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努力すること。

私が何か1つ、人に自慢できることがあるとしたら、継続という「努力」ができることでしょうか。

コツコツ努力することは幼い頃より母から授かった宝物の一つです。
母は何をしても長続きせず、自分で決めたことも3日坊主のくせに、私にはそれを許しませんでした。

そのような理不尽に反発したこともありましたが、コツコツと継続し、小さな目標を1つ1つ達成した成功体験は、いつしか私の自信となり、私のアイデンティティの形成に大きな影響を与えていきます。
 
どんな長い道のりもコツコツ、ゆっくりでも進んでいけば必ずいつかは辿り着く。

その絶対的な信頼は私が努力することを常に肯定してくれました。
 

公正世界仮説と努力

「努力は報われる」、この考え方の根底には、社会心理学メルビン・ラーナーが提唱した「公正世界仮説」があります。

「公正世界仮説」は「単純に世界は公正であるべきだし、実際にそうだ」と考える世界観を指し、「世の中は公正だから頑張っている人は報われるし、そうでない人は罰せられるようにできている」と考えます。
 
しかしながら、世の中は実際には公正ではないですし、報われない努力があるのも事実です。

先日行われた北京オリンピックで羽生 結弦選手が4回転アクセルに挑戦し、結果が伴わなかったとき、「正直、これ以上ないぐらい頑張った。報われない努力だったかもしれない」と語ったことは覚えているかと思います。

実際に彼が4回転アクセルの成功という前人未到の挑戦に対して常人以上の努力をしていたことは周知のことですが、あんな小さな氷の穴に引っかかたり、直前の練習で再び怪我をしてしまうなど、努力に見合わない不運が重なったこともあの言葉に重みを与えました。

そして、多くの方が努力しても成功に結びつかなかったことを経験しているからこそ、「努力は報われない」がリアルに突き刺さりました。

「世界は公平であり、努力は報われる」という、この命題が真であるならば、不遇な境遇にある場合は努力が足りない、そのような目にあう原因があるのだろうということも真でなければいけません。

歴史的に、ナチスドイツによるユダヤ人の虐殺、あるいは世界の多くの国で行われてきた弱者への迫害行為も、公正世界仮説の中で正当化され、実施されてきたことを思えば、やはりこの命題は真とは言えません。

また、会社のためにと寝るまも惜しんで努力してきた結果、身体を壊してしまい、会社を去ることなった人も数多く見受けられます。

世界が公正であるならばこんなことは起きてはならないはずです。
そして、この考え方の行き着く先は「努力が実らないのはこの会社や社会が公正じゃないからだ」と会社や組織、社会を逆恨みするようになってしまうことです。

そうなってしまえば、双方ともに幸せな結末を迎えることは難しいでしょう。
 
現在、「努力は報われる」の世界公正仮説は数多くの実証研究から否定されており、いたずらにこの仮説に囚われ、間違った方向への努力を続けてしまえば、多くの時間を浪費して、人生を台無しにしてしまうことにも繋がり兼ねません。

10000時間の法則と努力

もう一つ、努力が報われるという論拠に1万時間の法則があり、これは「成功を収めたスポーツ選手や音楽家はみんな1万時間という時間をトレーニングに費やしている」ということで、何かの分野で一流になりたければ、1万時間のトレーニングを積めば良いといったロジックで構成されています。

このわかりやすさは国境を超え、トピックスとなり、努力推奨の温床となりましたが、この法則はただの観察研究のみで、科学的な根拠はありません

現在はメタ分析により、努力がパフォーマンスに与える影響についてはスキルの分野によって異なり、スキル習得のために必要な時間は決まっていないということがわかっています。

ちなみに練習量の差によってパフォーマンスの差を説明できる度合いは、
テレビゲームがトップの26%、ついで楽器の21%、スポーツが18%、教育が4%、知的専門職は1%以下となっています。

努力は無駄なのか

では、努力は報われないので努力することはムダなのか、私は決してそうではないと思います。

努力したことは報われないかもしれませんが、努力した事実と時間は決して無駄にはなりません。
どんな努力もどのように意味づけするかは自分次第です。

努力が報われたか報われていないかの基準が「自分以外の世界」にあるのか「自分」にあるのか、世界は公正でなくても自分自身が公正であればそれでいいと思っています。

自分に対して公正であるとはどういうことか、それは自分に嘘をつかないということではないでしょうか。

自分が嫌いなことや、やりたくなことに対して努力しても、それはやはり時間の浪費になることが多いでしょう。

しかし、自分の好きなこと、楽しいことに対して、コツコツと努力していく道のりは新たな発見や気づきの宝庫であり、時間のムダにはならないことの方が多いように思います。

私は人よりもゴールに到達するまでの時間は長いのかもしれませんが、途中う寄り道したり、道草したりしたことが結果的に良かったことも多く経験しています。

結局、目標だけは見失わずにコツコツ、長く継続できる力があるからこそ、寄り道しても最終的に多くのものを得てゴールにたどり着くことができるのです。

継続する力

ハイディ・グラント・ハルバーソンの著書「やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学」はGRIDを備えた人の習慣について科学的に考察した本となっています。

本書ではやり抜く人の9つの習慣について、

①目標が具体的である
②目標達成への行動計画を立てる
③目標達成までの距離を意識する
④現実的楽観主義者になる
⑤「成長」にフォーカスする
⑥やり抜く力を持つ(努力・粘り強さ)
⑦意志力を鍛える
⑧自分を追い込まない
⑨「やめるべきこと」より「やるべきことに」に集中する

の9つを挙げています。

特に私も実施している習慣としては目標を具体的にノートなどに書き起こし、達成までの細かなスケジュールを立てることです。

いくつかの小ゴール(点)が最終ゴールに向かって線になるイメージを持って、割と現実的にできそうなこと、ちょっとがんばればいけそうなぐらいのゴールを設定しています。

書いて言葉に落とし込むことで、目標を見失うことを防ぎます。
あとはコツコツと寄り道や休憩を許しながらも進んでいけば、いつかは必ず目標を達成できると思います。

私のようなのを「現実的楽観主義」というそうで、やり抜く力(GRID)を持っている人の特徴なのだそう。

人生において「GRID」を持っていると「自己実現」のスピードが早まるとともに、何事も自分の成長にフォーカスすることができるようになるので、ある程度外部からもたらされる負荷にも耐えられるようになってくるそうです。

努力は報われないと放棄するよりも、自分の努力に対して認めてあげ、自分を褒めてあげられる人になりたいと私は思います。

「努力って報われないなあって思いました。僕はオリンピックで金メダルを取るために、そして4回転半を決めきるための努力を、正しい努力をしてこれたと思ってます。」
                             羽生 結弦


最後までお読みいただきありがとうございました。


努力について考えるための読書

#努力  #継続は力 #GRID #ライフスタイル #自分の味方 #目標 #目標達成 

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