正論島
男性二人の会話。
「ちょっと聞いてくれよ」
「なになに」
「この前さ、
8年ぶりに同窓会に行ってきたよ」
「へえ~」
「やっぱ久しぶりだから、
まあ盛り上がったわけよ」
「ふんふん」
「あの頃、誰が好きだったとか、
実は内緒なんだけどみたいな話で」
「よくするよね、同窓会で」
「で、ひと通り思い出話も出尽くして、
何話そうかなって空気になったの」
「それも同窓会あるあるだね」
「そしたら誰かが、
無人島にひとつ持っていくなら
何を持ってく?って言い出してさ」
「会話に困ったら出てくるド定番ね。
結局みんなが俺なら私ならって主張して、
最後は相手の品物をディスって終わる
一番生産性のない話題な」
「そうそう。
よくわかるね。
うちらもそれで、
特に大きな盛り上がりもなく、
静かにお開きになったわけ」
「そうなるね」
「で、あれ何なの?」
「何なのって?」
「まずあの質問の意味が理解できん」
「意味?」
「なんで無人島に行くのに、
品物ひとつって決まってんの?
何なのあの謎ルール。
馬鹿なの?」
「まあ一般的に考えれば、
おかしな話だよね、確かに」
「無人島なんて基本、重装備っしょ?
手荷物込みで」
「うん、お前の仰る通り」
「だろ?
旅行にしても品物ひとつはないし、
遭難時の手荷物にしても、
持てるだけ持って、
逃げるのが普通だよな?」
「ごもっとも。お前はずっと正しい」
「あれだな、無人島と言いながら、
頭の中で緩いこと
考えてるんじゃないの?」
「どゆこと?」
「テレビであるじゃん。
芸能人の一週間生活とか…。
ロケする場所ってわりと
資源豊富だったりするじゃん?
そんないい感じの島に、
流れ着く的な甘えがあるんじゃないの?」
「まあ気軽なトークで、
ガチサバイバル想像する奴いないけどな」
「だから今度その手の話題になったら、
みんながもっと真剣かつ、
大盛り上がりする質問をしようと思う」
「どんな?」
「沖ノ鳥島に行くなら、
何持っていく?って」
「標高1mの、
コンクリートで固めた島ね」
「あそこはガチだろ?」
「ガチだけど、
みんなすぐ、持ち込み数と、
日程調整の交渉してくるだろうね」
つづく。