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芙蓉歌句集

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わたくしが詠みました短歌・俳句をこちらでご紹介させて頂きます。
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2019年5月の記事一覧

滴るや『女吸血鬼カーミラ』

滴るや『女吸血鬼カーミラ』

ごきげんよう。本日は、先日ご紹介頂きましたレ・ファニュ著『女吸血鬼カーミラ』を読了いたしましたので、その仮装をしてまいりました。

耽美な世界に浸りながら徐々に水底の闇に引きずり込まれていくような感覚に魅了され、一気に読み終えてしまいましたわ。

『女吸血鬼カーミラ』は1872年、ヴィクトリア朝後期に発表された作品でして、日本はまだ御一新の余韻が残る明治4年の頃でございました。岩倉使節団が欧米を歴

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涼しさや遠き屋形の河東節

涼しさや遠き屋形の河東節

ごきげんよう。
本日5月28日は、元来、兩國の川開きが行われていた日だそうでしてよ。
今となりましては隅田川の花火が有名な兩國ですけれども、元々は今日から夏の3ヶ月間、納涼船を出して夕涼みをしたそうですわ。

江戸を彩る兩國橋の夕涼み。きっと夜店も出て賑わったのでしょうね。

さて兩國川開きの華と言えば花火。元々は死者を弔う目的があったそうですけれども、兩國の旦那衆が客集めようと次第に豪華絢爛なも

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短夜やヴラド・ツェペシュの魅かれたる

短夜やヴラド・ツェペシュの魅かれたる

ごきげんよう。
本日は明治30年にブラム・ストーカーさまの小説「吸血鬼ドラキュラ」が刊行された日ということで思い切って吸血鬼の仮装をしてみましたわ。

几帳面な性格で夜会服にマントを羽織った紳士的な伯爵の姿。それまでの悪役像とはまた異なった斬新な人物像ですわよね。似合っているかしら?

少女の生き血を吸う吸血鬼という設定は早速本邦にも輸入されまして、大正に入りましてから押川春浪さまという冒険小説を

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舟歌や青き蕤賓流れをり

舟歌や青き蕤賓流れをり

ごきげんよう。
突然ですけれども、皆さま「吹雪月」って何月のことだか分かりますかしら?

――実はわたくし今まで少し調べ物をしていたのですけれども、正解は5月のことを「吹雪月」と言うそうでしてよ。卯の花を雪に見立てたそうですけれども、試験に出たら冬の月と間違えてしまいそうですわね。

このように季節の異名というのは探せばキリがないのですけれども、一方で由来のよく分からないものも多いですわ。
冒頭の

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ラムネをば童女のやうに覗きをり

ラムネをば童女のやうに覗きをり

夏シャツや乱れて蕎麦の音すなり
ラムネをば童女のやうに覗きをり
青霄を氷菓子にて食したり

席題「私と食事」 #題詠答練

照り映えし小満といふ深き色

照り映えし小満といふ深き色

ごきげんよう。今日は蒸し暑い一日でしたわね。
本日から二十四節気の「小満(しょうまん)」に入りまして、また一段と汗ばむ陽気へと季節が進んだように感ぜられますわ。これからは暫くこういったお天気が続くのかしら。

「小満」は言葉としましては草木が成長し天地に満ち始める頃という意味だそうですけれども、天文学ですとより厳密だそうで太陽の黄経が60度になる瞬間だそうですわ。これが90度になりますと夏至、逆に

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梅雨なれや書庫の半歩の音しづか

梅雨なれや書庫の半歩の音しづか

皆さまごきげんよう。今日は久々にまとまった雨の一日でしたわね。
梅雨にはまだ早いかと存じますけれども、今日のお天気は迎え梅雨と言って良いのかしら。

夕方になって小降りになったので良かったですわ。圖書館に用事がありましたので困ってしまいましたもの。
今日は圖書館、ひっそりと静まり返っておりましたわ。けれども、雨の日は人が居ないので却って落ち着けるかもしれませんわね。

