スフィンクス再び
前作はこちら。
興味のある方はどうぞ。
ギザ大地。
またこの地を訪れた青年、
小出恵介。
彼は旅先で困っていたスフィンクスに出会い
新たなスフィンクスの謎々を
作ってあげたことで意気投合した。
しかしエジプトを後にした彼は、
スフィンクスのことが心配でたまらず、
様子を見に戻って来たのである。
「あっ!小出様!
えっ?!急にどうしたんですか?」
「いや~あのあと、
ヨーロッパ周ってたんですけど、
スフィンクスさんのことが気になって、
日本に帰る前にまた来ちゃいました」
「そんな小出様、嬉しすぎます。
こんなに早くお会いできるなんて、
スフィンクス感激です!」
「僕もスフィンクスさんの要望に応えて、
問題をお作りしましたけど、
その後どうなったかが、
気になって気になって…。
で、どうですか、その後?」
「はい。
小出様には大変申し上げにくいのですが、
あの問題は…もう死にました」
「死んだ?!」
「とても優れた問題だったのですが、
称賛されたのは最初だけ。
今の時代は……本当に怖い…。
答えはあっという間にSNSで拡散。
そして答えを知ってる者が、
冷やかしにゴールデンウィークに押し寄せ
私の何で答えを知ってるの?という、
おとぼけ顔をスマホで撮り、更に拡散。
私は屈辱と自分の無力さを、
嘆くしかありませんでした…」
「やはりそうでしたか。
僕も問題を1問しか作らなかったことが、
気になってましたが…やはり…。
すいません。
僕がもっと配慮していれば…」
「いえ、小出様は私の恩人です。
新たな問題を考えられず悩んでいた私に、
知恵を授けて下さった方ですから。
私もあれから少しは成長しました。
いつまでも小出様に、
頼ってばかりではいけないと、
また自ら問題を作り始めたんです」
「そうだったんですか。
さすがスフィンクスさん。
もしよければその問題、
私に出して貰っていいですか?」
「もちろんです。
ではいきますよ小出様」
「いいですよ、スフィンクスさん」
「問題。
飲むと怒られる飲み物ってな~んだ?」
「……」
「どうですか?
小出様。
ギブアップですか?」
「こ~ら…」
「ええ~!
さすが小出様!
じゃあ、次の問題!
帽子の中にいる生き物な~んだ?」
「牛…」
「ぎゅぎゅ!
どうしてわかるんですか、小出様!
もしかして小出様は、
トート神の生まれ変わりなのでは…。
いや、次は期待して下さい…
もっと難しい…」
「スフィンクスさん」
「はい?」
「どうやら…
あなたは問題作りに、
向いてないみたいです」
「ガーン!
小出様の問題を参考に、
寝る間も惜しんで問題作りに、
励んできたというのに…」
「すいません。
前回のフライパンの問題と、
同レベルだったものですから…」
「私の素質の問題だったんですね。
私も自信満々に出しましたけど、
今思えば観光客の正解率100%でした」
「大丈夫です。
じゃあ、また新しい問題を、
一緒に考えましょう」
「また手伝って下さるのですか?!
小出様!」
「はい。
そのために戻ってきたんです」
「4000年の時の中で、
あなたほど器の大きな方はいません。
本当に私はあなたに出会えてよかった」
「それを言うなら私もです。
本当に不思議な巡り合わせですね」
「はい」
「では、問題作りを始めましょう。
何かスフィンクスさんが、
出したい問題の傾向とかありますか?」
「やはり前回同様、
以前の問題と何か関連性があった方が、
出す方としても気持ちいいですよね」
「なるほど。
それは取り入れましょう。
あと、ゴールデンウィーク中の観光客で、
何か気になったこととかありましたか?」
「そうですね…
何か気になること気になること…
あっ!そういえばひとつ気になることが」
「何です?」
「観光客はみんな、
私やピラミッドの写真を撮ると、
スマホを見始めるんですけど、
その時、トライセラトップスだか、
トランスフォーマーとか言うんです。
こう人差し指と親指で三角形を作って」
「三角?
それは何ですか?」
「私もそれが不思議で…。
あとは…そうそう…
よくゼルダがどうとか言ってました」
「あ~それはゲームの話ですね。
きっとゼルダの伝説のことでしょう。
その中にちょうどピラミッドのような、
三角形のトライフォースという、
宝というかアイテムが出てくるんです。
それのことを観光客はあれを見て、
思い出したのでしょう」
「そうだったんですか。
小出様は何でも知ってますね。
おかげで謎が解けました」
「じゃあ、そこから問題を作りましょう」
「え?
そんな簡単に?」
「大丈夫です。
いい感じの問題が思いつきました」
「さすがです小出様!
できたらまた私に、
その問題を出して下さいますか?」
「いいですよ。
……よし、できた。
では、いきますよ」
「はい」
「問題です。
勇者に必要な3つの要素。
力…知恵…勇気…。
さてこの中で、
不変で正しきものをひとつ選びなさい」
「これはもしかして…、
ゲームしてないと、
わからない問題ですか?」
「ゲームとは全く関係ないので、
安心して下さい」
「えっ、じゃあ、何だろう?」
「前回、前々回の問題のように、
朝昼晩と要素が3つ。
今回も要素を3つにしてみました」
「なるほど、
そこが掛かってるんですね。
でも…答えがわからない。
ヒントはないんですか?」
「ヒントですか?
仕方ないですね。
その3つのうち2つは、
文字を足すと変化して悪くなります」
「文字を足す?
ムムムムムム…無理です小出様。
またもや降参です。
答えを教えて下さい」
「わかりました。
力と知恵と勇気の中で、
不変で正しきもの。
それは……勇気です!」
「勇気?
すいません、
答えを聞いてもまだわかりません。
どうしてですか?」
「力と知恵には言葉を付けると、
悪い意味になるものがあるんです。
力は暴力、蛮力…
知恵は猿知恵、悪知恵など。
でも勇気だけにはそれがない。
勇気は…
勇気凛々とか勇気百倍ぐらいしか、
ないですから。
だから不変の正しきものは勇気です」
「小出様……
やっぱり、天才!!」
「スフィンクスさん、
あなたのその、
誰でもわかる問題を、
臆することなく出せるところも…
ある意味、勇気ですよ。
これからも一緒に頑張りましょう!」
「はい、小出様!」