騒々しいシュメーツン ~料理~
勇者様御一行。
勇者ヘレ(人間)
戦士ニケル(ドワーフ)
僧侶ドンケル(人間)
魔法使いシュメーツン(エルフ)
【勇者ヘレ】
「キィエィーーイ!!
一番ツエェ~のはどいつダァ~!
お前カァ~!
それともお前カァーー!!
どいつダァ~~!
誰でもいいから、かかってコォーイ!!
オレ様がイッチバーーーン!!
ダゥァァァァァーーーー!!
フォオォーーヒャィー!!」
【戦士ニケル】
「シュメーツン…ちょっと」
【魔法使いシュメーツン】
「どうしたのニケル?
戦闘中だよ?」
「大丈夫。
戦闘はアイツに任せておけば。
それよりも大事なことに気付いたんだ」
「大事なこと?」
「路銀がもうこれしかない…」
「あらら…
依頼は断ってないのに、
どうしてだろう?」
「どう見てもアイツのせいだろ!
ヘレを見て依頼する村人なんて、
いるわけないだろ!」
「そうか…そうもそうね♪」
「そうね♪…じゃないよ!
うちはこのままだと魔王城へ行く前に、
餓死ゲームオーバーだぞ!
何とか依頼をこなして、
日銭を稼がないと!」
【僧侶ドンメル】
「…コミュ障の…メンバーがいると…
パーティーみんなが…迷惑します…ねえ」
「ドンメル!
お前が言うな!」
「で、どうするの?
村に入ったけど…
村人がカーテン閉めて、
施錠し始めたよ。
依頼は絶望的みたいだけど」
「そういえばこの村に、
小さな酒場があるって聞いた。
そこでなら、
何か依頼があるかもしれない」
「そうなんだ。
じゃあ、そっちはよろしくね♪
私はあそこの雑貨屋で、
アクセサリー見て待ってるから♪」
「おい!
お前はあの2人を見張っとけ!
これ以上、勇者一行の評判を、
下げさせるな!」
「ええ~~」
「ええ~…じゃない!
すぐ戻ってくるから。
もしもの時は、
拘束魔法使って、
黙らせてもいいから…頼む!」
「は~~い」
15分後。
「やったぞ、シュメーツン!
魔物討伐の依頼を金貨3枚で、
引き受けてきたぞ!」
「金貨3枚だけ~?」
「わかってるよ。
ちゃんと魔導書をひとつ、
付けてくれるように頼んできた」
「さすがニケル!
今度はどんな、
魔導書に出会えるかな~♪
あ~楽しみ~♪」
「なあ、シュメーツン」
「なあに?」
「魔導書で…
食事は出せないのか?」
「それは無理。
できるなら私、
とっくにやってるはずでしょ?」
「まあそれはそうだが…」
「食事って色んな元素の集合体でしょ?
そんなの複雑すぎて、
ポンッとは出せないわよ」
「そういうものなのか?」
「食材や食べ物を、
引き寄せたりはできるわよ。
あとその食材を切り刻んで…
燃やすとかはね」
「シュメーツンがやると、
木っ端微塵の消し炭状態だな」
「簡単な元素のものなら出せるわよ。
水とか石とか氷とか。
実は路銀だって作れなくもないけど、
それは何ていうか…アレでしょ?
アレだけにナニしてはダメじゃない?」
「大人の言い方、止めろ!」
「そもそも料理って魔法より難しくない?
最上級高等魔法ぐらい。
私には絶対できないわよ、あんな芸当。
それに女神様の魔法を使うドンメルだって、
魔法で食事は出せないでしょ?」
「確かに言われてみればそうだな。
いや、路銀が少なくなると、
取ってきた食材を調理できれば、
節約になるんじゃないかと思ってな」
「私に料理は無理よ。
そもそも、
そっちの素質はないみたいだから」
「そこなんだよ。
料理の素質はなくても、
お前は魔法使いとしては一流だろ?
料理の魔法とか魔導者にないのか?」
「う~ん…あったかなぁ…。
そもそも料理に興味がないから、
もしあったとしても、
絶対に選ばないよね、私は」
「だから今回の報酬の魔導書は、
料理に関するものを選んでくれないか?」
「………」
「何でそんなに嫌な顔をする!
パーティー存続ためだぞ!
それに金策でこんなに苦労することも、
なくなるじゃないか!
そうだろ!?」
「はいはい、わかりました。
今回は料理に関する魔導書を、
もらうようにするわよ」
「よし、決まりだ!
これで少しは旅が楽になりそうだ!
そうと決まればすぐ魔物討伐に行こう!
あれ…あの2人どうした?」
「あ~
村人に怖がられてたから、
埋めといた…
ほら、あそこ」
「ヒャッヒー!
ブッペッぺブブブ!
口に土がァーー!!」
「ああ……このまま…私は…
土に…還りたい…」
「拘束の仕方が、
相変わらずエグいね、シュメーツン」
勇者一行は、
魔物が出る森へ出発。
依頼された魔物を討伐。
帰還しその足で酒場へ。
「いや~
ほんとに助かったよ!
あの魔物は村の農園を荒らすもんで、
みんな困ってたんだ。
これで今年は、
去年よりも多くの収穫が見込めそうだ。
ありがとよ。
これは報酬の金貨3枚」
「ありがとうございます」
「あと魔導書だったな。
わしの家の書斎から、
好きなのをひとつ持っていくといい」
「ありがとう~♪」
「シュメーツン、わかってるな!
料理に関する本だぞ!
料理の魔導書!
いいな!」
「はいはい。
じゃあ、ちょっと行ってくるね」
1時間。
「遅い…。
どれだけ選ぶのに手間取ってるんだ」
「…女性は…男性を…
待たせる生き物なんですよ…フヒヒ」
「お前は、恋愛マスターか!
あっ、来た来た!
シュメーツン!」
「ちょっと、選ぶの迷ちゃった。
ポテ◯チップスを満杯にする魔法とか、
エリ◯ゼの端まで、
クリームがたっぷりになる魔法とか、
面白いのがたくさんあって…」
「それで結局…
どんな料理の魔導書を選んだんだ?」
「それはね…
ジャーーーン!!
見てみて!」
「ん?
何、これ?」
「…こ、この…ま、魔法は…ウヒヒ~」
「この魔法はね…
わからなくなった、
サランラップの切り口がわかる魔法!!
どう?!
スゴいでしょ?!」
「それ、料理じゃないし!!
セロテープで間に合うし!!」
「ヒャッハーー!
オレ、ニッチバーーーン!!」