また今度、雨の日に圖書館へ行

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清らけし羽音すなり団扇撒

清らけし羽音すなり団扇撒

ごきげんよう。奈良にあります唐招提寺(とうしょうだいじ)というお寺さんでは毎年この時期に「うちわまき」という行事があるそうでしてよ。
僧侶の皆さまが鼓楼の上から「宝扇」を撒く一風変わった行事で、うちわを授かると魔除けのご利益があるのだとか。

鎌倉時代の僧が蚊を殺さなかったことを讃えた法要だそうですわ。

この「うちわまき」という行事の由来ですけれども、鎌倉時代に覚盛という高僧の方がおりまして、あ

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たをやけし膨らむ頬や白団扇

たをやけし膨らむ頬や白団扇

ごきげんよう。
例年の5月はこんなに蒸し暑かったかしら――。昨晩から宿題の作文をしていたのですけれども全く進みませんでしたわ。

まだ早い気もしていたのですけれども、こうなると扇風機も欲しくなりますわね。扇風機、大正の昨今となりましては電氣式のものが主流ですけれども、まだ日が浅い明治中頃まではゼンマイ式だったそうでしてよ。

そのさらに昔、江戸まで遡りますとわたくしが手にしている団扇を幾つも付けた

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三社祭木遣の声の歩みたり

三社祭木遣の声の歩みたり

ごきげんよう。
今週末は浅草の三社祭ということで、今日は100基ものお神輿が町内を練り歩いておりました。お祭りは明日の本社神輿で山場を迎えるのですけれども、囃子の音というのはいつ聞いても情緒がありまして良いですわね。

それと、間違えやすいのですけれども、三社祭は浅草寺ではなく浅草神社のお祭りですのよね。浅草寺を開いた僧と菩薩像を見つけた兄弟の、三人を神として祀っているので三社となっておりますわ。

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竹の子に抜かれし朝や草の露

竹の子に抜かれし朝や草の露

ごきげんよう。
季節が巡るのは早いもので、立夏も末候「竹笋生(たけのこしょうず)」になっておりましたわ。

俳句ですと初夏の季語で「たかんな」とも申しますけれども、ここまで伸びてしまいますともう頂けませんわね。あまり土から出ないほうが良いと聞いたことがありますわ。

さて、タケノコは俳句でもよく題材になるのですけれども、扱うのかが難しい季語の一つですわね。例えば食材として捉えるのか植物としてなのか

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風光る千鳥ヶ淵の小舟かな(岩波世界6月号佳作)

風光る千鳥ヶ淵の小舟かな(岩波世界6月号佳作)

ごきげんよう。
このたび岩波「世界」6月号の岩波俳句 さまにて拙句の一つを佳作に選んでいただきました。

選者の池田澄子先生、並びに毎月投句の機会を用意して下さっております世界編集部の皆さま、そして何よりわたくしの俳句活動を見守って下さっております皆さま、まことにありがとう存じます。

雑誌を手に、初めてわたくしの名前を活字で見たときは感無量でしたわ。

俳人としてはまだまだ日が浅く精進しなくては

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濡れ髪や八十八夜の白き湯気

濡れ髪や八十八夜の白き湯気

本日5月2日は「八十八夜」ということで立春から八八日目の日ですわね。
様々な農作業の目安になるそうで、特に唱歌に歌われております茶摘みの印象が強いのではないかしら。立夏まであと数日。季節の移り変わりを感じさせる、爽やかな緑の光景かと存じますわ。

「夏も近づく八十八夜」という唱歌がありますけれども、この曲、作詞作曲ともにどなたか分かっていないそうですわ。

わたくしの印象ですと、見たままを直接的に

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寿ぐや白き牡丹のやはらかく

寿ぐや白き牡丹のやはらかく

ごきげんよう。
本日4月30日は七十二候「牡丹華(ぼたんはなさく)」ですわ。暮の春を飾るにふさわしいお花ですわね。

「花の王」で「花王」とも称される牡丹ですけれども、特に古代中国では大変珍重されたようで様々な美称が伝わっておりますわ。

さて、この「牡丹」の美称ですけれども「花王」の他にも「富貴草」でしたり「天香国色」でしたり、どれも縁起の良いお名前ですわね。天の香りに国の色。堂々とした花ですか

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