見出し画像

「声を届ける」ことでジェンダー平等な社会に変えていきたい

今年は、1995年の北京会議から30周年を迎える重要な節目です。
京会議から30年経ちましたが、ジェンダー平等の達成には、今のままでは世界全体であと134年(2158年まで)かかると言われており、このままだと次の世代もジェンダー不平等な社会を生きることになります。

そこで、ジェンカレは、ジェンダー不平等を生み出す制度や仕組みを変えるために、今年の3月にニューヨークの国連本部で開催される「国連女性の地位委員会(CSW)」にジェンカレの若者10名が参加し、【日本の課題】や【若者の声】を直接届け、国内外の政策に反映するプロジェクトを立ち上げました。

しかし、昨今の円安やインフレが重くのしかっており、渡航費や宿泊費、活動費にあてるために、400万円の支援をクラウドファンディングで募っています。(1月31日まで)

このnoteでは、「国連女性の地位委員会(CSW)」に参加するメンバーがどのようなことをきっかけにジェンダーに関心を持ち、CSWで何を学びたいのかを紹介します。


齋藤智咲(ちさき)のプロフィール

兵庫県川西市出身。大阪大学大学院工学研究科M2。大学院では気候変動対策のジェンダー主流化について研究。ジェンカレ2期生として参加。ジェンカレ修了後、関西を拠点にジェンダー平等に取り組む仲間が欲しいと思い、学生団体BeaGe(ビージェ)を立ち上げ、月経に関する啓発を行う。

【ジェンダー課題への気づき】学生団体での衝撃とジェンダー課題への使命感

3年前、大学4年生のとき、私はとある学生団体の立ち上げに関わっていました。その団体はメンバーの多くが女性だったにもかかわらず、発起人を中心とする幹部は男性ばかり。女性で幹部を務めていたのは、私ひとりだけでした。当時、私はその状況に違和感を覚える余裕もなく、むしろ「私がしっかりついて行かなきゃ」「認められなきゃ」と、急ながら、とにかく活動に全力を注いでいました。

半年ほど経ったある日、団体に新しく数名が加入しました。そのうちのひとりが私にこんな言葉をかけました。「幹部に女性があなたしかいないなんて、日本社会の縮図を見ているみたい。」その一言を聞いた瞬間、私は、衝撃を受け、愕然としました。それまで、他人事だった「ジェンダー課題」が、一気に自分のことになったのです。

もちろん「日本では女性リーダーが少ない」などといった社会問題があることは、知っていました。その背景に、ジェンダーという複雑な構造があることも、知っていました。でも、どこかで「それは政治や大企業での話で、私たち若者には関係のないことだ」と、思っていました。しかし、この出来事をきっかけに、自分自身がまさにジェンダー課題の中に生きているのだと気づかされたのです。そして、私自身も知らず知らずのうちに、ジェンダー課題を再生産している当事者でもあると気づき、居ても立ってもいられない思いに駆られ、使命感を感じました。その瞬間から、ジェンダー課題は私の中で、最も重要なテーマの一つとなったのです。

【ジェンカレで得た学びと勇気】ジェンダー課題に声をあげる重要性

大学院1年生の時、5ヶ月間、2期生として、ジェンカレで学びました。ジェンカレでの学びは、講師の方々による講義だけではありませんでした。私にとって最も大きな学びは、「声を上げる勇気を得たこと」と「声をあげる重要性への気づき」です。
私が初めてジェンダー課題に気づいたとき、その課題感を団体の仲間たちと話したい!と思いました。でも、それを伝えようとする「勇気」と「言葉」を持っていませんでした。気づくだけでは不十分で、何か変えようと押し進める力がまだまだ足りなかったのです。私は悔しいと感じました。

そんな中、ジェンカレに参加し、アクションを並走してもらったことで、「勇気」を持てるようになりました。その一つが「幹部向けのダイバーシティ研修」を作ったことです。幹部メンバー自身がジェンダーやDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)についての知識を得て、どこかで活かしてほしい、そんな未来を夢見て行ったものでした。
たった30分の研修。もしかしたら、ちっぽけに思われるかもしれません。でも、当時の私にとっては、決して小さな挑戦ではありませんでした。 ――幹部メンバーのプライドを傷つけてしまうかもしれない、強く反論されたらどうしよう――そんな不安が頭をよぎり、何度も「やめよう」と考えました。

ジェンカレでできた仲間との写真

しかし、私はジェンカレのメンターさんからの熱いエールを思い出ました。「私たちだって、長年活動をしてきて変わらないことの方が多い」「傷つくことを言われることもあるけど、私たちには仲間がいる、間違っていないから突き進むのみ」こう言った言葉に押され、私は勇気を振り絞って、研修を実施することができました。結果、「知らないことを学べた」という前向きな声をもらいました。一方で、「偏っている」「これは違うのではないか」といった反論も受けました。正直、精神的に辛く感じることもありました。でも、ここで私は、「声をあげ、意見を交わすことで、少しずつでも変化をもたらしている」という実感を得ることができたのです

