設計開発マネジメントの教育に対する重要性|トヨタ流開発ノウハウ 第24回
◆部下の教育方法について
マネジメント層の皆さん、部下の教育方法に迷っていませんか?
また、設計者の皆さん、OJTという名の教育に困っていませんか?
古くから技術部門は「背中を見て、覚えろ!」や「先輩の図面を繰り返し読んで、設計の考え方を理解しろ!」なんて言われながら、教育≒OJTとしてきました。
今の時代のマネジメント層が言っていることは・・・
・若い設計者は今までと同じOJTでは育たない。
・一から全て教えてあげなければならない。
・言わないと自ら進んで仕事をしない。
上記のように言っていることが多いのです。
本当にそうでしょうか?
昔のことを思い返してみてください。自分が新人だったころを・・・。
私は決して今の若い設計者の皆さんの能力が落ちているとは感じませんし、積極的に学んでいる設計者だって多くいます。技術部門だけではないかもしれませんが、なぜ、このような話が出るのでしょうか?
結局このような話はいつの世代にも起きているのです。
今のマネジメント層が新人だったころも当時のマネジメント層に同じようなことを言われていたハズです。
それをすっかり忘れて、今の環境に対して文句を言っているだけなのです(少なからず、私も心当たりはあります。誰でもこのような事を思ってしまう瞬間はあると思います)。
そんな事を言ってても企業全体の設計力は向上しませんので、今の環境にあった教育方法をしていくしか方法はありません。
◆OJT
話を戻します。
OJTのみでは全設計者を育成することは出来ません。
OJTのメリットは実務に沿った教育をすることが出来ることですが、その時に設計者がかかえている案件によって、教育の内容が変わってきてしまうのです。
難しい案件を抱えている設計者は、その難しい案件を教育してもらいながら設計していくと大きな能力を身に付けることが出来るでしょう。しかし、難易度が高くない案件を数多く抱えている設計者は業務量としては多いものの、難易度が高い設計者ほどの能力を身に付けることは出来ませんし、身につく能力が異なってくる場合が多いです。
このようにOJTのみだと任せた設計案件によって能力が異なる設計者が育ってきてしまいます。後者の設計者は非常に高い潜在能力を持っていたとしても能力を高めることが出来ず、ある意味不幸です。
最終的には会社を辞めていっていまうかもしれません。
このような状況にならないためにも、その製品の設計にはどのような能力を身に付ける必要があるか、最終的にはどのよう地点を目指す必要があるかを設計者全員に示してあげる必要があります。
◆設計者が身に付けるべき能力の視える化
この能力の視える化は、設計者が最も苦手とする部分です。
なぜなら、今まで明確に「このような能力が必要だ!」と誰にも教えてもらってきていないからです。
これからの時代は1人で設計できる製品は少なくなっていきます。
様々な設計者が関わる中で、複雑に入り組んだ機能を実現させるための構想が必要になり(まさにシステム製品が拡大される)多くの設計者の高い能力が必要とされる時代です。よって、企業競争力を高めるためには多くの設計者の能力の底上げが必要になってきます。
そのためにも必要な能力を視える化しながら設計者教育に力を入れていかなければなりません。まずはこの前提を理解してほしいと思います。
では、設計者に必要な能力をどのように視える化、整理していけばいいのでしょうか。闇雲に能力を列挙してもまとまらないでしょう。次のような考え方で整理してみましょう。
◆具体的スキル
大きく3つの分類の能力に区分します。
①コンセプチュアルスキル
②コミュニケーションスキル
③テクニカルスキル
多くの技術部門では、この③のテクニカルスキルしかOJTしていません。設計者は様々な部門と関わり合いを持ち、多くの情報を整理しながら進めていかなければなりませんし、顧客が要求している曖昧な情報から具体的な機能を抽出したりする能力も必要となってきます。
①のコンセプチュアルスキルは、日本語に直すと「概念化能力」です。
物事を進めていくためには、考え方を概念として捉え、人に見える形に変えていかなければなりません。まさに設計者に必要とされる重要な能力ですよね。1つの部品の形状を考えるのもまさに概念化能力が必要となります。
具体的にどのような能力が必要になるのでしょうか。
下記図のような能力となります。
次に②のコミュニケーションスキルです。
先ほども説明したように設計者は多くの部門と関わり合いを持ちながら、情報を得た上で整理していかなければいけないので、必須のスキルです。しかし、「図面さえ書いていればいい」や「黙々と考えることが好きなので、他人とあまり関わりたくない」という設計者が一定数いるのも事実です。
それでは良い設計は出来ません。様々な部門と調整を行ったり、情報を共有していくことこそ、設計者の役割なのです。
コンセプチュアルスキルと同じように具体化した図です。
さて、最後に③のテクニカルスキルです。
力学のような基礎的なスキルから実務的なスキルも必要とされます。それぞれのスキルをどのようなタイミングで取得するべきなのかを明確にし、教育計画を立案していくことが重要です。
これを全てOJTとせず、しっかりと計画を元に、上司や先輩は講師となり、時間を確保して上で教育していくことが重要です。
上記のスキル体系を各設計者に当てはめて、下記のことを実行してください。
①現在保有しているスキルの視える化
②今後取得するべきスキル
③取得するための教育計画
④具体的な教育方法(OJTorOFF-JT)
①~④の内容を毎年教育実践内容を確認し、スキルの保有度合を把握していきます。
スキルアップしたら次の段階へ進むためにもしっかりとした教育計画を再度立案していきます。
このような教育に対するPDCAを回していくことが出来れば、必ず設計者は能力向上しますし、技術部門全体の能力の底上げも可能になるでしょう。
「企業は人なり」この言葉を忘れてはなりません。
マネジメント者の一番の目的は教育です。
しっかりと教育の在り方を見直してみてください。
講師プロフィール
株式会社A&Mコンサルト
代表取締役社長 | 中山 聡史
2003年、関西大学 機械システム工学科卒、トヨタ自動車においてエンジン設計、開発、品質管理、環境対応業務等に従事。ほぼ全てのエンジンシステムに関わり、海外でのエンジン走行テストも経験。
2011年、株式会社A&Mコンサルトに入社。製造業を中心に自動車メーカーの問題解決の考え方を指導。
2015年、同社取締役に就任
2024年4月、代表取締役社長に就任
主なコンサルティングテーマ
設計業務改善/生産管理・製造仕組改善/品質改善/売上拡大活動/財務・資金繰り
主なセミナーテーマ
トヨタ流改善研修/トヨタ流未然防止活動研修/開発リードタイム短縮の為の設計、製造改善など
※2024年6月現在の情報です
近著