大人の読書感想文コンクール2連覇した元チャンピオンが本気で書いた読書感想文。

 小説を読む時、あなたは誰の立場で物語を見ているだろう。私がそうであるように、多くの人は物語の語り手・主人公の目線で読んでいるのではないだろうか。
物語は自由な世界だ。
その世界では私達は何者にもなれる。
現実世界じゃ味わえない大冒険も味わえ、なりたかった誰かになれ、憧れの職業に就く事もできる。現実世界じゃ滅多に味わえない体験をする事もできる。
それならやはり物語の中心である主人公になりたい。
うまく行かない現実を忘れ、想像の中でくらい主役になりたい。そう思うのが人間の性ではないだろうか。

ほとんどが陸上未経験の10人で箱根駅伝に挑む。どう考えても無理・無茶・無謀な挑戦。
しかし寛政大学近くにあるボロアパート・竹青荘(通称アオタケ)の住人達はそれをやってのける。
私は『風が強く吹いている』を物語のもう一人の主人公である清瀬灰二(ハイジ)になったつもりで物語を読んでいた。
故障で陸上を断念した・走りたくても走れない時期があったという点が重なったというのもあるが、この物語の世界では彼になりたいと思って物語の世界に没入していた。
ところが物語終盤、意外な人物の思いもよらぬ独白が私を直撃する。
キング、こと坂口洋平だ。

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