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【未来予想してみた】200年後の太陽系経済圏③深部太陽系 【小説の種】

 今回は木星より遠くの天体について書いていきます。


木星

木星。太陽系最大の惑星にして有人経済圏の果て。

 太陽系最大の天体である木星は、核融合発電に必要な重水素やヘリウム3の主要産地の一つである。
木星軌道上1万kmには採集母艦「ユピテル7」は多数の無人機を搭載し、木星表面からガスを採取・精錬して地球への輸送機を飛ばしている。
ユピテル7では約800人が滞在。全長約1kmの宇宙船で、小規模な居住空間も備えている。

ここは人類が定住している地点としては最果ての地であり、「人類文明の辺境」とも呼ばれる。
ただし高重力と強い放射線による過酷な環境であり、居住区に居ながらにしても放射線障害にかかる例も多い。

ユピテル7の様子。
木星重力圏に引きづられないよう軌道が計算されている。


こうした環境で育った子供たちは普通は火星や小惑星帯からの通信教育やニューロンへの電気信号による直接学習を行うため表面上、地球の子供と比べると学習上の遅れはない。ただし限られた人数としか触れ合わないコミュニケーションの遅れや、空に浮かぶ巨大な木星を長期間眺め続けることで恐怖感やパニック発作、統合失調症的症状を起こす「ジュピター・シンドローム」を起こす場合があり、注意が必要である。

エウロパ

木星の衛星エウロパ。表面の亀裂は潮汐力で氷が割れたもの。

木星の衛星エウロパは厚さ3kmもの分厚い氷に覆われているが、その氷下には液体の水の海があることがわかっている。

2047年にNASAが砕氷機能を備えた探査機レーギング・ブル(暴れ牡牛)が、4か月かけ遂に内部の大海に到達。サンプル採取を行った。
結果、数十種類の微生物と肉眼で確認可能な大きさの生命体を発見。木星の潮汐力で発生する水温の変化によって代謝する未知の群細胞生物や甲殻類に類似した生命体を発見した。
これらは火星に続く、太陽系で3つ目の生態系の発見である。

これらの大発見を詳しく分析したところ、遺伝子情報の複製方法自体は地球の生命と大きく異なるものの、火星と同じくやはりアミノ酸が一部一致。
この事実から、太陽系起源の生命体の場合は全て同じ有機物を原料を元に生命に進化したという仮説が現在の主流となっている。

またエウロパの表面上にある氷の地割れに付着した赤い物質は全て小型の甲殻類の死骸であることが明らかになった。

なお木星の強烈な磁気圏のため表面に人類が居住することは不可能である。
氷の内部に科学者の一時退避用シェルターと潜水母艦基地がある。

イオ

イオは太陽系の中でも珍しく火山活動が活発な天体である。
表面に分布する霜状の硫黄結晶の他、鉄・銅・ニッケルなどの金属資源採掘も盛んである。しかし放射線によって重機械や計測機器が壊れやすく、採掘コストもかかるため「アステロイド・ドワーフ社」など大企業の無人採掘現場が存在するが、小惑星帯の鉱業よりもコストが割高なため経済規模は大きくない。

カリスト・ガニメデ

表面に採掘可能な水の氷の結晶があるが、放射線によって汚染されているた生活用水や工業用水には向かず、小規模な核融合燃料として使用されるのみである。



土星

土星。木星の放射線量と比べると軽微である。

土星の距離までに至ると人類は経済活動をほぼ行えていない
一部の宇宙探検家による探査と、一時滞在拠点が設置されているだけである。

土星のA環中にある小天体にアメリカ合衆国が所有する「フロント・アストラ基地」が存在し、太陽系外縁天体に向かう宇宙船や無人探査機の整備基地になっている。

将来的には増大する太陽系内長距離航行船の核融合炉や発電用の核融合燃料の需要拡大に向けて土星でも、木星と同じ形式の採掘が進展すると思われるが、未だ経済コストの問題は解決していない。

土星域に人類が初めて到達したのは2135年のことで、火星出身の探検家
サイモン・マックザーリーによる個人的探検の偉業である。
彼はエンケラドゥスで軌道上から無人探査機を投下して調査を行った後、土星のC環から突入しD環まで横切ることに成功した。
しかし「カッシーニの間隙」において小天体が機体を損傷。制御を失った彼の機体は土星の重力圏に巻き込まれ木製表面に落下。
34歳の若き探検家の死に人類文明圏は涙した。

精神転送で土星を訪れる観光客は、今でもマックザーリー受難の宙域への献花を絶やさない。

エンケラドゥス

土星の衛星エンケラドゥス。表面からは高さ200kmにも及ぶ水蒸気の間欠泉が吹き出す。

木星の衛星エウロパと同じく、21世紀初頭には厚い氷の下の大海で生命体の発見が期待されていたが、予想に反して生命体が発見されることはなかった。

数回の無人探査にもかかわらず痕跡が発見できなかった理由について、エウロパと比べて母星の潮汐力が小さい点や、推定されていた崩壊した放射性物質由来の熱量が予想値よりも小さかったことが挙げられている。

タイタン

土星の衛星タイタン。21世紀に液体のメタンが発見された。

表面に液体のメタンの湖や海洋を誇るタイタンでは、2066年に原始的な微生物が発見された。
アンモニアと窒素を主食とする生命体であり、未だ原始的な発展段階だとされている。「惑星検疫」の観点から、今後の独自生態系の発展を阻害するべきではないとして、タイタンでの資源開発や定住を制限する「タイタン環境保護条約」が250か国の批准を以って採択された。

なお23世紀現在、太陽系で発見されている生命圏は、
地球・火星・エウロパ・タイタンの4系統である。


天王星

天王星。地軸が横倒しに傾いている。

天王星は氷型ガス惑星であり、表面の水素とヘリウムに経済的価値があるとされる。
2118年、マーカス・ラスケッティとトーマス・ウィンボのチームが天王星の衛星ミランダに到達。火星のマリネリス渓谷を超えて太陽系最大の落差を誇る深さ20kmのヴェローナ渓谷を踏破。表面に国連旗と人類旗を立てた。
他にも5組の探検家が訪問している。

22世紀に考案された人類文明圏の記章


海王星

海王星。

海王星クラスの大きさの巨大惑星が太陽系外ではハビタブルゾーンに存在し、巨大な海洋を湛えた星であるため、海王星に人工太陽を設置し開拓を行う構想がある。

コストの高さと、精神転送による系外惑星探査が進んでいる現状であえて海王星を開発する必要もないので、今のところ実現の目途は立っていない。

海王星マントル内にあると考えられているダイヤモンド結晶の採掘研究も存在する。



冥王星

冥王星。表面温度は絶対零度近い。

太陽系にある主要な天体の中で、唯一人類未踏の天体である。

太陽系最果ての外縁天体の一つとして、人類文明の記念碑と数十万に及ぶ著作品を埋め込んだ石碑が建立された。




他にも太陽系外の天体や23世紀の地球についても描ければと思います。


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