【読書感想文】リチャード・バック「イリュージョン」
こんばんは!
すごく共感できる小説と巡り合いました!小栗義樹です。
本日は、読書感想文を書かせて頂きます!最近読んだ本・もともと好きな本を題材に、あれこれ好きなことを書いていく試みです!
本日の題材はコチラ
リチャード・バック「イリュージョン」
です。
リチャード・バックは、ルポルタージュ風の作品を書くことで有名な作家です。代表作は「かもめのジョナサン」でしょう。
ルポルタージュとは、現地に赴いて取材した内容をメディアに報告することを指します。ルポルタージュ風の作品とは、事件や社会問題などを綿密に取材し、事実を客観的に叙述する文学のことです。最近ではノンフィクション作家という肩書の方が当たり前になっていますが、実際に読むと、ルポライターとノンフィクション作家には、若干の違いがあるような気がしています。
僕はニュースメディアを運営しているので、現地に向かって現場を見るという事をよくやります。だからこそ、ルポルタージュ風の作品には特別な思い入れを持っていたりします。
そんなリチャード・バックのイリュージョンですが、リチャード・バックの頭の中に流れている物語をそのまま本にした感じがします。翻訳を担当した村上龍さんによる解説を読むと、飛行機が好きで、素直で、自由な人柄であることが伝わってきます。
イリュージョンは、リチャード・バックの生き方を示した本なのではないか。読み終わったあと、そんな印象を持ちました。
一貫して描かれているテーマは「自由に生きたい」です。もう少し厳密な言い方をすれば「自由に生きて何が悪い?」だと思います。自由に生きることによって生じる他者への迷惑も、もはや仕方がないじゃないかというかなり際立った考えが投影されているなと思います。
僕は、確かに普通に生きているだけでも誰かに迷惑をかけるのだから、それならば自由に生きた方がまだ清々しいかもなと思いながら読みました。
しかしこの本、自由に生きることを押し付けている感じがしないのは、とても上品だなと思います。
少しだけ内容に触れると、ドンという元救世主が、自由に生きたいという願望を叶えるために、救世主を辞めて飛行機乗りになるという話です。ドンは、人間たちに奇跡を見せたり、道を示すなどの活動をしていたのですが、いきなり救世主を辞めてしまいます。自分のこの先の人生を不安に思う人間からすると、救世主がいなくなることは大変困ること。多くの人から、お導きをと声をかけられるドンですが、自分の人生ですから好きなように生きてくださいとだけ言い残し、飛行機乗りになります。
そうなんです。このお話、自分の事くらい自分で決めろという、なかなかに厳しいメッセージが込められているのです。まぁ、当たり前といえば当たり前なのですが、作品からそんな風に突き付けられると、人によっては苦しいのかもしれませんね。
その後、ドンはこの本の語り手であるリチャードと行動を共にします。リチャードは、ドンの自由な立ち振る舞い・考え方・奇跡に魅了されていき、救世主の力に興味を持っていくことになります。
ドンとリチャード・ドンとその他の人間・救世主と元救世主の対比や、救世主が人間界にいて自由な人間としてふるまう姿などが、一貫して「自由に生きて何が悪い?」というメッセージを明快にしているように感じるのです。
「この世ははすべてイリュージョンだ」というセリフが出てくるのですが、要するに、お前らが一歩を踏み出せば出来ないことなんてほとんどない。想像は創造なんだ。と言っているようにも思います。
読んでいて、これほど文学的なアドバンテージを駆使することが出来ている作品も珍しいなと思います。すごく分かりやすいのに、かなり奥深い作品です。村上龍さんが訳を担当する理由がよく分かります。
僕は読みながら、救世主の立場を真剣に考えました。なかなか無い経験です。救世主の立場を考える事なんて。それは、僕の中に救世主という職業・カテゴリー・ジャンルが存在しないからだと思います。僕はそもそも、救世主の預言とか奇跡などを信じていないのです。
この本は、救世主という立場について徹底的に考えてから書かれたのだと僕は思います。というのも、救世主がもし人間ならば、他者に奇跡や道しるべを提供する仕事なんて、絶対に退屈だと感じるはずだからです。そりゃ、最初のうちは職務をまっとうしようとすると思いますよ。でも、ずっと続けるのは難しいんじゃないでしょうか。時間が経てば飽きるでしょうし、人間が愚かに見えてくると思う。
実存主義を突き詰めた作品になっていますよね。そういう意味でこの作品は、ルポルタージュ風の作品という事も出来るのかもしれません。
ちなみにこの本、冒頭はもったりしていて少し読みにくいです。正直なところ、若干退屈だなと感じる方が多いかなと思います。しかし、意図が分かってくるとめちゃくちゃ面白いです。
ですので滅多に言いませんが、僕の感想文やネットに上がっている考察や感想などを先に読んだほうが分かりやすいかもしれません。時には、補助線ありきで読む本も面白いのではないかと思います。
本腰を入れたい、気合いを入れたい、生きることに迷っている。そんな時に読んでみてほしい本です。ぜひ、古本屋さんなどで探してみてほしいなと思います。
最後にお知らせをします。
先日より、メンバーシップをスタートしました。
本日の読書感想文の題材にしたイリュージョンに関するちょっとした話なんかも公開する予定でいます。興味があれば、のぞいてみてください。
宜しくお願い致します。
ということで、本日はこの辺で失礼いたします。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
また明日の記事でお会いしましょう!