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入院という選択、父の本心と家族の葛藤

入院を選んだ父の思い、家族の葛藤

父が「入院」を選んだとき、私には父の本当の気持ちがわかりませんでした。
いとこの看護師さんがわざわざ家に来てくれて、父に改めて問いかけてくれた結果、父は「入院」を選ぶ道を選びました。
でも、心のどこかでわかっていたんです。きっと本望ではなかったんだろうと。父が本当に望んでいたことは、別の形だったんじゃないかと。

お父さん、ごめんね。そう思うばかりでした。

母は、最後の最後まで「入院はやめてほしい」と止めようとしていました。
救急車が家に来て、隊員さんたちが二階から父を運び出しました。緊急ではないけれど、父の身体を運ぶために複数人がかりの作業でした。父は意識がちゃんとしていて、運ばれる父を見送る家族としては、なんとも言えない複雑な気持ちでした。

救急車での時間、母と父の対話

救急車に乗った父を追いかけるように、私と弟、そしていとこの看護師さんは後ろから車でついて行きました。
しかし、救急車はなぜかずっとその場に止まったまま。動く気配がありません。時間にして30分ぐらい経ったでしょうか。隊員さんが車から降りてきて、「もう少ししたら出発します」と説明してくれました。

その間、救急車の中では、母が何度も何度も父に確認していたそうです。
その時の二人の会話を、私たち家族は誰も知りません。でもきっと、お互いの気持ちを何度も確認し合い、思いやり合いながら進んでいったのでしょう。そう信じています。

病院での現実

ようやく病院に着いたのは夜の8時頃でした。父は検査を受けることになり、私と母、弟、看護師さんはただひたすら待ちました。
しばらくして、父が寝ているベッドのもとに呼ばれ、医師から告げられた言葉。

「もういつ逝ってもおかしくない状態です。」

医師は続けて、大腸がんが進行していることを説明しました。
あの瞬間の父の表情は、今でも忘れられません。

T先生のもとで「大腸がんはほとんど消えている」と言われ、その言葉を信じていた父。
しかし現実は、それとは全く異なるものでした。残酷な現実が父に突きつけられたあの瞬間、「ああ、そうなんですね」と静かに応じた父の姿が、私の心を締めつけました。

ごめんね、お父さん。こんな現実を突きつけたくはなかった。家族みんな、本当はそんなことをしたくなかったのに…。

入院という選択

検査の後、医師から「入院しますか?」と尋ねられました。
それは、父の余生を考えた上での提案だったのでしょう。

父は迷うことなく、「入院します」と自分の口で答えました。
その言葉を聞いた母は、最後の最後まで確認を続けていました。母にとっても、これがどれほど辛い決断だったか…。私の胸も締めつけられるような思いでした。

入院という選択には、私自身も複雑な感情を抱いていました。
入院すれば、いつも誰かがそばにいてくれるという安心感がある一方で、「ここから戻ってこれなくなってしまうのではないか」という恐怖もありました。

父の本当の気持ちはどうだったのか。母の本当の気持ちはどうだったのか。
ただただ、もっと生きてほしい、もっとずっと一緒にいたいという願いが胸を支配していました。

父が病室に運ばれるその光景を見ながら、私の心は悲しみと切なさで張り裂けそうでした。

続く…

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