【vol.024 編集後記01:「ないはずだったvol.024」のある世界】
vol.024編集後記です。
編集後記については、もう必ずしも書く必要はないと思っているのですが、結局今回も書いてます。何故か。
この号は、本来なら存在しないはずの号でした。
この号がというより「gente」自体が、です。
予定では2023年度をもって、vol.023の発行を最後に「gente」は休刊の予定でした。なのに何故、vol.024が存在しちゃってるのか。振り返っておこうかなと思い、書くことにしました。
と、こういう書き出しをしながらも、休刊しようと考えた理由について書く気はありません。とにかくその予定でした。ちなみにこれまで本気で休刊を準備したのは二度あって、一度目はVol.019で終えるつもりでした。ですがその時も訳あって休刊せずにいたので、今に至ります。
一度休刊を翻意しているので、今度こそはというつもりだったんですが、実際はvol.024が発行となり、vol.025の制作も現在進行中です。何故か。きっかけは、vol.024で取材した旭さんとの出会いでした。
旭さんはvol.024で取材した(株)OSBSの社員です。紙面でもインタビューにお応えいただきましたので、お読みになった方はご存知ですね。旭さんはOSBSで支援員として働いていますが、作業療法士の資格を持っており、以前は病院勤務をしていたそうです。その旭さんと初めてお会いしたのは、vol.022の取材現場でした。
vol.022は義足と幻肢痛について取材した号です。幻肢痛については以前vol.008で取材しましたが、実はその時の取材は副産物的なものでした。義手の取材に行ったら、たまたまそこで幻肢痛について詳しくお話を聞けた、という類のものだったので、あらためて幻肢痛についてきちんと取材したい、とずっと考えていていました。なのでvol.022は、まさに「やり残しを終える号」だったんです。
この時点ですでにvol.023の取材準備は進めていましたし、それはもう半年以上に決めていたことであって。その後の取材対象探しはずっとやっていませんでした。ただやり残しを終えられる、という気持ちだけで取材に向かった、そういう場だったんです。
失った手足が痛むという幻肢痛には、長らく医療現場において有効な治療法がなく、当事者はどこにも行き場がありませんでした。そんな中、失った手足が存在するように感じる(というか当事者にとっては感覚として存在している)幻肢を動かすことによって痛みが緩和される、という当事者としての経験をリハビリ法として確立したのが、vol.022で取材したKIDSの猪俣さんです。VRゴーグルを着用し、仮想空間で失った手足を再現しそれを動かすことで幻肢痛を緩和するVRリハ、健康な状態の手足を鏡に映し、失った側の手足と認識することで幻肢痛を緩和するミラーセラピーがありますが、旭さんは作業療法士としてそれらのリハビリ法を学ぶため、リハのある時にはいつも現場にきているのだそうで、vol.022の取材現場にもいらしていました。
ただその時点では、vol.022の取材に直接関わりはありませんでしたので、お互い特に名刺交換などもしないまま取材を進めていたのですが、会話のきっかけをくれたのは猪俣さんでした。
「旭さんの会社は、障害者がすごく働きやすい会社なんですよ」と、OSBSについて教えてくれ、そこで旭さんと言葉を交わす機会ができたんです。
で、話しているうちに口をついて出ていたのが、「もしよかったら取材させてもらえませんか?」の一言でした。
「え?え?何言ってんの?もうやめんでしょ?」
頭の中ではそう思っているんですけど、全然違うことを口走っていたんですよね、なぜか。で、立ち話もなんだからということで、取材終わりにお時間をいただいて、あらためて旭さんに「gente」についてご説明することになったんです。頭の中では「何やってんのかな〜」と思っているのに。
そうは言っても、説明するからには手は抜きません。頭の一部分では「もうやめるんですけど」と確かに考えているものの、きちんと本気で取材にこぎつけるつもりで説明していました。
それが功を奏したのか、旭さんには「gente」についてとても興味を持っていただくことができ。こちらも旭さんの勤めるOSBSに対して、興味が強くなっていったんです。
OSBSは、アウトソーシンググループの特例子会社です。
特例子会社というと、以前はどうしても受け皿のイメージが強く、仕事も軽作業が中心だったり本業とかけ離れたものをやっている印象で、そういった会社を取材したいと考えたことはありませんでした。しかし精神障害者の雇用が義務化されて以降、オフィスワークを中心に請け負う子会社が新しく設立されるケースが増えていて、OSBSがまさにそれでした。それならば是非取材したい、と旭さんと話しながら取材欲求がグググと頭をもたげてきた、といった感じだったんです。
なんですけど、そこで初めて聞いたのが「今まで基本的に取材はお断りしてきた」という事実。なんでも今までにもいくつかの、それも大手メディアからの取材依頼があったそうなんです。けれどもいずれも受けてこなかったのだそうで。これにはせっかく盛り上がってきたモチベに水を刺されたというか「なぁーんだ、じゃあダメかぁ。だったら予定通り休刊だな」と、気持ちを元の鞘に戻したのですが。
もちろん旭さんが悪いわけじゃありません。むしろ今まで取材を受けてこなかった、と承知の上で話を聞いてくださったことに対する感謝と、何故聞いてくださったのだろう、という気持ちが半々でしたね。とにかくまぁやることはやったから、説明だけでもしてよかったなと。開き直りというか、やっといてよかったな感に浸っていました。
旭さんとしてはとても関心を持っていただけたので、難しいかもしれないけど、会社に持ち帰って検討してくださるとのことでした。ま、こちらとしては一応やることやったので、すっきりとした気持ちで期待をせずに待っていたのですが…結果はご承知の通り「取材OK」。しかも一年間の紙面広告までつけてくださるそうで。
「え、なんで?」と思いましたよね。今まで基本的に取材を受けてこなかったのに、なんでOK?と、驚きがまず第一でした。気持ち的に一度元の鞘に収めちゃっていたので、嬉しいよりも驚きの方が強かったんでしょうね。けどせっかく取材OKをいただき、広告掲載までしてくださるのであればこれはもう、やるしかないと。
と、そんなわけで二度目の休刊見送り、引き続きの発行となりvol.024の制作がスタートしたのでした。
ちなみになぜ「gente」の取材をOKしていただけたのかは、いまだによくわかりません。ただ、せっかくの機会を無駄にはできないし、これまであまり取り組む機会のなかった精神障害について、特例子会社という選択肢について取材できるのであれば、これもやり残しをクリアする号だなと。まだまだやれてないことはあるなと、気持ちを仕切り直す機会にはなっていました。なので決して嫌々続けたわけではなく、「ご縁があるならそれに従おうかな」という気持ちだったんです。
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今回はここまで。
次回は実際に取材をしてみて思うことを編集後記として、不定期更新していきます。
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