火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者/オリヴァー・サックス(2001/4/15) 【読書ノート】
オリバー・サックスの講演「幻覚が解き明かす人間のマインド」の要約は以下の通りです。
オリバー・サックスによる幻覚の探求
サックスは、私たちが目で見ることと脳で見ること(想像力)の違いについて語ります。
幻覚は想像力とは異なり、自分で作り出したものではなく、外部から来るように感じられると述べています。
シャルル・ボネ症候群の事例紹介
サックスは、視覚障害を持つ患者の中で見られる特定の視覚幻覚について話します。
彼が言及するのは、90代の盲目の女性ロザリーのケースです。彼女は突然、東洋風の衣装を着た人々や動物など、様々な幻覚を見始めました。
ロザリーの幻覚の特徴
ロザリーは、彼女の幻覚が夢とは異なり、無声映画のようであると説明しています。
幻覚は彼女の意志とは無関係に現れ、彼女はそれらをコントロールできませんでした。
シャルル・ボネ症候群の診断
サックスはロザリーを診察し、彼女が精神的には健全であることを確認しました。
彼は彼女にシャルル・ボネ症候群であると説明し、これは視覚の衰えや失明に伴う特別な形の視覚幻覚であると述べました。
ロザリーの反応
シャルル・ボネ症候群という診断により、ロザリーは自分が狂っているわけではないと安心しました。
彼女はこの症候群についてもっと知りたがり、看護師たちに自分は狂っていないと伝えるようサックスに頼みました。
サックスの講演は、幻覚が必ずしも精神疾患の兆候ではなく、視覚障害など他の原因によっても引き起こされる可能性があることを示しています。シャルル・ボネ症候群は、視覚障害者における幻覚の一例であり、サックスはこの症候群を通じて、人間の認知と感覚の複雑な関係を探求しています。
幻覚の理解と誤解
サックスは、視覚障害者の約10%が幻覚を経験するが、狂っていると見なされることを恐れて、その事実を認める人は1%に過ぎないと述べています。
幻覚を訴えると、精神病と誤診されることがあるため、多くの人がその症状を隠してしまうと指摘しています。
精神病的幻覚との違い
精神病的な幻覚は、個人に対して話しかけたり、非難したり、誘惑したりする特徴がありますが、シャルル・ボネ症候群による幻覚は、まるで関係のない映画を見ているかのように、個人に対して直接的なアプローチをしません。
幻覚の種類と脳の活動
幻覚には、単純な幾何学的なものから、人物や顔、特に変形した顔など、複雑なものまで様々なレベルがあります。
fMRIを用いた研究により、幻覚中には視覚脳の異なる部分が活性化することが明らかになっています。
視覚脳の特定の領域の役割
単純な幾何学的幻覚では、視覚のパターンを認識する脳の一次視覚野が活性化します。
より複雑なイメージの形成には、脳の高次視覚野が関与し、特に顔を認識する役割を持つ側頭葉の紡錘状回が活性化します。
脳の特化した細胞と幻覚
1970年代には、顔を認識する「顔細胞」が発見され、現在ではさらに多くの特化した細胞が存在することがわかっています。
これらの細胞は非常に特定的で、例えば「アストンマーティン細胞」のように、特定の車種を認識する細胞があるとサックスは説明しています。
幻覚と認識の関係
幻覚は、視覚だけでなく、記憶や他の感覚との関連性を持ち、これらが統合されることで、私たちの認識が形成されます。
サックスの講演は、幻覚が単なる精神疾患の症状ではなく、脳の複雑な機能と深く関連していることを示しています。彼は、幻覚がどのようにして発生し、私たちの認識にどのように影響を与えるかについての理解を深めることで、視覚障害者や幻覚を経験する人々への支援を改善することができると強調しています。
目次
色盲の画家
事故により色盲になりモノクロの世界を彷徨う画家。画家としての絶望感を味わうも、やがて新しいアイデンテティを確立しニュースタイルタイルの画家として活路を見出す。
最後のヒッピー
現在と60年代にしか生きられない人。
脳腫瘍の摘除手術により、これまでの攻撃的な性格から柔和で明るい性格に変わったが、記憶障害になる。
トゥレット症候群の外科医
トゥレット障害
「見えて」いても「見えない」
これまで盲人として暮らしてきた老年の婦人が奇跡的に視力を回復する。
現実は幸せではなく、むしろ辛く苦しい状況に追い込まれる。新しい自分との戦い。
夢の風景
側頭葉癇癪(てんかん)により、過去の鮮明で詳細な記憶を持つ画家。
かつて自分が暮らした街の風景を記憶だけで正確に描く。
神童たち
自閉症(イディオ・サヴァン)の特徴的な能力。
火星の人類学者