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【孤読、すなわち孤高の読書】我が孤読編愛録

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孤島に持っていく本を問われた時、 自分の余命が分かった時、 人はどんな本を選び読むのだろう? 本棚はその人の思考の露呈である。 となると、私の本棚は偏屈な愛情に満ちている。 つ…
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#不条理文学

【孤読、すなわち孤高の読書】大江健三郎「死者の奢り」

【孤読、すなわち孤高の読書】大江健三郎「死者の奢り」

戦後日本の不条理と存在の虚無を鋭く描き出した作品。

[あらすじ]
主人公である「私」は、病院の死体安置所で働く若い男である。
彼の日常は、死者たちを運ぶ単調な労働によって成り立っている。
しかし、その単調さの中に、死の冷たさや生きることへの不可解さが浮かび上がる。
ある日、「私」は職場の女性である「彼女」と関係を持ち、次第に心のバランスを崩していく。
その結果、「私」は生と死、欲望と虚無の狭間で

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【孤読、すなわち孤高の読書】アルベール・カミュ「異邦人」

【孤読、すなわち孤高の読書】アルベール・カミュ「異邦人」

人生の不条理を問い、意味を超越した孤独と自由を描いた傑作。

[あらすじ]
この一冊が纏う冷厳にして澄みわたる透明な空気には、まるで人間存在の深淵が反射されているかのごとき重みがある。
物語の主人公ムルソーは母の死に直面しても涙一滴も流さず、その無感動さを自然体として携える稀有な人物である。
彼は世間の常識に従って「在るべき姿」を求める者たちとは異なり、眼前の出来事に冷徹なまでの無関心を示し、己の

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