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認知症介護について

日々の高齢者ケアの中で、認知症の対応方法についてよく質問されるので、ブログにまとめることにしました。簡単ですが完成したので、アップします。

■“問題行動”に向き合う。

介護現場では、帰宅したいという願望、物が盗まれたという妄想、体調不良の訴え、入浴を拒否する行動、ベッドからの転落リスクを伴う危険な行動、絶え間ないコールへの対応など、多くの課題が存在します。

◎問題に遭遇した時の介護者の反応は様々です。

・利用者の行動を抑制する、思いを説得や否定すること。
・利用者の訴えの裏側にある理由やその背景を理解しようとしない姿勢。
・問題が一時的に解消すれば良いとする場当たり的な対応、職員個々の対応のばらつき。
・利用者に関わろうとせず、放置する行為。

◎向き合い続ける。

・問題を「できないこと」と捉えるのではなく、「できること」を探し続ける姿勢が重要です。
・介護者が利用者への理解を諦めた瞬間、解決への道は閉ざされます。
・問題が永遠に続くわけではありません。加齢や体調の変化により、状況は必ず変わります。
・利用者からの怒りによって支援者が傷つくこともありますが、怒りは2次感情であり、その背後にある悲しみや苦しみ、恐怖、孤独感に対応することが重要です。
・業務の忙しさの中で“職員の都合”を優先してしまうことがありますが、常に“利用者を最優先に考える姿勢”を忘れてはなりません。

■支援方針に迷う理由

・支援方針に悩む時は、アセスメントが不足しています。適切なアセスメントを行えば、今後の方向性が明確になるはずです。

■アセスメント、モニタリング

◎介護的アセスメント

・ご本人様へのヒアリング
利用者の声、ご本人の考えや意思を確認する。利用者が自らの意志で望んでいることなのか、利用者の尊厳を重んじているか、また、利用者の能力を奪っていないのかを考えましょう。

・家族
家族構成。家族の考えや、希望のヒアリング実施。協力の有無。

・精神・ 心理状態
不安、不快、焦燥感・もどかしさ、怒り、恐怖、不穏の回数、時間帯の把握
良い時と悪い時の状況の把握(うれしい・つまらない、おいしい・まずい、満足感・達成感、不幸・幸福)
他者の役に立っているかどうか (存在承認)

・人となり
性格・性質(気質)、人格・地位、こだわり、役割、 問題解決能力
生活史(これまでの生活の物語)、生活様式・生活習慣、思考のくせ
これまでの活動行動・参加、コミュニケーション能力

・生活環境
人との関係(これまで、今)、住居・居住空間(これ まで、今)
五感を通して入るもの(音・光・体感・距離感など)、 空間・時間
落ち着く雰囲気なのか、賑やかすぎてうるさいのか環境を把握する。
席や居室の配置
他者からの理解・他者への理解 (社会的認知)
コミュニケーション、他者とのトラブルの有無
施設の組織と体制の状況

◎医療的アセスメント

・病気
四大認知症、その他の病気、既往歴、薬の影響、原因となる疾病を把握しているか
病気の進行度
精神病の有無(うつ病、統合失調症など)
中核症状、BPSD(行動症状、精神症状)病状の程度の把握
記憶の有無、実行機能、見当識障害、失効、失認、失語など

・体調・ 感覚器
痛み、かゆみ、寒い・暑い、便秘・下痢、頻尿・尿閉、血液検査(脱水、貧血)水分量、食事の状態(栄養状態、空腹・満腹)、嘔気・嘔吐、眠気、感覚機能(視力・聴力など)、日中の活動量の把握、生活リズム(昼夜逆転の有無)

■対応策

・1人で対応しようとしない(チーム力を活用。統一したケアをおこなう)
・業務のフォローはもちろん、チーム内での声掛けや、情報共有、励ましなど。
・他職種で検討する。(介護士、相談員、ケアマネ、リハ職、栄養士、看護師、医師など)
・仮説と検証を繰り返す。対応して良かったことと悪かったことを記録に残す。
・ケースを1件、1件同じと思わずに、丁寧に対応する。
・根拠のある、説明の出来る対応をおこなう。
・病気や精神状態が著しく悪化した場合は、精神科入院を含むケアの選択肢を検討する必要があります。
・自分が相手の立場になった時、どのような対応を受けたいかを想像してみることも、適切なケアを考える上で役立ちます。

◎バリデーション
認知症介護において、現実を理解させようとするアプローチ(リアリティオリエンテーション)は、症状を悪化させるリスクがあるとされています。

重要なのは、まず利用者の感情に共感(バリデーション)し、その気持ちを受け止めることです。安心感を提供し、信頼関係を構築します。その上で、利用者の真の気持ちを聞き出し、利用者に適した解決策を見つけ出すことです。

◎介護現場はハードな対応を求められることが多いですが、最適な方法を見つけるためには、仮説を立て、検証を重ねる以外にありません。まず、ご本人の状況を正確に把握することが重要です。そのためには、不穏の要因がアルツハイマー病なのか、統合失調症、うつ病、疼痛、精神的な不安など、正確に状態を理解する必要があります。また全てを1人で対処するのではなく、チームで協力し合いながら対応しましょう。さらに、異なる職種のメンバーがアイデアを出し合い、多角的に対応することも大切です。

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