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テッド・チャン著 『あなたの人生の物語』と映画『メッセージ』の感想


こちらは以前、Twitterにのせた『あなたの人生の物語』に収録されている短編の各話感想です Twitterにのせた時のわりとそのままだし、ネタバレの感想もそのまま書いてますので、ご注意下さい


『バビロンの塔』

いきなりめっちゃファンタジーな話で度肝を抜かれつつ、長い長い塔を登り行く職人たちの息遣いが伝わるような導入に、あっという間に夢中になりました
塔の高層に適応した人達の生活の描写もたまんねぇ良さがあります
一方、語り手の彼が見いだしたこの世の真相はちょっとピンと来なくて、でも彼は納得できて良かったなぁと、すごく肩入れして読んでしまったのでした

『理解』

高次の能力に目覚めてしまった人の思考の描写がめちゃくちゃかっこいい話! 諜報機関を出し抜く手腕の高度さに痺れるし、自分のすべきことを【言語の開発】とするのも、おっかなくてかっこいい
高次の能力に目覚めた存在同士の異能力バトルまであって、読み終わってから60ページと少しの短編だということにびっくりする、読後感が濃密な一作でした

『ゼロで割る』

たいへん申し訳ないのですが、数学が全然わからない人間なので、そのあたりばんばん飛ばして読んでしまいました…でも、夫婦の確執の描写が凄い好きです 飛ばして読んだのに面白くて、チャンさん凄いです

『あなたの人生の物語』

ファーストコンタクトものだと知ってはいましたが、映画の『メッセージ』もまだ観れてないので、後々映画もしっかり見なければ、あらかじめ読み込まねばと読んだのですが
語り手の言語学者さんが異邦の客とのコミュニケーションを深めてゆく一方で
時系列が飛び飛びで挿入される娘さんとのエピソードが、心臓を抉る内容で、やめて~。゚(゚´Д`゚)゚。と悶えました
高度な物理学や言語学の話と共に、恋愛や親子愛の話が両軸となって物語が出来ている! なんて凄いのだと思います
あと、ここに! ここに『理解』の人呼んできて! きっとコンタクトがはかどるから! コラボして! とムズムズしました

『七十二文字』

急にスチームパンク英国風の世界観で、ゴーレムやホムンクルス(的なもの)が登場する話になり、前話から全然違う面白さで殴られた感が、オイオイ! マジでおもしれーな! この本は! ってなりました
ゴーレムの設定はまるでプログラミングのようだし、ホムンクルスは人工クローン技術や生命の倫理の話に繋がるし、階級格差の話まで盛り込まれてて、またこんなに面白いの! どうなってるのチャンさん! と唸るしかないのです

『人類科学の進化』

ショートショートの長さだけど、個人的に一番ぞっとした話でした この光景はきっとすぐそこ… 

『地獄とは神の不在なり』

天使と、天国と地獄が実態として存在していて
天使は厄災と救済と奇跡を振るうけど、それはおそらく無秩序で、でも人間はそれらに何らかの意味を見出だしたくて、それが“信仰“ってものになってしまってて…
奇跡を与えられたり、奪われたり、黙殺されたり、登場人物がみんな痛ましくてたまらない! いい意味で胸糞小説だなあと、わくわくどんよりしました
それにしても、何でこの内容でこのタイトルなんだろうか
この話では、天使は出てくるけど「神」がちゃんと出てるわけではないんですよね
では、この作中が地獄なのか、それとも神も天使も(たぶん)いない我々のこの世界が地獄なのか

『顔の美醜について』

人間の顔の美醜の区別だけはつかなくなる、感知機能を調整できる社会では、それをおこなうべきか否か
幼い頃から調整を受けていた人や、それを外すことにした人、個人個人の様々な思いとは別に調整を支持する団体と反対する勢力との生臭い闘争劇もあり
一方で顔の造作を誇ったり悩んだりするカップルの話もあるので、自分だったらどうする? とずいぶん悩まずにいられない作品でした
終盤で、顔の美醜以上に認知機能を管理したり制御したりする技術が登場せざるを得ない展開には驚きました

この短編集は提示されるストーリーから予想される展開を、遥かに上を行く物語が飛び出すので、ずっと感動しっぱなしでした
これは間違いなく名作の誉れにあまりにもふさわしい作品です これは読んどけって名作です
オールタイムベストに上げられる傑作の名にふさわしすぎる面白さでした
こんな短編集、読めてうれしい、幸せの一冊でした


映画『メッセージ』の感想

『あなたの人生の物語』を原作とした映画をやっと観れました
先に小説を読めていたので、原作を分かりやすく噛み砕いたエピソードが染み渡るようで、観終わってからまた小説を読み返すと、とても至福の時間となったのでした
この2つの作品の、自分なりにくみ取ったテーマは
出会えることは素晴らしいということです
猫の頭を嗅ぎながら観て、悲しいけど、尊いし素晴らしいんだよ…と感動したのでした

出会えてうれしい愛しい相手

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