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つらつらと語るフィクション

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頭の中で出来上がったフィクションを形にしていきます。 明るみの布団の中、電車の座席でどうぞレベルの小説です。
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#超短編小説

あの色の空は綺麗だった【9】

あの色の空は綺麗だった【9】

あの発言のあと、あそこにいた全員が工場に連れていかれた。
ただ、ひたすらに工場で細かいパーツを組み立てる仕事をさせられている。

大人も子供も関係ない。
ちゃんと仕事をしなかったら大人に叩かれる日々だ。

働き始めて1ヶ月経ったが、先も何も見えない。

数ヶ月前まで学校に行き、遊んで帰る日々だったのに。
今はよく知らない大人に叩かれて、
必死によくわからないものを作られている。

この期間で、ケリ

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あの色の空は綺麗だった【8】

あの色の空は綺麗だった【8】

関所が開いた。ただし、市長は銃口を突きつけられている。
どうやら隣町に入ることはできるが、自由というわけではないらしい。

「ほら。入れ」

手を上げなければいけないことはわかったので、
手を上げて関所を通った。

全員が入れられた後、関所の門は閉められてしまった。
別の世界に来た。

僕たちの街よりも機械的で
僕の家よりも高い建物がたくさん立っている。

ワクワクはするが、圧迫感がすごい。
ただ

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あの色の空は綺麗だった【7】

あの色の空は綺麗だった【7】

「今僕らはどこへ向かってるの?」
「隠れる場所もないから逃げるよ!」
「隠れる場所?」

僕の中で聞き覚えのあるワードだった。

そうだ。あの場所なら、この国の人にも
隣国の人にもバレることは絶対ない。

なんてたって、3年間誰にもバレなかった場所だ。

きっと隣国の人にもバレるわけない。
そして、スゥとぺレーダもそこにいるはず。

「隠れられる場所知ってるよ!」

走りながらそう伝えたが、「いい

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あの色の空は綺麗だった【6】

あの色の空は綺麗だった【6】

周りはとにかく走る人でいっぱいだ。
泣き叫ぶ人や狂気に満ち溢れている人がごちゃ混ぜで走っている。

とりあえず家のガレキをどかす。
これが合っているかもわからないがどかす。

すると遠くから「ハンク!!!」と
聞き覚えのある声が聞こえた。

母親だ。安心感で涙が溢れる。
だが、そんな暇もなく手を引っ張られた。

「逃げるよ!」
「一体何があったの?」
「隣国が攻めてきたんだよ!」

よくわからない

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あの色の空は綺麗だった【5】

あの色の空は綺麗だった【5】

ケリーはこっちを向かない。
遠くをみている。

「あれなあに?」というケリーの声と同時に
遠くの方でとても大きな音と煙が立ち上がった。

大きな炎と煙が見える。ケリーと顔を見合わせて慌てて展望台を降りた。
よくわからないが、ただ事ではないらしい。

「街に戻ろ!」とケリーの腕を引っ張って
急いで街の中心部に戻る。

街に近づくにつれて人の叫び声と鳴き声が
聞こえるようになってくる。

朝まではなか

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あの色の空は綺麗だった【4】

あの色の空は綺麗だった【4】

夕暮れどき、今日は平凡な日だった。
それでも虹が綺麗だったことはしっかりと覚えている。

ケリーが帰り道話しかけてきた。
「今度二人で展望台行かない?」

二つ返事で「イエス!」と答えた。
念願だった女の子と二人きりのデートだ。

スゥとぺレーダはニヤニヤしている。
「絶対ついてくるなよ!」とだけ言っておいた。

こんな報告だけで僕の1日がとても華やかになった。

家に帰ると母親が心配したかのよう

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あの色の空は綺麗だった【3】

あの色の空は綺麗だった【3】

まぁいいや。適当にごまかしておけば。
「外で遊んでいたら思ったより暗くなった!お日様が早めに休んだのが悪い」

と言っておいた。

夜ご飯を食べてささっと寝た。
夢の中で大きな雲のなかを移動する夢を見た。

よく分からないけど、静かな恐怖を感じた。
