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フマジメ早朝会議 23.恋の三重苦 連載恋愛小説

ああ、やっぱり落とし穴があった。
それにもれなくハマってしまうのが、栗林恭可の強運なところ。
屋敷数仁かずひさは、恭可にとって三重苦物件だった。
1. 投資をしている
2. 営業部員だとウソをついていた
3. 独身、だが彼女がいる

「なんだっけか。工業デザイナー?ハイカラに言うと、プロダクトデザインっつうの?」
マスターによると、前の会社に勤めていたときから、数仁は打ち合わせにトモシビを利用してきたのだそうだ。

製品の外観を設計する、専門職だ。専門学校で習ったことがある。
なんでわざわざ職業を隠すのか。なにか後ろめたいことでもあるのか。
そういえば「社内コンペ」などと営業職らしからぬフレーズを彼は口走っていた。

疑いだすとキリがなくて、大好きな明太子パスタも喉を通らない。
「恭ちゃん、今月は明太マヨソース注文しなくていいのか?」
「いえ。します!」
業務用の超特大・明太マヨを自宅に常備できるのは、マスターのアシスタント兼試食係の特権である。

すさみきった心を浮上させようと向かったネイルサロンで、泣きっ面にハチ。
「栗林さんって、ひょっとして屋敷くんと面識あるんですか?」
満面の笑みで真麻がそう言ったのだ。
「屋敷…くん?」
高校の同窓会で再会し元サヤにおさまったと、照れくさそうに打ち明けられた。恋バナをする前でよかったと、恭可はつくづく思った。

(つづく)
▷次回、第24話「罠にはまったリス」の巻。



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