網口渓太
多読は可能な限りコンディションが良い時に始めたいね。落ち込んでいる
ときとか、悩んでいるときとか、何とかしなきゃって義務感に縛られている
ときだと、遊びになんないから。調子の良い時に、そこに何が足りなかった
のか、そこがスタートラインになる。ちょっと横になって、休息をとろっか。
EMちゃん
そういえば以前、横になって心臓を休めることが大事って、坂口恭平さん
がX(前Twitter)で呟いていたわ。記憶しておきたかったからノートにとっ
ておいたんだけど、あ、これこれ。
ESくん
なるほどね。横になっただけだけど、確かに息が楽かも。
EMちゃん
楽ね。たしかにあの本を読んだんだったら、この本も読まなきゃって感じで、義務感に駆られてモチベーションがあがらない読書ってちょくちょくあるわ。
網口渓太
学問の専門性を追求するのは専門家のお仕事だから。むしろ読書はお洒落するくらいの遊び感覚でいい。本は服だから。骨格にウェーブとかストレートとかナチュラルとかあるように、思考にもひとりひとりクセとかタイプがあるじゃない。自分の個性に似合う本を、洋服を合わせるように見つけようとしてみるともう楽しいんだよね。自分のクセに似合う本を探すの楽しそうでしょう?出来るだけ洒落た人になりたいじゃない。
ESくん
しかもその線でいけば、本が集まってくると、洋服と同じように自分らし
いクローゼットができてくるよね。そして、本を持って出かけてみると。
EMちゃん
「書を持って町へ出よう」ね(笑) それじゃあ、本屋さんで立ち読みする
のは試着ね。イエベな本、ブルべな本っていう風に色で見立ててみるのも面白そう。
網口渓太
うん、良い感じ。フォーマルな場所や人に会うときは、そこに似合う本を
持っていくし、カジュアルな場所だったら、たとえば、みうらじゅんさんと
いとうせいこうさんの『見仏記』と仏像のイラストが入ったTシャツをクロ
ーゼットから取り出してきてみたいな(笑) 好きなものならなおさら楽しい
よね。
ESくん
しかも、本ってだいたいTシャツより安いし。コスパもかなりいい。
網口渓太
着るだから、買った本の内容を無理に頭に叩き込まなくてもいいんだよ。本に直接書き込んでマーキングしたり、付箋を貼ったり、角を折ったり、汚せば汚すほど、チェックが特別な目印になって、記憶が向こうの方から降りて来るよ。
EMちゃん
汚せば汚すほど。ダメージジーンズみたいね(笑) だったら、あたしはデコりたいかも。
ESくん
それって「依代(よりしろ)」っぽいね。降りてくるって何かいいな。
網口渓太
横になってリラックスしてるからか、新しい読書文化を考えるに当たって、一番コアな話に触れてるな。家おすすめの読書術は浅田彰先生がかつて「ツマミ食い読書術」って紹介されていた方法と感覚が近いよ。
ESくん
まさに今ボクら、寝っころがりながら読んでんじゃん。浅田先生の影響で、渓太くんはよく家で横になりながら、本読んでんだ。
網口渓太
いや、たまたまなんだけど。ちなみに勝海舟もよく横になって、活動してたらしい(笑)
ESくん
へぇ、勝海舟って、たしか「急いでも仕方がない。寝ころんで待つ」みたいな名言があったよね。
EMちゃん
ダンディね。浅田先生が幕末の志士に思えて来るわ。先生が言うなら、お
言葉に甘えて、もうちょっと寝ていましょ。
ESくん
ボクはちょっと辞書で、ひらがなの「ゆ」の意味でも調べるか。浅田先生に肖って、ツマミ食い。
ほんと言葉って面白いな。意味がズレながらも、関係付けられている。
EMちゃん
ちょっと貸して。あぁ、ここもいいじゃない。
まずは自分が誰かに着せられている制服に気が付くことが大事なんでしょ
うね。私は、自由なファッションを身に付けて、何度でも目を覚ます体験を
していきたいわね。
網口渓太
コンディションが上がってきたじゃん。もうちょっと転がったら、起きましょうか