声を叫んでも誰もいない感じがした。

次の日の朝を起きると汗でびっしょりだった。
おねしょじゃなくて良かったよ。

思ったよりも曇り空だ。
学校に行く

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あの色の空は綺麗だった【2】

あの色の空は綺麗だった【2】

帰り道もスゥとぺレーダと、ケリーも一緒だ。
ちなみにケリーは僕の好きな子だ。

金色の髪の毛にピンクのリボンが似合う子で、
ちなみにお姉ちゃんも可愛い。

帰り道にぺレーダに聞いてみた。

「なんで隣国の人たちって火を出してるんだろうね」
「きっと面白いイベントでもやってるのかも」
「なにそれ!隣国行きたくなった!」

そんなことを話していると、ケリーの家についた。
黄色い綺麗な家だ。家の前には愛

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あの色の空は綺麗だった【1】

あの色の空は綺麗だった【1】

遅刻寸前の大慌てだ。
今日は晴天だ。おかげさまで汗もダラダラ。

ランドセルの中身は曖昧だけど、とりあえず走った。

家を出てすぐにちょっと前にいる凹凸のある集団に追いついた。
「おはよ!」「なんとか間に合ったね!」

いつも仲良くしているスゥとぺレーダに合流した。
ちなみに僕の名前はハンク。

今日も寝坊しそうだったけどギリギリセーフだ。
「学校では人気者!」だと思ってる。

スゥは僕より身長が

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プレーン味 part12

プレーン味 part12

Day35

「行ってきます」

ようやくこの道にも慣れた。

ゴミゴミしていた満員電車とはお別れして、
今は自転車通勤だ。

仕事場は相変わらず無音でパソコンを打ち込む場所だが、
同僚は恵まれているみたいだ。

可愛い子もいて、眼福だ。

新しい職場に来てから他の社員に
ランチに誘われることが圧倒的に多い。

ゆえに昼のお弁当は休憩中だ。

仕事を終えてまだティッ

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プレーン味 Part11

プレーン味 Part11

Day17

「スタート!」

次の日から空き時間を使った荷造りが始まった。
汗と彼女の機嫌との勝負だ。

引越しというのは、やけにめんどくさい。

僕はギリギリにバタバタするのは嫌なので、
かなり早い段階で進めておく。

彼女も同じ性格だが、家でバタバタするのが苦手なタイプだ。
”家はくつろぐ場所”らしい。

こんなの業者に任せたいという人間だが、今回はなんとか説得した。
近くのケーキ屋さんの期

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プレーン味 Part10

プレーン味 Part10

Day16

メンタルがしっかりと消耗したあの日から
1週間が経過していた。

今日は2人で彼の地の引越し先の内見に行く。

お互いの論争の結果、引越し先に上がった条件は
「キッチンは大きめ」
「お風呂もできれば広め」
「それぞれの部屋は確保すること」
の3つだ。

2人で集めてきた経験と英知を出し合った結果、
この環境がお互いストレスなく過ごすことができると確信した。

ここ数週間かなり緊張した

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プレーン味 Part9

プレーン味 Part9

憂鬱だ。もう仕事なんてやめてしまいたい。
昨日の夜、彼女の顔見ると心臓がぞうきんのように絞られる。

思った通りの顔だった。いや、思った以上の顔だった。
あまり感情を出さない彼女の顔が一気に不安全開になった。

「ちょっと考えさせて」の一言だった。
食卓も珍しく冷め切っていた。

そもそも「異動」って自分で選択できないのか。
というか優秀なら選択権を得られないのだろうか。

会社では周りにたくさん

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プレーン味 Day8

プレーン味 Day8

Day8

今日も魔術師のようにみんな指を動かしている。
満員電車は魔物のように僕の生命力を奪っていく。

朝の時間で旅行の予約をした。

指先で一つで何でもできる世の中ってちょっと退屈だ。
もう少し苦労したい。

パソコンをカタカタ。ピアノを演奏するかの如く
鼻高に音を鳴らしていく。

会社の中は静かなのでカタカタというありきたりな音だけが存在する。

今日の昼ごはんはオムライスだ。

彼女のオ

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