読書感想 村山槐多 悪魔の舌
村山槐多の短編小説を再読しました。
以前青空文庫で読んで「うわーお、いい感じに狂ってるね!」と印象に残った作品です。
村山槐多は画家のようですね。僅か22歳でこの世を去ったようです。
はじめに申し上げておきますが、この作品は人肉食嗜好を取り扱っております。したがって、気分を害するようなグロテスクな描写が含まれておりますので、そういったものが苦手な方は注意してくださいね。
ある日、語り手の家に友人から「クダンザカ301」という謎の電報が届きます。
電報を送ったその友人は、金子という非常に奇異な人物でした。
語り手は九段坂へ行ってみますが、金子は見当たりません。仕方なく金子の家に向かうと、そこには警察がいて、金子が自殺したことを知ります。
九段坂を調べると、金子からの手紙(文書)が隠されていました。
そこには、金子の半生が綴られていたのです…。
エンターテイメントとして、とても素晴らしい作品だと思います。この当時、こんなの書いて大丈夫だったのかな??と心配になるくらい、現代のホラーファンでも満足出来そうな完成度です。
ひとは食べ物を食べないと当然衰弱して死んでしまいます。
なので、悪魔の舌を持ってしまったがゆえにどーうしても人の肉以外が食べられなくなってしまって、仕方なく死人を食べるとかなら情状酌量の余地があると思うのです。が、金子の場合はそうではないのですね。
単に普通の食事に満足できなくなり、虫やカエル、ネズミなどの悪食に手を出し、ついには肉食への欲求を抑えきれなくなる……って感じです。
しまいには「食べたいという欲求のために殺す」のです。
嗜好のために殺すのですね。生きるためではなくて。
しかもそれをわざわざ手記に残して友人に託すとは。
そのあたりの、強烈な欲求に突き動かされている様子がとてもリアルに描写されています。何も好きで人を殺めたわけではないのです。
漫画東京喰種の主人公は偉いと思いました。笑
罪を懺悔すると少し気持ちが楽になるのかなあ?
死刑囚も自身の半生を書いた手記を残したりしますもんね…(それはまた別の意味を持つとは思いますが)
自分には抱えきれないと感じることをずっと抱えて生きるのは相当辛いと思います。たとえそれが自身で犯した罪であったとしても。(でもこれは普通の人が考える範疇のことあって、サイコパスの人はそんなことないのかもしれないけど)
苦しいことはあんまり溜め込まないで上手に吐き出していこうと思う今日この頃です。