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【作家志望の社会人】なぜ働いていると文章が書けなくなるのか
こんにちは、KANTOKUと申します。
プロフの通り、私は小説家志望の社会人なのですが、働きながら創作活動するって難易度高くないッスか……?特に私は転職をしたばかりなので日中の業務が慣れず平日はクタクタ。うっすら「これ無理ゲーじゃね?」と思いながらも過ごした、この一週間のリアルをお伝えしようと思います。
一週間のルーティンを決めてみた
ここ最近引っ越しやら転職やらでバタバタしていたのですが、新生活のリズムを整えるタイミングで、文章上達の為にやる取り組みも考えないとな、と思っていました。忙しい生活の中だと放っておいたら1か月・半年単位で時間はあっという間に過ぎていきます。かと言って毎日取り組むというのも現実的に持続は難しいですし、達成できなければ無駄に自己肯定感が下がります。丁度いい塩梅が難しい。そこで、ChatGPTにそうした条件を伝えて練習メニューを作ってもらいました。
私は小説家を目指している。大衆小説だがSFや歴史、ネットミームを活かした好きなものを描きたい。 あと5年で兼業作家として確立したい。 今年は転職と転居を経験し、まずは半年生活基盤を整え今年の後半は応募用の作品を作るようになりたい。 そこで、一月から六月までは文章トレーニングの習慣を確立したいと思う。 下記は「文章力」と呼ばれるものを細分化したものである。
①表現力
これは、普通に生活をしていれば自動的に伸びていくモノだと思います。 友人との会話、家族との会話、勉強、スポーツなど様々な経験を積極的に行う事で表現力は養われていきます。
②語彙力
単純に多くの言葉を知る事です。ネットの辞書機能を活用するのもいいでしょう。 表現力がどれだけ高くても言葉を知らなければ文章は書けません。頭の中で「表現」されているものを「語彙力」で文章化するのです。
③文章作法
句読点の使い方、「て・に・を・は」の使い方、記号の使い方、改行の仕方など勉強を必要とするモノです。 国語の教科書を読む、読書をするなどが上達の近道かと思います。 小説の完成度を高めるためには必須ですが、「完成度が高い小説」=「面白い小説」ではありません。高校生程度の知識があれば十分かと思います。
④推敲力
自分で書いた文章を客観的に見直し、修正するための力です。数多くこなす以外、上達方法がありません。
⑤構成力
文章、物語の組み合わせ、演出の力です。 読書、映画鑑賞をした後、あらすじを書く。そのあらすじを元に別の作品を書くなどにより上達します。
⑥説得力
フィクションの世界にリアリティを出すための力です。 専門書を読むか、常に理屈で考える癖をつける事で上昇します。
私はこのうち、③④⑤⑥の力が特に不足していると感じる。特に小説を完成させること、一人称文章と三人称文章の違いや基本的な文章ルール、人物描写の力が弱いと感じる。効率よくかつ無理なく続けられるトレーニング方法はないだろうか。 なお私は週5で仕事、帰宅後は19:00〜24:00まで時間があるが、あまり体力はないものとする。
効率よく無理なく続けられるトレーニング方法として、以下の計画を提案します。体力に配慮しつつ、重点的に③〜⑥の力を鍛えられる内容です。
1. 週間スケジュール(1日30〜60分を目安に)
月・木:文章作法と人物描写タスク: 小説やエッセイの冒頭部分を手書きで書き写し、その表現技法を分析。
練習:
一人称と三人称の視点切り替え練習(短いシーンを両方の視点で書く)。
特定のキャラクターの外見・性格を詳細に描写。
目標: 1週間で一つの技法に集中(例:比喩の使い方、簡潔な描写、心理描写)。
火・金:構成力と説得力タスク:
短編小説のプロットを5〜10行で書く。
読書・映画鑑賞後に簡単なあらすじ作成&改変。
練習:物語の転換点や伏線を意識したシーンを書く。
専門書や記事を読み、リアリティのある背景設定を考える。
目標: 1か月で1つの短編プロットを完成。
水・土:推敲力タスク: 前週に書いた文章を見直し、無駄な部分を削ったり語彙を置き換える。
練習: 他人の文章を見直す感覚で修正案を作る。
目標: 1作品につき2〜3回推敲し、改善を具体的に記録。
日曜:自由執筆・まとめタスク:書きたいものを自由に執筆。1週間の成果を記録し、次週の目標設定。
練習: 楽しみながら、実践で鍛える。
2. 具体的なトレーニング案
文章作法
国語辞典や『日本語スタイルガイド』を参考に、ルールを確認。
毎週、基本ルール(句読点の使い方など)を1つ覚えて意識して使う。
推敲力
他人に読んでもらう機会があれば意見を取り入れる。
「何を削るべきか」「何を足すべきか」をメモし、推敲後の違いを比較。
構成力「起承転結」「三幕構成」「プロットポイント」などの基本構造を学び、試す。プロット作りを通じて、展開を練る習慣をつける。
説得力
舞台となる時代・科学などの背景設定を調べる。小説に必要な専門知識をメモにまとめ、設定の説得力を高める。
3. 生活の工夫
タイムマネジメント: 疲労を感じる日は15分だけでも執筆を。
メンタルケア: 1か月ごとに達成したことを振り返り、自分を褒める。
参考書籍: 作家のエッセイや執筆指南書でモチベーション維持。
これをベースに、あなたの体力や好みに合わせて柔軟に調整してみてください!
