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小ぎたない恋のはなしEx3.5 忠誠心ごときが言葉を発するな
前回
僕はメンバーシップ型雇用に相容れなかった。そして古き悪し(ふるき・あし)年功序列制度が現存する理由もわからない。この前者と後者は相互に最高にネガティブなシナジーを形成して社会を席巻したのだと僕は理解しており、彼らに対して心からの低評価を送った。
年功序列制度がいかに評価が低いかについて……自分を生んだ父には敬意を払い敬語を使い、父より偉い祖父にも当然それが適用される。父がOKした進学先を祖父がNOといえばあっけなく父とのコンセンサスはなかったことにされる。そんなことが当然にまかり通るのが年功序列社会だと言える。
年功序列制度により適度に尊厳を破壊された生まれたての人間(20そこらなんてもっと庇護されるべき「生まれたて」だ)たちを柔らかく包み込む暴力がメンバーシップ型雇用だ。20歳を越えて、物事は自分で判断しても許されると意気込んで社会参画しようと思った若い産声を、メンバーシップ雇用は容赦なく叩き潰すだろう。
あるいは既にその頃には、同じように柔らかく当然のように存在する上下の層に飼い慣らされ切っているかも知れない。
言わば社会の庇護(と見せかけた暴力)下で勉学の機会を得た直後は、同じように当然新しい暴力に包まれながら生きることだけが自分に残された道なのだ。みたいなことを脳死で受け取ってしまうぐらいの洗脳が施された状態に義務教育および寄付金集めしか能がない私立高校と大学がしてくれるような気がする。
向こうが必死で飼いならしてこようとするんだから、それに迎合してしまう弱い心を誰が責められようか。新卒一括採用を決めた時の企業の心理状態はいかに御しやすく誘導したい方向に特化した従順な駒が手に入るかどうかでしかない。
生まれながらに分厚い上下の層が勝手気ままに、しかもごく当然であるかのように存在している環境下にいる僕らは実に不幸だ。もしこの層を取っ払う施策が法令によってでも起こった場合に、彼ら/彼女らは自分が産んだ赤子すら育てなくなるのだろうか?なぜなら赤子は自分たちに敬意を払わないかもしれない未来が予測されるためである。勝手に決めつけた言い方をしている僕が言うのもなんだが、まったくもって現金な話だ。
なぜ雇用側が人様をしてそこまで飼いならせる自信をお持ちなのかと言えば、そこにはロイヤリティ、ロイヤルティだの言われる人を煙に巻くような単語を操る方法論が確立されているからである。ロイヤリティとは忠誠心のこと。企業に対して従業員が忠誠ってなんやねんて感じだと思うのが普通だと僕は思っていたが、忠誠って言葉を使うのがいかがわしいからロイヤリティだのいう単語でごまかしているなんてその時の僕は知る由もなかった。
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