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涼しさや遠き屋形の河東節
ごきげんよう。
本日5月28日は、元来、兩國の川開きが行われていた日だそうでしてよ。
今となりましては隅田川の花火が有名な兩國ですけれども、元々は今日から夏の3ヶ月間、納涼船を出して夕涼みをしたそうですわ。
江戸を彩る兩國橋の夕涼み。きっと夜店も出て賑わったのでしょうね。
さて兩國川開きの華と言えば花火。元々は死者を弔う目的があったそうですけれども、兩國の旦那衆が客集めようと次第に豪華絢爛なものになってまいります。江戸の俳人、宝井其角さまはその様子を、
「一兩が花火間もなき光かな」と詠んでおられますわ。
宵越しの銭が花火として散っていったのですわね。
江戸当時の兩國の夕涼みを描いた錦絵が残っているのですけれども、橋からは数多の観衆が身を乗り出し、川には着飾った納涼船が溢れ出て、夜店の提灯が煌々と川を照らしている様は、まさに活気あふれる江戸の夏を体現したような賑わい。其角さまは他にも幾つかその様子を句に残しておりますわ。
「此の人數船なればこそ涼みなれ」其角
「千人が手を欄干やはしすゞみ」其角
わたくしは隅田川の生まれで両国橋もお散歩出来る距離なものですからより特別な響きを感じてしまうのかもしれないですけれども、この宝井其角さまの数々の句を鑑賞いたしますと江戸の血が騒ぐやうな心地が感ぜられます。
涼しくて熱い。それが江戸の夏なのではないかしら。
涼しさや遠き屋形の河東節 芙蓉雪子
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