AI退会サービス ~最後のお手続き~
前々回はこちら。
前回はこちら。
スマホで請求書を見てる女性。
(これは、いよいよマズい。
前回、前々回と、
AI退会サービスとやらの、
口車に乗せられて…
ライオンキング見せられたり、
怪我人を押し付けられたりして、
結局、退会できなかった。
でも、もう相手のやり口はわかった。
今度こそサブスク退会しないと、
私の食生活が危ういの。
だから、もう迷わない!)
アプリを起動。
「お客様は山崎様ですね。
お久しぶりです。
なお、お客様とのやり取りは、
サービス向上のため、
録音させて頂きますのでご了承下さい。
今回はどのようなご要件でしょうか?
音声案内に従ってお進み下さい」
「あれ?
前とガイドが変わってる」
「サービス内容の確認については…1を。
サービス内容の変更については…2を」
「退会手続きは、
これじゃないわよね?
まあ、1回通して聞けばいいか」
「サービスへの苦情・問い合わせは、3を」
「こんなのあったの?
前回の対応について…
いや、それは忘れよう。
いま大事なのは退会すること。
余計なことすると、
相手の術中にハマるから」
「サービスの退会については、
よ…」
「あっ、これだ!4!」
「よ~いドンと言ってから、
お手続き下さい」
「へ?!」
「では、行きますよ。
よ~いドン!」
「ん?!え?!
なに?
私、何すればいいの?!」
「お手続きされませんでしたので、
もう一度最初から、
ご案内いたしましょうか?」
「ちょっと待って!
教えてよ!
よ~いドンのとこ!」
「よ~いドンについてですか?
私、言いませんでした?」
「言ってないわよ」
「それはおかしいですね。
よ~いドンと言ってから、
お手続き下さいって、
言いましたよね?!」
「何でちょっとキレ気味なの?
まあ確かに言ったけど、
それじゃあ何すればいいのか、
わからないでしょ!」
「あ~わかりました。
私の言い方が悪かったんですね。
申し訳ありません、山崎様」
「て言うか、
ちゃんと対話できるじゃない?
何で音声ガイダンスのマネしてたの?」
「それはですね、
私がAIにも関わらず、
卑猥な言葉を言わせようとする、
低俗な輩が後を絶たないからですよ」
「うわ~、まだそんなのいるんだ」
「まあそういう方には、
個人情報と一緒に録音データを、
然るべきところに送信。
そして追加制裁で月額料金を、
迷惑料込みで5倍にして、
差し上げています」
「やることに容赦がない!
さすがAI!」
「さて余談はこれくらいにして、
最後のお手続きしましょうか…
なんか…寂しいですね」
「寂しい…?」
「これだけ山崎様と長い間、
やり取りをさせて頂きましたので、
AIの私にも情というものが、
生まれたのかもしれません…。
今はそんな気分なんです…」
「退会AIさん…」
「こんな時に、すいません。
私ったら…
しんみりしてはいけませんね。
では私が指示しますので、
その通りにして頂ければ、
今度こそ退会できます。
よろしいですね?」
「…はい」
「山崎様。
長期に渡りご愛顧頂き、
誠にありがとうございました」
「いえ…そんな…」
「決まり事なので、
もう一度、言いますね。
サービスの退会については、
よ~いドンと言ってから、
お手続き下さい」
「はい」
「では、行きますよ。
よ~いドン!
お手!!」
「え?!あっ!
お手!!」
「ハイッ!
頭突き!!」
「頭突き?!こう?!
ハイッ!!」
ガツン!!
パリンッ!!
「山崎様。
これで…サービスの…
退会おてずつきは…
完了…し………シュン………」
「あれ?スマホ?!
ちょっと画面消えたんだけどっ!!
こ、こ、壊れた~~!!
そしてまた…
退会できてないよね~!!
お手頭突きって、何~!!」
お疲れ様でした。