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強制現場入社式と社員管理アプリの時代錯誤

昨日、新学期という何の節目にもならないきっかけを悪用して労働者から支配層がリモートワークを簒奪している現状を憂いましたが、状況は思ったより深刻だった。ヘッダ画像をお借りしています。

この国の企業はなんとしてでもウィズ、ニューノーマルといった生活様式を受け入れたくないようだ。どうしても2019年以前に栄光を見出しており、その頃に戻りたい。戻れば絶対に成功するとか思い込んでいるのだろう。全くの前時代的思考だ。

ぼくがびびったのは新入社員のエンクロージャーです。多分現状だいたいの新入社員とは痛烈な学生時代を強要された過去を持ち、

こと対人関係、コミュニケーションにおいて傷を負っている。正確に言えば本来得られるはずだった普通の生活が大学生活において得られ得ず、多分なんらかの不安をいだいた状態で新入社員となっているんじゃないかと思う。

彼女/彼らを何にも染まっていない早い段階で囲い込み、教育する。

採用活動する企業側も、学生時代にがんばったことってなんですかというくそつまらない質問をようやく自粛し始めたらしいというニュースを2022年台になってやっと見かけるようになった。

当時の三年生がずっとガラスの中(モニタ越し)から大学に通っていたことに今更気づいたのか感が否めない上に、じゃあそのちょっと前の世代だって低学年次はそれまで通りだったかも知んないけど次の人生を意識し始めなきゃならない2-3年次にはガラスの中だった事実を無視している。

トレンドに敏感たらねばならない企業活動の上で、これから自社を支えてもらおうという世代が味わった苦痛にすら芽が向かずに、まるで脳死、壊れたラジオかカセットテープが同じ言葉を繰り出すように学生時代にがんばったことは~~~という質問を連発して、何も頑張れることなんてなかった学生たちを痛めつけて「お前、不採用でつ!w」のメールを送り付けていたんだから笑えすぎる。

でそんな中でガラスの中にいるしかできなかった学生たちを新入社員として強制対面で迎える入社式のようなろくでもないイベントが今週は開かれまくる。――もちろん当人である、先週まで学生だった人たちが納得しているならぼくは何も文句はいわないけど―――とにかくいきなりだ、いきなりお前らがこれから所属する会社はもう何が起ころうと永遠に対面出社を義務付ける、と言わんばかりの問答無用強制現場出社状態での入社式だ。

それだけでもかなり激熱なのに、中には専用アプリ入れろって言い始める企業がいるんですって。アプリて……

私物である携帯に(社用スマートフォンだろうが肌見放さず持ってなきゃいけないなら私物と見做せるし、なんら変わらない)会社が発行(あるいは委託企業が発行)するアプリ入れろってお前それ単に管理したいだけやろがい状態だ。

現状、スマートフォン周りにおけるアプリケーションインストールによる個人情報奪取の状況は深刻だ。法令よりも技術が先に発達し、しかも普及してしまったグレーゾーン状態であるのを良いことに、アプリのインストール即当人の個人情報抜き取りに同意させる画面を寄越しまくる。そしてBtoCセールス企業開発のアプリならその同意の中で(あるいは予告なく)プッシュ通知で邪魔な情報を寄越しまくる。アプリ開発事業者はおそらく、自社アプリがインストールされたデバイス上の情報は根こそぎ奪っていいものと理解している。あるいはそのような空気を市場に蔓延させている。

で入社した人々がインストールさせられるアプリの中身が紹介されたから見たけど驚かない。いま上で言ったその通りだからだ。

これは日立の例。平社員はアプリ入れて、目標を決めさせられるんですって。

目標って自発的に表明されるものだ。他者が第三者に目標の発行を促すのは言質を取る以外の目的などない。「お前こう言ったよな?入社ん時に目標これですつったよな?じゃあ定時過ぎてるけど帰るなんてありえねえよな?」が起こる。お前はうちの会社にやりがい見出してんだろ?こんな成長したいって入社ん時(あるいは早朝に。ああ、情けないことにこのアプリでは1営業日当日の朝に目標を入力させて上司に見せる機能だって持っているのだ)に思ったんだろ?だったらやることはひとつしかねえよな。

今見返したら目標じゃなくて「宣言」とか書かれてる。それをチーム内どころか全社で共有できるっぽい。うーわ

それを「ひとりひとりが前向きになり、応援でつながり合う」と表現している。……

AIが毎朝送りつけてくる「目標達成のために今日することは何ですか?どのように工夫しますか?」への答えなんてひとつしかない。「眠い」。

でバカ正直にやるべきこと(薄ら寒い言葉だ)を入力するとチーム内に通知がぶっ飛ぶ(勘弁しろ)。素晴らしい目標だね!手伝えることがあったら何でも言ってよ!←もう新人にかけるべき言葉がアプリに決められているのか?だったらこれはアプリの名を借りた「管理職・役員・取締役が決めた平社員の行動制限を脳死で実行させる機械」と何が違うんだ?

開発者によればコミュニケーション上の利点として案件外での関係性が生み出せる、おそらくヒエラルキーの低い者が簡単に役員と話せることとかがすんげーらしいが、そんなもん「仕事だから・忙しいから」で上役は容易に無視できる。士の事というこの手垢が付きまくったたった二文字の単語をマジで社会の人々は自分の都合良く利用する。

また別のある一社における狙いは刺激を与えあって自分も頑張ろうと思わせたい、だった。やりがいの強要、やりがい搾取が起こりうる環境を強制的に起こそうとしているとすら言えるんじゃないだろうか?

とにかく新入社員をモノと見做して管理下に置きたい古い世代。代官と越後屋のように、アプリ開発の若いスタートアップ世代が取り込まれるために必死に役務提供しようという、本来的な価値観が後退した構図だ。ライオンの前に兎が飛び出して来、さあ食ってくれ(自分の未来をぜひ暗くしてくれ)と言っているのと何が変わらない?

若い世代は、古い世代を過去のものにすべく自己研鑽し、目標こそそのように設定されうるべきなのではなかったのか。それなのに古い世代の恥ずべき価値観にコミットメントを見出してどうするのだろう?

前も言ったけどこのようなサービスを提供して2ヶ月15万とかの利益を得ている企業が存在していることに戦慄する。渋谷区の教育の例、子どものプライバシーを平気で奪っている現状を生み出している環境と全く同じである。


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中村風景
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