ついに話題のガチャ登場!
ショッピングモール。
アイスコーヒーを飲み、
涼んでいる若い男性。
行き交う家族連れ。
(楽しそうだな~。
子供は無邪気にはしゃいでる…
ご両親もほらほらとか言いながらも、
ちゃんと面倒を見てるし…。
ちょっと前に親ガチャとかいう言葉が、
急に流行り出したけど…
当たりってこういう人なんだろうなあ…)
ズズズッ
アイスコーヒーが空に。
「さてお目当てのものを買って、
さっさと帰ろう」
4階フロアー。
(やっぱり人多いし、
外国人観光客、めっちゃいる。
…ガチャガチャやってるよ。
出る度に奇声上げて…
盛り上がってんなあ~。
アニメのキャラだな、あれは。
嬉しそう~。
ん?あれなんだ?)
キレイに整列した白い筐体の脇に、
ひときわ異彩を放つ巨大な物体。
(千円自販機?…とは違うな…。
まず…デカい!
デカすぎだろ、これ!
何か書いてある…
【OYA GACHA】
おやがっちゃ?
?……!
親ガチャ!!
え?!あるの?!
これ、いいの?!)
「いらっしゃいませ~。
親ガチャにご興味おありですか?」
「いや、ありますというか、
正直、驚いてます。
これって大丈夫なんですか?
めちゃくちゃ怪しいけど」
「そんなことはありませんよ。
1回2千円で親を引くことができる、
至ってシンプルなガチャです」
「いやいや。
それシンプルって言っちゃダメでしょ!
これって人身売買とかになるでしょ?」
「いえいえ。
こちらはガチャを引いた場合、
その場で養子縁組をして頂きます。
ですので法的問題はないんです、はい!」
(笑顔がめちゃくちゃ怪しい…。
日本やべえ!!
でも…
俺、ガチャ好きなんだよなあ~。
しかもこんなアホガチャ…
引いてみんなに結果を自慢したい!)
「お客様、どうです?
今なら、
1回無料キャンペーンですけど?」
「無料~!!
引きます!引かせて下さい!!」
「ありがとうございます。
ではこのタッチパネルの前で、
この画面のレバーを引いて離すと、
ガチャが出ます。
よろしいですか?」
「はい!」
「ではどうぞ!」
タッチパネルに触れ、
レバーを引く。
すると…
画面が光り出した!
「おっと、この演出はまさか~!!」
レバーを離すと1個のカプセルが、
画面に飛び出してくる。
カプセルが開いて…番号が!
「2番です!!
いまこちらから景人が出てきますので」
「景人?品じゃなくて人だから?」
タッチパネルの隣に扉が開くと、
煙とともに、ひとりの男性が出てきた。
「あの~この方は…」
「おめでとうございます。
お名前は権蔵さん、
御年75歳です。
お客様また渋い方を引き当てますねえ~。
初めてとは思えませんよ~」
「ちょ、ちょっと待って!
これ親というより祖父ですよね?」
「いえいえ。
まだまだ権蔵さんは現役です。
この歳でまだ庭仕事もされてますし。
週2でグランドゴルフ行ってますから」
「お爺ちゃんだよ、それ!
いやいやいやいや。
これは親ガチャじゃないでしょ?!
しかも何でひとり?
お母さんは?
このままだと、
ただ扶養家族が増えただけじゃん!」
「そうなんですよね。
ですからうちも良心的に、
男女交互に出るようにしてるんです。
次のガチャは必ず女性出ます、はい!」
「次、絶対?」
「はい、絶対100%です。
しかも今日はキャンペーンで、
SSR確率アップの日なんです」
「なにSSRって!
大当たりってこと?!」
「そうなんです。
ここだけの話、現在のSSR…
教えちゃおっかなあ~。
本当は言っちゃダメって、
口止めされてるんですけど…
お客さん、口は堅い方ですか?」
「もちろんです!」
「じゃあ特別ですよ。
SSRは20代の女性です」
「嘘!マジで!」
「シッーー!声が大きいですって。
あとSSRには、
芸能人も入ってるらしいです」
「引きます!
是非、引かせて下さい!」
「わかりました。
2千円よろしいですか?」
「はい」
「あっ、お客様。
ここで耳寄り情報です。
ここであと3千円出せば、
ガチャを2回引ける上に、
SSRの当選確率が、
なんと!80%上がりますけど…
どうしますか?!」
「はい、5千円で!」
「ありがとうございます。
今回は2連になります。
1回で2つのカプセルが同時に出ます。
さあどうぞ!
確率80%アップです!」
「よっしゃー!
SSR来い!!」
レバーを引くと、
画面が七色に光り出す!
「こ、これは…まさかの~!!」
光の中から、
勢いよくガチャが飛び出した!
「なんと1個目は、
SSRの10番~!!
おめでとうございま~す!!」
また扉が開き、今度は女性が出てきた。
(…こ、これは…
どこから…どう見ても…
あの地域の人だよね…間違いなく…)
金髪にヒョウ柄のTシャツに…
紫のスキニーパンツ。
(存在感が凄い…
生で初めて見た…というか、
てっきり都市伝説だと思ってた…)
「おめでとうございます!!
お名前は芳恵さんです!
年齢は永遠の20歳!!
さすがお客様!!
モッテますね~!!
SSR引き当てるなんて、
さすがです!!」
(こっちずっと見てるよ。
…これはダメだ。
この人について文句を言ったら…
きっと倍になって言い返されそう…
ここは黙ってよう…)
「そしてもうひとつは…
なんと2番!」
「あれ?
それってさっきの番号…
ん?…権蔵さんどこ行った?」
扉が開くとまた権蔵さんが出てきた。
「どういうこと…って、
あれ?権蔵さん着替えた?」
「お客様。
ガチャが被った場合は、
グレードアップします。
いま権蔵さんはSRに昇格しました」
「いや、これ服がポロシャツから、
金色の派手な着物になっただけで…
って、これってあのサンバを踊る、
お殿様の衣装ですよね?」
「それが昇格です。
おめでとうございます。
おっと、そしてここで本日のガチャ、
終了のお時間となりました。
こちらは、お二人の私物です。
お気をつけてお帰り下さい。
ありがとうございました。
またのご利用お待ちしております」
突然、ガチャは終了。
そして残された3人。
妙な組み合わせに集まる観光客。
「オ~!コスプレ~!
ピクチャー、イイデスカ?」
パシャ
「サンキュー!サンキュー!」
外国人に写真を撮られる3人。
「これ帰ったら…
父ちゃん母ちゃんに、
絶対、怒られるやつだ!!」