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『アタラクシア』 男女の関係は、もはやミステリー【読書感想文】


今回は、金原ひとみさんの『アタラクシア』。

わたし、金原ひとみさんって『蛇にピアス』以来触れていないんですよね。
あまり内容を覚えてはいないんですが…(ごめんなさい)高校生くらいに読んで、結構衝撃的だった印象。
それこそ、親友がこれを読んで、舌ピを開けて。しかも3つトライアングル型にあげたりなんかして、スプリッタンにしたい〜とか言ってたのを隣で聞いてました。

そんな学生時代の思い出とともにあった金原さんです。

さぁさぁ…前置きが長くなってきたので、これくらいにします。


そもそも『アタラクシア』ってどんな意味なのか。

アタラクシアとは…
心の平静不動なる状態のこと。乱されない心の状態。激しい情熱や欲望からの自由な、平静な心のさま。

引用元:Wikipedia

…らしいですね。(雑)


このアタラクシアを獲得するために、人間は何を得て・何を手放していくのか。
生きていく上で様々な困難や欲望に振り回されながらも、何をどう取捨選択していくのか、その様が描かれている。

物語は、主に男女6人、いや7人の中で進んでいき、章ごとに視点が切り替わる。

男女間での価値観の違いや不倫する側、された側。独身、夫婦、恋人。さまざまな価値観がぶつかり合い、すれ違う。

誰もが感じたことがあるような、人と人・男女の分かり合えなさについても、鋭く描かれていて、登場人物の憤りにハラハラする。


最後には、思わず「うわ…」と鳥肌が立ってしまうような繋がりを見せて、圧倒させられました。

きっとあなたも、最後まで読んだ暁には、本を前からもう一度、読み直すでしょう。


人は何十年人生を共に歩んでも、結局相手のことなどロクに知ることなく死んでいくのかもしれない。

引用元:『アタラクシア』

人間関係。とくに、男女の関係は不可解な出来事ばかりが起こり、最後にはハッピーエンドよりも多くのバッドエンドが待っていたりする。人生で何度目の死を迎えたかわからないなんて人もいるのではないだろうか。まさにミステリーそのものである。


お互いがお互いにとってサイコパスな存在であり、しかし、サイコパスであればあるほど惹かれ続け、いつまでも届かない想い人でいるなんてこともある。

そう、すべてを知らない方がいいのかもしれない。


知らないから、新しい何かを習得したい、そのため、常に彼(彼女)のことをアップデートしたいと願う。
新しい一面は、もしかしたら絶望が待ち構えているかもしれない。
けれども、それは手放す勇気を与えてくれるかもしれない。
何もかもが意味を成し、次のステップに進む道標となって現れる。


『知らない』ということは、希望であり、可能性しかない。


しかしながら、人間によって奈落の底に突き落とされることもある。親しければ、親しいほど、そうなる。

人はどうしてこんな不確実性の塊なんだろう。確かなものが欲しくて言葉や温もりや思考を積み重ねても一瞬で爆発して放射線状に散り散りなってしまう。だから私は信じられない。

引用元『アタラクシア』

大切な人に裏切られた、傷つけられた経験のある人は多いはず。

けれども、その裏では、というかその以前には、すでに自分の方が原因を作っていて、相手はその負債をコツコツコツコツと貯めていて、あるとき一気に爆発。それが裏切りとなって現れたのかもしれない。

「誰も傷つけたことがない」
「自分たちはうまくいっている」
「なんて自分は幸せなんだ」

そう考えている人ほど、傲慢で鈍感で、誰かを深く傷つけている可能性があること。そして、それは一生気づかない可能性もあるということ。


もしかしたら、真のアタラクシアを獲得するには、誰も信じず、愛を求めず生きていく方法が1番なのではないか。なんて考えたりもする。



愛を求め、愛が産まれた瞬間から、何かが変わってしまう。
そして、それが思っていたものと異なっていた・変化してしまった場合、人間は激しく落胆し、堕落してしまうかもしれない。

まぁ、求めないことこそが、愛ですからね。



はたして、物語の最後に愛は終わってしまうのか、また始まるのか。はたまた、終わりのはじまりなのか。


ドキドキしながら読んでみてください。




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