今こそ愛について答えよう
若かりし頃、恋愛は超難問だった。
モダンボーイなどと呼ばれてもいても、ウブな私には、理解の及ばぬ世界であった。
今は、というと、私なりにそのエッセンスを紐解き、自由をこの手にしたのだ。
その答えは「優しさ」である。
なんのことはない、自分にはその「優しさ」しか恋のカードを持ち合わせていなかっただけなのだが。
お金もなく、見た目もなく、才能もない私は、「優しさ」に縋ったといっていい。
どんなに傷つけられても、許すことで愛を勝ち取ろうとし、価値観の相違は、受け入れることで愛を勝ち取ろうとした。
結果、「優しいだけでは」と決まり文句を残し、彼女たちはみな去って行った。
そんな繰り返しの中、時に信じた「優しさ」を大いに疑いもした。
それ以外のカードを持たぬ己に、打ちのめされる日々のあった。
しかし、歳を重ねるに従い、その「優しさ」にも年季が入ってくるものだ。
唯一、自分自身の意志にのみ帰属するは、この「優しさ」だけなのだから。
いつしかその「優しさ」は本物となり、内から溢れる自分そのものとなって行った。
そして悟った。
「優しさ」こそが、最後に残る魅力であると。
もう恋愛は超難問ではなくなっていた。
答えはいつもこの手の中にある。
齢108の春のことである。