さすがChatGPT。明確に回答してくれています。一日30分だけなら仕事帰りも出来そうと思いました。そう、この時は。
なお、「文章力」の要素分解については下記を参考にしました。大変しっかりした文章です。回答者の年齢を見てビビりました。
月曜日(祝日)「三島由紀夫の写経」
月曜は祝日だったため、早速小説の書き写しをすることに。丁度読んでいた三島由紀夫の『豊饒の海(一)春の雪』を30分集中して書き写していました。
清顕は目を落とした。緑の草叢から危険を察知してあたりを伺う白鼠のように、女の白い足袋の爪先が、ひざ掛けの下から小さくおずおずと覗いていた。そしてその爪先にはほのかに雪がかかっていた。
清顕は自分の頬がひどく熱いので、子供らしく、聡子の頬にも手をあててみて、同じように熱いのに満足した。そこにだけ夏があった。
「幌をあけるよ」
清顕は大きく腕をひろげて、前面の幌を外した。目の前の四角い、雪にみたされた断面が、倒れかかる白いふすまのように、音もなく崩れてきた。
文章をまるまる書き写していると、注意深く観察するので色々な発見がありました。例えば、前の文章で清顕(主人公)の心情を描写した後に「目を落とした。」と視線を足元にし、女性の足先を通じて恥ずかしがっている彼女の心情を仄めかしていることに気づきました。また、
本多から電話がかかったと飯沼が告げた。
(中略)
本多は学校の教務課の電話を借りて掛けていた。清顕の声は不機嫌を極めた。
「一寸事情があって、今日は一旦学校へ出て早引けしたことになっているんだ。朝から学校へ出ていないことは家には内緒だよ。風邪?」と清顕は電話室の硝子戸を気にしながら、暗いこもった声でつづけた。「風邪は大したことはないんだ。明日は学校へ行けるから、そのとき訳は話す。……大体、一日休んだくらいで、心配して電話をかけてよこすことはないよ。大げさだなあ」
本多は電話を切ると、自分の厚意が手ひどい報いを受けたので、胸騒ぎのするほどの怒りを感じた。こうした怒りは、かつて清顕に対して彼が感じたことのないものだった。清顕の冷たい不機嫌な声そのものよりも、その無礼な応対そのものよりも、彼の声に、不本意にも友達に一つ秘密を預けなければならなくなった遺憾の溢れていたことが、本多を傷つけたのである。彼は今まで一度だって、秘密を預けることを清顕に強いた覚えはなかった。
やや冷静に返ると、
「たった一日休んだからって、見舞いの電話をかける俺も俺じゃないか」
と本多は反省した。
このシーンでは、3人称視点(神視点)文章での人物の視点の切り替え方の勉強になりました。清顕と本多双方の心情・行動・仕草を、客観的な光景として描いている、カメラで追っているような感覚です。私はこうした視点の切り替えが苦手なので、「『感じた』『思った』は使っていいのか」とか、発見が多かったです。
火曜~金曜「なんも出来ねえ!」
さて、次の日には、③④⑤⑥の力を養う為のトレーニング、前日学んだことを活かして短文を書いてみるだとか推敲の練習だとかを計画していたのですが、
……これが何も出来ませんでした。
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新しい職場で発生する怒涛の引継ぎ業務、慣れない工程の事務作業が大量発生、遠方までの営業車の運転……。
帰ってからも思ったより疲労がたまっており、とても30分や1時間集中して創作に時間を割く余裕がありません。注目すべきは慣れない仕事が大変とはいえ、そこまで業務量が多いわけでもないという点。9:00~18:00の標準的な勤務時間で残業はほぼしていません。それにも関わらず、頭が疲れていて帰宅後には食事と風呂の前後で文章を書く余裕は無く、出来て読書が精いっぱいというありさま。気が付いたらYouTubeのショート動画をひたすらダラダラ見てしまっていたというシーンも。
あーぱつあぱつ……。
運動不足で疲れやすく、免疫も弱い私の体力の低さが退勤後の活動を鈍らせているのか。それも考えられますが、疲れると低下するのは体力だけでなく自制心もそうです。結局のところ自分の努力や気合に依存して強制力がない自制心は、余裕がないときには働かないのです。
土曜日と自己嫌悪の向こうに
やっと逃げ切った休みの土曜日ですが、これが雑用と一週間の作り置きの料理といった家事をしていたらもう17:10!!なんもできてねえ!!
