迷うと神社に来る。 神社に来て、神頼みをする。 「どうか・・・どうか・・・」と。 人は知らない。神様がきちんと聞いて、答えていることに。 ある男は願った。 「どうか宝くじが当たりますように。事業で失敗して、借金もあり、家族にも逃げられました。お金さえあれば・・・」 神社で願い、多少落ち着いたのか、男は宝くじを買いに行く。 鈴の音を聞いて出てきた神様は、男の願いを聞いて 「またか・・・」とため息をついた。 宝くじに当たることを願いに来る人は多い。 もちろん、たまに当

          【短編小説】神様

          【短編小説】トンネル

          右も左も何も見えない、真っ暗闇を歩いていた。 ふと、先のほうに小さな光が見えた。 どうやらここは長い長いトンネルのようだった。 私は光が見えたことに安心し、その方向へ進む。 徐々に光が強く、大きくなる。 「出口なんだ」 真っ暗闇を一人で歩いていた不安が消え、外に出られるという希望に変わる。 突然、その光が消えた。 あたりはふたたび、何も見えない真っ暗闇。 今度は左側に、さっきまではなかった光が見えた。 光が見えたことに安堵しつつ、先ほどと同様にいきなり消えないか不安を感

          【短編小説】トンネル

          【短編小説】夏休みの宿題

          まだ夏休みに入って数日しか経っていないが、我が子はまじめに宿題をやっている。 本人曰く「今頑張って後で楽をする」のがいいらしい。 そういいつつ、数日たつと忘れて、いつも後半に焦っているのも可愛らしい。 息子は、苦手な物からやるタイプらしく、真っ先にポスターを書き始めた。 真っ白な画用紙に、下書きもせず、どんどん色を載せていく。 水性絵具だから、色が混ざって変なことになっている部分もある。 それを見ながら、ふと「人生って、ポスターみたいだな」とつぶやいた。 ポスター作りを嫌

          【短編小説】夏休みの宿題

          【短編小説】性別が変わる世界で働く

          「生まれたときから性別が変わらない動物って多いらしいよ」 「マジで!?意味わからないね」 そんな会話を大学生の頃にしていた。 現代人は無性→女性→男性→無性と変化するため、それが当たり前だと思っていたのだ。 私は今年で22歳になる。 女性化が遅いほうで、20歳でやっと女性となった。早い子は15歳で女性化したのに…。 女性化していく段階で胸が大きくなったり、くびれができたりして、服が変わってくる。 20歳近くなると、ほとんどが女性となるので、サイズの合う服を選ぶのに苦労し

          【短編小説】性別が変わる世界で働く

          【短編小説】女子高生、投資を始めてみる

          ※本作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 ※投資を題材としていますが、投資を推奨するものではありません。 18歳初日、口座開設「美香、誕生日おめでとー!!」 朝起きると、スタンプとともに由実からJIMEアプリにメッセージが届いていた。 今日は美香の18歳の誕生日。いよいよ成人だ。 「18歳になったらやってみたいことがあるんだよね」 以前から友達にそう話していた。 でも「何をしたいの?」と聞かれると「内緒」とはぐらかしていた。 だって「投資がした

          【短編小説】女子高生、投資を始めてみる