夏雲と太陽
先生と子供たち。
「みんな~。
読み聞かせの時間だよ~」
「は~い」 「は~い」 「は~い」
「じゃあ今日のご本は、
【雲と太陽】で~す。
みんな拍手~」
パチパチパチパチ
「読みますよ~。
ある日のこと、
太陽さんのところへ、
雲さんが流れてきました」
「おい!太陽、勝負だ!」
「雲さん、どうしたの急に?
僕は勝負なんて興味ないよ」
「お前、あの北風に、
勝ったんだってな?」
「あ~そんなことあったね。
でも僕、特に何もしてないよ。
あれは北風さんが勝手に、
自分に不利な条件で挑んできて、
自滅しただけだと思う」
「確かに。
みんなそう言っていた。
北風の戦略ミスだって。
でも俺は違う!
俺はこの日のために、
2年の歳月を費やした!」
「無駄に長期間。
僕は戦う気もないし、
何なら僕の負けでもいいんだけど」
「待て~い!
俺の2年をひと言で無にするな!
そっちが拒んでも、
こっちは勝手にやらせてもらう!」
「いるよね、こういう雲。
我が強くてテコでも動かないの。
よく山の上に陣取ってる雲とか…」
「うるさい!
太陽、いざ勝負だ!」
「何する気?」
「あそこに宅人がいるだろ?」
「宅配業者の人を、
旅人みたいに呼んじゃダメだよ」
「あの宅人を、
怒らせた方が負けというゲームだ」
「怒らせたら?
これって勝負になる?
あの人に何もしなければ、
怒られることってないよね?」
「甘いな。
この勝負を受けた時点で、
お前はもう負けている」
「何で?!」
「見ろ!
あの汗だくの宅人を!
炎天下での作業で辛そうだろ?
この熱さは誰のせいだ?
そう!太陽、お前のせいだ!」
「ええ~!
これは僕のせいじゃないよ。
温暖化のせいでしょ!
人間の生産活動のせいだよね?」
「そうだとも。
しかし人間はこの熱さを、
自分たちのせいだと思うかな?
日差しが強いんだよ…汗でベトベト…
アイス溶けた~…サドルあっちぃ!
全て、お前のせいだ!」
「そ、そんなあ」
「俺は雲。
彼らに日陰を提供できる。
やつらに涼を取らせることができる存在。
言わばこの非常事態の救世主だ!
凄いだろ?参ったか!」
「雲さんは日陰ってどうするの?
自分では移動できないよね?」
「フフフ。
そんなのも計算済みさ。
カモーン!相棒!」
「やあっ!久しぶり太陽!」
「君は北風くん!」
「そうよ。
かつてお前に敗れた北風を、
助っ人として招集しておいたのさ!
さあ、どうする太陽?」
「本当に北風くんに吹かれて、
雲さんは移動できるの?」
「何を今更。
俺らはいつも風の力で移動してるんだ。
当たり前だろ」
「じゃあ、ちょっと見せてよ」
「何か企んでるな?
だがいいだろう。
宅人の上で止まらず通り過ぎれば、
温度差によって、
太陽への批判は更に加熱するはず。
よし!北風!
俺をあの宅人を通り越す勢いで、
俺を吹き飛ばすんだ!」
「わかった!行くよ!
ピューーーーーゥゥゥ!!
ピューーーーーゥゥゥ!!」
宅人の上空を一瞬のうちに、
雲が通り抜ける。
「あ゛っぢ!あ゛っぢぢぢぢ!
熱風あ゛っぢい!!
何てことしやがる!
誰だこんな事する奴は!
あ゛ん?北風、お前か!!
今、俺にわざと熱い風送ったろ!!
そうだろっ!なっ!」
「あれ?あれれ?
自分、怒られてない?
雲さんこれって…どうしたら…」
「おやおやおやおや。
これは全く予想外の展開では…。
北風、もしかして怒られた?!
2年間のシミュレーションには、
なかったな~このパターンは…。
てことは北風2連敗ってことで…
いいかな?」
「そ、そんな~!
雲さんが俺の言う通りにすれば、
絶対間違いないって。
リベンジさせてやるって言ったから、
協力したのに!」
「言ったけど…言ったけどさ。
これは…ダメだよね?
北風、余計なことしちゃったな~」
「そんな~酷いよ~。
僕は言われた通りにさ…
しただけ…なのにさ…
グス…ウウッ…グッ…
ウワワーーーーーン!」
「あ~雲さん、北風くん泣かせた~」
「何だよ、北風が勝手に失敗して、
勝手に泣いたんだろ!
俺のせいじゃねえしぃ。
俺は何も悪くないしぃ…」
「それはさすがに、雲さん。
北風くんに酷いと、僕も思うよ」
「うるせえなあ…」
「僕も北風くんは雲さんに、
従っただけだと思う。
雲さん、ここは謝った方がいいって」
「ったく!…わかったよ。
謝まればいいんだろ…
謝れば…チェッ。
…北風くん…さっきは言いすぎました…
本当に…ごめんなさ…グスッ…
ウワワーーーーーン!
アアァァーーーーーン!」
北風さんと雲さんは、
二人はそろって大泣きしました。
「これが地球の気候変動のお話です。
みなさ~ん、
地球を大事にしましょうね~」
「は~い」 「は~い」 「は~い」