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太陽に焼かれて殺されたダニの香りの芳香剤を売れ 第13.5話 Summering

信じてる顔なんて きみにはないと おお(ああ だったっけ?) 思っていた
あの欠けた月が昨日の傷を覆う そう思っていた

闇を数えながら 人が要らない世界へと
悲しい歌は消えないから ぼくは時を想おう

案じてる顔なんてきみにはないと ああ 思っていた
滑舌の枯れた砂でぼくの手を埋める それを見ていた

波を数えながら 誰も知らない世界へと
見えない色が奥に ある 嘘の色が

恋を失ったからたとえ晴れても 今は何も届かない
大きなネオンや枯れ葉の中で 朝も 夜も 今を弾こう

*

これは俺がちゃんと楽器をやってた頃に最後に創ったうただった。喫茶店で今の今まで浅荷と話していたことを、外を歩きながら思い出したらこの歌が勝手に流れてきた。

浅荷は特に理由がないが俺の前を歩いている。この後はモールに行くだけだが、俺はトレの話をするする言っといてしなかったし、それを自分で遮り変な話ばっかりして浅荷に笑われるし、自分の行動を振り返ると意味がわからん。こんな男に大事な休みを使って共に生きる道を選んだ俺にはもったいない女だと思う。なんかこの言い方だと俺の女にいつの間にかなってるみたいに見えるかも知れないが、単に事実を並べただけだ。

この歌の2番以降が全く思い出せない。でもこの歌は浅荷と話していたら勝手に俺の頭で流れてしまった。今もそうだ。

めちゃくちゃ簡単な歌で、幼児でも思いつくコード進行だ。Aメロから
C G / Am
F G / Am
という、Ebとかを平気で使うような捻じくれた日本のロックだのポップだのの連中から見たら哀れにすら見えるだろう。でもメロディが勝手に思い浮かんで来、載せられるコードがこれしかなかったんだから仕方がない。F# C C#m みたいな頭のおかしい、しかしながらオルタナティブ・ロックだのなんだのだったらちやほやされそうな進行を無理やり載せるなどして、時流に逆らうのが出たてのグループのやることなのかも知れない。

でも俺は自分の心に嘘はつけなかった。このメロディを1番活かせるコード進行は児童でも思いつき、リコーダーでそれを再現するだろうCGAmだった。歌を創る時、というか歌を「決める」時にメロディより大事なものなんてない。メロディを活かせない進行に価値なんてない。

歌を決めた後は、ようやく歌を創っていけばいい。それはギター、ドラム、ベース、ボーカルとかそれぞれの裁量を発揮し合うわけだ。そこでもし、CGAmより心の中ではじける説得力ある進行が生まれたのであれば何度も演奏してみてそれを採用するかどうか決めるわけだ。それこそが、ひとりで楽器をやるのではない意味だと思うんだが違うだろうか。

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