これは嫌になります。
簡単なルーティンを作ったのに何もできてねえ!焦りは自己嫌悪に変わり、土曜の夜の私を苦しめました。
日曜日「表現する、ってあんなに楽しそうなんだ」
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日曜日は縁あって、楽器店が運営している社会人向け音楽教室の発表会に招かれていました。
演奏者たちが「緊張してうまく出来なかった~」と笑いながら言っていたように、各参加者たちの演奏は未完成で粗削りな印象でしたが、それ以上にイヤホンやスピーカーとは違う生の音楽の質感と、彼ら彼女ら老若男女が一生懸命に音楽を伝えようとする表情が強く記憶に残りました。演奏中は強張った顔ながら、好きな曲をヴァイオリンやピアノやフルートで奏でることが出来た嬉しさが顔にあふれている。
ああ、この人たちは表現することを楽しんでるんだな。と思いました。
ヴァイオリンの見事な和音にボーっと魅了されながら、この人たちはなぜこんなに楽しそうなんだ、と考えていた時、あることに気づきました。
「そうだ、教室に通って先生に教えてもらっているからだ。一緒に練習する仲間がいるからだ」
私が孤独に向き合おうとする姿勢は自分を追い込もうとしていることに気づいたのです。私に足りなかったのは自制心とか体力だけじゃなく、共に創作活動を支え合う仲間や相談やアドバイスをくれる指導者だったんじゃないか。
ふりかえりと対策。「仲間が欲しい!」
以上に気づいた私は、Twitterやネット検索で社会人文芸サークルや、社会人や外部生の参加が認められている大学文芸サークルの複数に見学を申し込むメールを送信し、小説の書き方講座を幾つか調べて資料請求をしました。
※この辺、良い講座やサークルあったら教えてほしいです。
過酷で不毛な平日を乗り越えた先の休日は際限なく睡眠を欲したりダラダラしたくなります。そうした「リラックス」の時間と、外出して普段触れないものに触れる「リフレッシュ」。この2種類の休息を区別して両方ともしっかりするのが大事だと思います。日曜の音楽会が無ければ、私は狭い視野の中でずっと、仲間や指導者の必要性に気づかないままでした。
この試みが進行していったら、また文章でお届けできればと思います。
まとめ
私の周りには、退勤後に2時間フットサルをやって走りこんでも翌朝ケロッとしている知人(狂人)がいます。彼らは体力オバケなので、余暇にどんどん活動したり成果を上げていってしまう。しかし、私が彼の真似をしようとしても身体を壊してしまうでしょう。ならば甘ったれた自制心を罵倒するか、それも逆効果でしょう。開き直るようですが、出来ねえもんをひたすら自己嫌悪したって出来るようにはならないのです。
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ならばどうするか。
出来ないことは出来ないので他の方法をどんどん試していくしかないと思います。私の場合は、人間関係を作ったり小説講座という外部の補助を取り入れることの検討でした。果たして上手くいくかはまだわかりませんが、上手くいかなければまた別の方法を試していくまでです。
ここまで読んでくださった方の中には、私と同じような社会人ワナビーの方もいらっしゃると思います。私の上手くいかなかったこの一週間が皆さんの参考になりますように!
そして、皆さんの絵・漫画・漫才・音楽・映像作品・そして文章作品と、私の文章作品がより磨かれていきますように!