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アフターモルカーに見るソニー損保CMの奇妙
ソニー損保のCM
モルカーが終わってしまい、その悲しみを埋めるかのように様々なタイアップが発表されています。
特に目を惹いたのは、オンエア直後に流されたという一般公募により完成したCM。
#モルカー 最終回😭
— グッドドライブ(ソニー損保公式) (@gooddrive_pr) March 22, 2021
3ヵ月間、癒しと笑いと感動をありがとうございました❤️お疲れさまでした🥕#モルカーありがとうCM 公開✨
皆様のおかげで素敵なCMになりました📺ありがとうございました!見逃した!という方はこちら👇 #GOODDRIVE #グッドドライブ #ソニー損保 pic.twitter.com/p26T79XVFy
応募が始まったのはひと月前だった。
\あなたの作品がCMに❓/
— グッドドライブ(ソニー損保公式) (@gooddrive_pr) February 22, 2021
運転マナーを教えてくれた #モルカー に感謝を伝えるCMを一緒につくろう🥰
【応募方法】#モルカーありがとうCM で作品投稿!!
イラスト/人形 なんでも🆗
必ず、以下の規約を確認の上でご応募ください。https://t.co/S4Sw5aEHS8#GOODDRIVE #グッドドライブ #ソニー損保 pic.twitter.com/xDjTHZD8PS
上記リンク内にもある応募規約には些か不備があった(下記引用の上段部分には改定により否定線が引かれている)ようですが、
● 応募作品の著作権は全て著作権(著作権法第27条および第28条を含むその他一切の権利)を当社に譲渡するものとし、著作者人格権を行使しないものとします。(2021年2月22日に以下青字に差替え)
●投稿者ご本人は応募作品について、当社がCMに使用する権利を無償で許諾するものとします。(2021年2月22日追記)
●投稿者ご本人は著作者人格権を行使しないものとします。(2021年2月22日追記)
既に投稿者本人が名前も内容も当該SNS等に発表した後なのに投稿した人が著作者人格権を使っちゃいけないというのも非常に不思議ですが、
1,著作者人格権とは?
「著作者人格権」とは、クリエイターの「名誉」や「作品への思い入れ」を守る権利です。
こういった感情的な部分についての権利であり、作品の財産的な価値についての権利である「著作権」とは別の権利です。
著作者人格権の具体的な内容は著作権法第18条から第20条及び第113条6項に定められています。
一応、モルカーアニメ制作会社であるシンエイ動画のみなさんが提示した条件
杉山さん 1話ごとのテーマをかっちり決めているというわけではなくて…見里監督には1話完結型で、毎回違ったテーマのお話をお願いしました。見里監督の作品「マイリトルゴート」を拝見していて、ファンタジーの中に社会風刺をうまく入れる人だと思っていました。子供向けアニメではありますが、ただカワイイだけではない、少し毒のあるストーリーに仕上げていただきました。
(杉山さんはエグゼクティブ・プロデューサー)
に応えるように見里さんが制作し、見事人々の心に波紋を与えたペット車内放置や恐ろしい運転、不法投棄なんかの場面が抜かれ、「良からぬ例」として例示された形で、
#モルカーありがとうCM🥕
— グッドドライブ(ソニー損保公式) (@gooddrive_pr) March 22, 2021
TVCMで使用していない作品は、#ソニー損保 公式YouTubeチャンネルでご紹介する予定です🍀詳細は決まり次第、お知らせしますね!#GOODDRIVE #グッドドライブ
果たしてムービーは完成した。最終回オンエア後に1回だけ放映されて、残りはYouTubeで発表になるらしいですね。
そんな下地もあり、敢えてこのムービーの異質さを挙げるとするなら、
林さん あとはアイデア出しの中で世界で見てもらいたいという話になり、セリフはナシになりました。文字要素も日本語はなるべく減らして、多国籍感が出るようにしよう、とは話していました。
というメンズノンノでのシンエイ諸氏へのインタビューにもあるように、あたかも公式にナレーションが解禁されたような造りになっている点でしょうか(ほぼアニメ映像で構成されているため)。
もちろんソニー損保の製品はシンエイ社のように世界に通用させる目的がないため、思いっきり日本語の科白を挿入しても良い。経済的根拠は成立する。モルカーは経済的主張のないアニメですが……
ソニー損保がモルカーに目をつけた理由について
モルカーに感動した、最終回を観終わった家族が、「これからもモルカーたちが(仮に実在するとするならば)楽しく過ごせる道路事情、交通事情を保つためにソニー損保に入りましょう」と思ってくれるのであれば、今回のタイアップの目的達成です。
ソニー損保=ソニーフィナンシャルホールディングスは去年の夏に上場廃止の扱いを受けているんですね。
ソニー株式会社に統合された。この図式を見ただけで「子会社化だ」と判断できる方々ってすごいですね。ビジネスパーソンだ。
行動指針と言いますか、意思決定に関わる機関がふわっとしているように見えてしまうのはそのせいなんでしょうか。ソニー損保って名だたる俳優を起用したCMとテーマソング的なキャッチでかなり際立ったブランディングを実現しているように思えますよね。
業界ランキング研究サイトによると、
損害保険会社名 順位 正味収入保険料 順位 当期純利益
東京海上日動火災保険 1位 2兆2,475億円 1位 1,700億円
損害保険ジャパン 2位 2兆1,848億円 2位 1,306億円
三井住友海上火災保険 3位 1兆5,479億円 3位 940億円
あいおいニッセイ同和損害保険 4位 1兆2,767億円 4位 447億円
トーア再保険 5位 2,080億円 11位 15億円
AIG損害保険 6位 1,769億円 7位 47億円
共栄火災海上保険 7位 1,667億円 10位 22億円
日新火災海上保険 8位 1,489億円 8位 38億円
日本地震再保険 9位 1,293億円 24位 ▲1億円
ソニー損害保険 10位 1,194億円 6位 58億円
アクサ損害保険 11位 543億円 9位 28億円
セコム損害保険 12位 516億円 15位 5億円
セゾン自動車火災保険 13位 511億円 28位 ▲19億円
アメリカンホーム医療・損害保険 14位 487億円 5位 87億円
アニコム損害保険 15位 391億円 12位 13億
業界10位に位置しているようです。発表日付は2020-08-17とのことなので、おそらく現在においても未だ燻っている、業界最上位とは言えない状況。ソニー損保にはこれほどの知名度があっても尚、訴求力を高める余地がある。
このような背景があるのならば、2021年の潮流ど真ん中にあるモルカーに目をつけるのも必然だったのかも知れません。何が何でもこのタイアップを当てなければならない。なりふり構っては居られない。その粗が謎を残す現規約に発露してしまったのかも。
車がテーマである=視聴者・ファンは車に親しみを持ってくれている状態、土壌が既に形成されている。
さらに
子ども向けアニメ=親子で見る可能性が非常に高いアニメ=車が必需品となりがちな家庭が視聴層のメイン。
と、まさにソニー損保が囲うべき潜在顧客層の中枢を担っていると表現しても過言では無いアニメだったのではないでしょうか。
後記
期せずして、アニメタイアップ事情から見る損害保険市場の厳しさ、苦境に立たされている損害保険市場という着地点になりました。信じてはいただけないかも知れませんが、ガチ目にこんなことを書くつもりはなかった。次はもっと楽しく書かせていただきたく存じます。
お読みくださりありがとうございました。
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