ジェンカレ2期生集合写真

【声を届けたい理由】成功体験と大きな挫折

去年の4月、大学院2年生になった時、私は学生団体BeaGeを立ち上げました。下腹部に電極パッドを貼り、電流を送ることで生理痛に似た痛みを体験できる機器を使用し、「生理痛体験」イベントを開催しました。痛み体験を通して、月経の背景にある社会課題を知ってもらうことが目的でした。

結果、イベントは2日間で想像をはるかに超える総勢130名以上の方に体験していただきました。参加者からは「体験できてよかった」というたくさんの声をもらい、新聞にも取り上げられるなど、月経にまつわるジェンダー課題の認知の拡大に大きな手応えを感じ、とても嬉しかったです。

生理痛体験の様子
生理痛体験イベントの様子

そして、この成功体験の中で、強く心に残ったのは、参加者の多くが口を揃えて言った「もっと早く知りたかった」「学校で習いたかった」という言葉でした。

現在、小中学校の教育では、女子だけが月経について教えられ、男子は教わらない、という問題があります。この結果、女子は月経に対し必要のない恥を抱き、体の不調や悩みを相談しにくくなってしまっています。一方で、男子は誤った知識を持っていることがあります。この月経教育が不足しているという問題は、ずっと指摘され続けていることで、私の調べでは、私たちの母世代も、私たち世代も、今の中高生の世代も、この教育はあまり変わっていません。

イベントで寄せられた意見を通じて、私は、この課題が単なる一部の考えではなく、多くの人々が抱く「こうなってほしい」という強い「声」として存在していることを確信しました。私は、この声を無視することはできない。むしろ、きちんと反映し、行動に移さなければならないと、と強い責任感と突き動かされる思いを抱きました。

私は、地域の小中学校に月経教育を取り入れてもらおうと、自治体の教育委員会や学校に問い合わせを始めました。しかし、これは想像以上に辛いものでした。問い合わせをしても、返ってくるのは曖昧な回答ばかりでした。「詳しいことはわからないので答えられません」「これ以上の質問には対応できません」と突き放されることもありました。さらには、そもそも回答が返ってこないケースも少なくありませんでした。

イベントで良い反響を得られた直後だっただけに、いざ具体的な変化を求めて行動を起こすと、こんなにも冷たく突き放される現実に直面し、心が折れてしまいました。その結果、この取り組みは途中で諦めざるを得ず、大きな挫折を味わいました。

この挫折を通じて私は、変化を求めるには、根気強く長い時間をかけて取り組む覚悟が求められるということを知りました。さらに、「声」として存在するだけでは不十分であることも痛感しました。その声を然るべき場所に「届ける」ことこそが、課題を解決するための鍵なのです。

月経に限らず、ジェンダー課題に対して多くの「大きな声」が存在しています。それをただ嘆くだけで終わらせるのではなく、その声を正しい場所に「届ける」ことで、社会を変えていく。このプロセスこそが、私が尽力したいことであり、CSWへ私が参加したい理由です。

  • (生理痛体験イベントの様子)

【私の使命とCSWへ参加したい理由】ジェンダー平等を形にするために

CSWとは、国連の中の一つの機関で、ジェンダー平等や女性の地位向上について議論し、提言や勧告を作る場です。「世界的なジェンダー平等の基準を決めるところ」とも言えるでしょう。すぐに私たちの日常生活を大きく変えるわけではありませんが、ここでの議論や決定は、世界のジェンダー平等を少しずつ形作る基盤となります。

これまで、ジェンカレや自身でのイベントの企画や月経教育の推進など、ジェンダー課題に取り組む中で、「声」を上げる必要性を強く感じています。しかし同時に、それだけでは不十分であることも痛感しました。声は、正しい場所に「届け」られて初めて、社会をよりよくする力になります。この議論に、私たちの考えや思い、そして私たちが求めることを反映してもらう必要があるのです。
私がCSWへ参加したい理由は、CSWという場がジェンダー平等のための「声を届ける」場所であり、ここでの声が社会を変える大きな力になると確信しているからです。

私は、今までの活動や経験をもとに、具体的には、以下のような声をあげたいと考えています。

日本政府に対し、
●包括的性教育、特に月経教育の導入を求める
●気候変動対策のなかにジェンダー視点を取り入れること
⇒国際的には具体的な議論がなされている一方で、日本では未だ課題の認知も進んでいません。私の修士論文のテーマであり、約2年間、これについて誰よりも知見を深めてきました。
●女性のSTEM分野への進学を促し、研究費をあてるなどより良い研究環境の整備をすること
⇒私は工学部で6年間過ごしてきました。女性が少ないことはもちろん、そのために研究テーマに多様性がないこと、研究を続けたくても女性研究者にはより多くの壁があることを見てきました。

みなさまの応援を糧に全力で取り組んでまいります。何卒、ご支援のほど、よろしくお願いいたします!


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集