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再現性の低い「転職と副業のかけ算」【「死ぬこと以外かすり傷」箕輪厚介】

いつ頃だろうか、世の中にかっこいいがものすごく溢れ、それぞれが、それぞれの世界でかっこよくなってしまい、それぞれの世界でもてはやされ英雄になる。そんなそれぞれの小さな世界が無数に出現し、そして、なにが本当にかっこいいのかわからなくなった。

以前は、これはかっこいい、だれが見てもかっこいい、というものがあったはずだ。だれもが熱狂し、夢中になり、たとえ夢中になっていない側の人も、ある意味認めてしまうような価値観。王道の価値観。だれもが見ていた月9のドラマだったり、だれもが応援していた巨人だったり、アンチの阪神だったり。

とりあえず、おさえておけば「おっくれってる〜❣️」と女子達に嘲笑れる心配のない王道ってやつを。雑誌「popeye」で必死に予習して学校に行かなければならなかった時代があったような気がする。

しかし、安心してください。今やそんな王道など知る必要も、ないのだ。

価値観は多様に存在しており、その多様さの中で、独自の価値観をつぶやき続ければ、自分という存在は、あるひとつの価値観のなかで存在できるのだ。

メジャーがなくなったことで、すでにマイノリティは存在しない。
その上、価値観の変容がおそろしく早い。大通りが嫌で脇道にそれたつもりが、いつの間にか自分の歩いていた道が大通りになっていたりする。それくらい、今の価値観の勃興には流動性がある。マイノリティであることが許されない。

「死ぬこと以外かすり傷」をはじめ読んだ時、筆者のキャラクターの強さに目を奪われてしまっていたが、読み返してみると、ものすごく考え計算高く行動しているのがわかる。

また、本書の内容は再現性の低い「転職と副業のかけ算」なのではないかと思った。筆者の考えや行動に共通している部分が多い。

会社の枠にとらわれない生き方だったり、本業とは別にマネタイジングする術だったり、を身につけている。その嗅覚をもっている。

ただ、箕輪さんという類稀なキャラクターと、その周りにいる更に強力なキャラクターが独自性を生み出していて、おそらく、企業に属する一般的なサラリーマンにに再現性は難しい。

若い世代の方にはそのパンクな精神が共感を与えることもあるかもしれないが、いざ就職した先が、創業90周年などという東証1部上場企業だった場合、企業特有毒エキスやヒエラルキーに打ちのめされることになるだろう。

箕輪さんは、若干独自性が先行しすぎてしまった感があるが、今後、見城さんという壮大な山の麓でどのような仕事をされていくのか、また、どんな新たな道をみいだしていくのか、注目していきたいと思う。


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