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おれを連れ出さないでくれ
何なんだ。
こいつは何を言っているのだ。
いや、そもそもどこを見て話しているんだ。
視線が妙にズレている。
思わず相手の視線の先を目で追う。
そこには、もう一人のおれが…
おれの隣にもう一人のおれ。
おれ。
おれがもう一人。
え、なに…
どういうことだ。
お前は誰だ。
誰なんだ。
いや、どう見てもおれだ。
いつも鏡で見るおれそのものだ。
じゃあ、このおれはなんだ。
今、こうして思考してい
人生とは、思いがけない場所に立っていることをいうのかもしれない
緒 真坂さんに影響されて、書いてみました。
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窓からの日差で、布団がほんのりと暖かだ。
多分いつものように午後も遅いのだろう。
今日は小春日和ってやつだったようだな。
もぞもぞと足だけ出してみる。
部屋のすみ、カーペットの下の畳に目が行く。
「ダセェな」としみじみ思う。
パイプベッドがギジリと鳴っ
今こそ愛について答えよう
若かりし頃、恋愛は超難問だった。
モダンボーイなどと呼ばれてもいても、ウブな私には、理解の及ばぬ世界であった。
今は、というと、私なりにそのエッセンスを紐解き、自由をこの手にしたのだ。
その答えは「優しさ」である。
なんのことはない、自分にはその「優しさ」しか恋のカードを持ち合わせていなかっただけなのだが。
お金もなく、見た目もなく、才能もない私は、「優しさ」に縋ったといっていい。
どんな
あの先生にブルースを
小学生の頃、乱暴者の昭和な先生が、いた。
何かにつけ手をあげるのだ。
ただ、みんなから嫌われていたかといえば、そうでもない。
勉強ができなかったり、多少、問題行動があるような子供達からはむしろ好かれていたのではないだろうか。
因みにオレはといえば、よく叩かれた事もあってか、まったくもって好きではなかった。
そんなある日、友人の家の前で仲間数人と遊んでいた時のことである。
その先生が物陰から
はじめまして、私のクリスマス
1958年の統計開始以来、2度目の雪が少ない12月らしい…
1度目はいつなんだろう。
美雪は、そんなことをボンヤリ考えながら、積雪ゼロの舗道を見つめた。
辺り一面が真っ白な雪に覆われた、キラキラと輝く朝に生まれたことから「美雪」と名付けたのだと両親から聞いた。
美雪は、雪の降り始めるこの時期が嫌いだった。
降っては解け、また降っては解けて行く雪の降り始めは、まるで自分自身も消えてしまいそうな
夏も出会いも振り向きもせず
今年の八月は、やけに足早に過ぎて行く。
まあ、どの月だって大した違いはないのだが。
ただ、いつも八月という月は、どこか物悲しいものだ。
久遠は、今にも降り出しそうな空を見上げ、静かに歩きだした。
長い連休が明け、やっと日常に戻りつつある街並みを、人の流れに逆らってゆっくりと喫煙スペースへと向かう。
お盆や里帰りとは無縁の久遠にとって、いつもの殺伐とした街の景色の方が、どこかしっくりとくる。
東
鳥よ、おまえはどこで生きるのだ
「ここには何もない」
そのことを分かってから、もう随分と経つ。
この暗い洞窟に落とされて、長い月日が過ぎたのだ。
なぜ落とされたのかもよく覚えてはいない。落とされたのではなく、落ちたのだったか。それとも自ら入ったのか。
今ではそんな事も、どおでもよくなってしまった。
最初のうち、何もないこの洞窟でさえ、ちょっとした冒険に思えたりした。
おまけに、不思議と安らぎを感じる時さえあった。
しかし、