実証!トロッコ問題!
女性二人。
「ねえ、トロッコ問題って知ってる?」
「何それ?」
「最近知ったんだけど、
分岐点のある線路を、
猛スピードで走るトロッコがあるのね」
「インディージョーンズの話?」
「違う。
確かにトロッコって、
あの映画のイメージ強いけど。
このまま説明続けていい?」
「いいよ」
「その猛スピードのトロッコの先は、
線路が二手に分かれてて、
その分岐を決めるレバーの前に、
自分がいるの」
「近年、稀に見ない、
独特のシチュエーションだね」
「そうなの。
それでね…、
その分岐先の左側の線路には、
人がひとり寝ていて、
その反対の右側の線路には、
複数の人が寝てるの」
「インドの話?」
「インドでもないし、
インドにもそんな人いないと思う」
「そうなの?
何か東南アジアとか、
みんな電車の上に人が大勢乗ってたり、
線路の上で、
商売したりしてるイメージあるよね」
「それはきっとタイだね。
列車が来たらみんな避けるんでしょ?」
「そうそう。それそれ」
「う~ん、話がズレた」
「ごめんごめん。続けて」
「その暴走トロッコは止められないから、
左のひとりか、右の大勢か、
どちらかを犠牲にしないといけないの」
「それは私の仕事なの?」
「仕事ではないけど、
そういう状況ってこと」
「そうなんだ。それで?」
「その時、あなたならどうするって話」
「私が?」
「そう」
「そんなの決まってる。
何もしない」
「しないの?!」
「そうでしょ。
だって私がレバー触ったら、
私の責任になるじゃない。
触らなければ鉄道会社の責任でしょ?」
「いや、ごめん。
そういうんじゃなくて…。
これは例え話なわけで、
要するにひとりと複数の人間、
どちらを助けるかっていう、
倫理的な問題なの」
「そうなの?
だったら大勢じゃない?
助かる人が多い方が、
いいってことでしょ?」
「じゃあ、そのひとりの人が、
自分の家族だったらどうする?」
「そのまま。
最近、喧嘩ばっかでさ。
鬱陶しいんだよね」
「ごめん、間違えた。
じゃあ、恋人だったら?」
「昨日別れたし、
むしろそっち固定で」
「え?!別れたの?」
「そう。お前は心がないって言われた」
「う~ん…元彼…適切な判断。
……
じゃあ、大事な人!これなら?」
「大事な人かあ~。
それ、誰でもいいの?」
「いいよ。
自分が世界で一番大事な人」
「じゃあ、トム!」
「トム?」
「トム・クルーズ!
彼!彼しかいない!」
「ハリウッドスターのね。
じゃあその場合は、
レバーどうする?」
「切り替えるかってこと?」
「そう」
「もちろん、そのまま」
「え?!トム助けないの?
世界で一番なんでしょ?
大事じゃないの?」
「大事だよ。
でも彼なら、
何やかんやで脱出するじゃん」
「もういいわ」
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