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『娼年』ただの優しい言葉やあなたの善意なんて要らない世界【読書感想文】

こんにちは、こんばんは。
今回は、石田衣良さんの『娼年』を読んだ感想を。

『娼年』の間に、何冊か挟んでいたんだけれどね、なんだかうまく書けなくて、心に留めたままにしてあります。

大切な本になればなるほど、なかなか書けなかったりしますよね。

自分の感情とかが邪魔したり。
何かを傷つけてしまわないか、と思ったり…。

もう少しだけ、あたためておこうかなって思っています。



はい。




かなり昔に読んで、今回は再読。
響いた言葉とか、感じたこととか違いますね。

でも、やっぱり好きだなぁ〜って思った1冊でした。

続編があるらしいので、早く読みたいなって気持ちと、もう一度『娼年』を読み返したい気持ち、両方あるな。

物語は、大学生でバーテンのアルバイトをしている主人公の「リョウ」と会員制ボーイズクラブのオーナー「御堂静香」を中心に回っていく。

「普通」の男の子のリョウが、クラブのナンバーワンになっていく過程で、お客さまを満たす充実感や人への探究心を思い出していく。

年齢も背景も、性的趣向もまったく違うお客さまを相手していく中で、表だけではなく、その深さや神秘的な部分を見て感動していく。




リョウくんは、決して深いところまで触れてはいないのに、そっと優しく触れているだけなのに、何故だかお客さまは、皆、心を開いてしまう。

なぜなのか。


でも、なんとなくわかる気がする。

誰も対話なんて求めていない。
ただ、自分の中での出来事で、自分がどうなりたいか、何を大切にしたいかが、すでに決まっている。
リョウくんはただ彼らのシーンを飾る背景の一部となっているだけで良いんだよね。
彼らを輝かせてくれるアクセサリーみたいなもの。


リョウくんだって、ただ自分との対話をしているだけなんだ。
自分の中の気持ちをハッキリさせたいだけ。
あの日の出来事を美しくしたいだけ。



人間って、もしかしたら、本当に自分勝手なのかもしれない。
だけどそれは、とっても素晴らしいことのひとつだよね。

自分が満たされていないと、なにも与えることができないから。

愛情をたっぷり受けて、全身で感じ取っている子どもたち。いつでも幸せそう。


リョウくんも、お母さんの愛情の中でゆらゆらと過ごしていたのだろうか。
誰かにその面影を感じながら…。

それを見つけることができたのなら、幸せになれるのかもしれない…と思ったのだろうか…。


「わかるよ」
「あなたは頑張ってるね、すごいね」
「こうした方が良いよ」

共感の言葉や
ただの優しい言葉、
善意のある導き。


この物語には、どれも必要ではない。

暗い影を落としている背景なんて、だれも知って欲しいとは思っていないし、打ち明けたからと言って、一緒に悲しんでもらいたいわけでもない。

それはただのキッカケや出来事なだけで、慰めの言葉なんていらない。


ただ今渡した想いや言葉にうなずいて、その場を輝かせてほしいだけ。


わかってる。
本人がいちばんわかってるから、野暮なことは言わなくて良いんだよ。



ただ、目の前の相手を愛するだけで良い。
そんな夜もあるよね。


読む人や年齢によって、感じ方とか受け止める場所が違ってくるのかな。。



やさしい人たちがたくさん出てくる小説です。

また数年後に読み返してみようかな、と思いました。


おつかれさまでした。


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