脅威のルーキー
「今年も終わった」
「何とかねえ。
でも毎年のことだけど、
苦情も多かったねえ」
「まあ、こう言っちゃなんだけど…
今年の彼って…
違和感だらけだな」
「シーーーーー!
何で君はそうやって、
軽はずみな発言をするの!?
それ禁句!
君…炎上するよ!
それで済めばいいけど、
下手すりゃ丸焦げだよ!」
「だって実際、変だろ?
この中に仲間外れがいます…
さて誰でしょう?って言われたら、
オレの人差し指は、
自然に彼を差しちゃうよ」
「指差しちゃダメ!
あっ!こっち見た!」
「………す、すいません…」
「………静かに…します…」
「………」
「あっぶねえ~!!」
「ほら!
だから言ったでしょ!
危うく僕ら、
食べられるところだったよ!」
「いや、僕らじゃないよ。
君だけだよ」
「え?!
なんで?!」
「君、美味そうだから。
彼に背中見せちゃダメだよ。
あと、他にも狙ってるのいっぱいるから」
「ウソ!!
ここ敵だらけっ!?
怖いこと言わないでよ!」
「って言うか、ああいう態度のやつ…
苦手なんだよなあ…
龍ってそんなに偉いの?」
「まだ、ディスり続けるの?
いま、怖い思いしたのに?」
「だって…
さっきもだけど…
高圧的じゃん?」
「見た目でしょ?」
「そうかなあ。
そう言えばこの前、
龍の爪…ちょっと、かじってやったの」
「君は怖いもの知らずだね」
「そしたらギロって睨んできて…
文句がある奴はグーで来な…
って、言ってきてさ」
「それは…そうなるでしょ」
「グーで来いって言われたから、
パー出して…逃げてきてやったよ」
「完全な負け犬じゃない!」
「犬じゃねえし!」
「でもそのグーって、
拳で勝負しろって意味だよね!?
君、絶対、いつか燃やされるよ!」
「何かデカいし、
気に入らないんだよね」
「ほぼ全員、ディスってるね」
「それに龍…いらなくない?
蛇で間に合うでしょ?
ニョロっとして似てるし。
そもそも龍って現実に存在しないのに、
何でメンバーにいるのって話じゃねえ?」
「まあ、そう言われればそうだけど…
やっぱり人気じゃない?」
「そうなんだよな~。
結局なんだかんだ言って、
あいつ人気あんだよ。
龍と虎って何かずるいよな?!
あいつらセットで、
よくイベントとかあるじゃん?」
「そうだね。
2人とも絵面がいいよね」
「あいつらのせいで、
今年、お前なの?!って、
ガッカリされんのもマジ勘弁」
「まあまあ…」
「何、安心した顔してんの?
牛くんだって言うほど人気ないよ!」
「え?!
そうなの?!」
「え?!
自覚ないの!?」
「いや~僕はそこそこ…
あるんじゃないかと…思ってたから」
「いやいやいやいや。
牛くんをみんな見てるのは、
人気じゃなくて食欲。
食事の材料…素材として、
熱い視線を送ってんだよ」
「そうなの!?
全然気付かなかった!」
「普通気付くでしょ。
自分が涎垂らしてるからって、
相手も涎垂らしてるのはおかしいって、
思わないの?」
「熱烈なファンなのかと…」
「んなわけないし!」
コンコン!
「あの~すいませ~ん…」
「はいはい」
「こちらは…
干支管理センター…ですよね?」
「はい、そうですよ」
「あの~私…
干支に…立候補しに…来ました」
「そうですか。
どうぞお掛けになって…。
じゃあまず…
ここに住所とお名前…
簡単なプロフィール…
あと自己アピールも書いて下さい」
「わかり…ました…」
「ペンはお持ちですか?」
「い…いいえ…」
「じゃあ、こちらお使い下さい」
「どうも…」
………
「おい、また来たよ。
毎年毎年、よく来るね。
可能性ないってわかんないのかね?」
「でも最近…
現代に合わせて、
変えていくべきだという意見もあるよ」
「誰だよそんなこと言うやつ!
誰かと入れ替わるってことだろ?!
あいつか!
龍の野郎だな!
あいつ人気があるからって、
自分は大丈夫とか思って言ってんだろ!」
「でも彼だけじゃないみたい。
もう交代したいって意見もあるし」
「オレはヤダね!
オレは何としてでも、
ここに居座り続けてやるから!
絶対に譲らねえからな!!」
「まあ神様のことだから…
急にってことはないと思うけどね」
「はい…書き…終わりました」
「はいはい…
では確かにお預かりします。
結果についてはこちらの住所に、
郵送させてもらいますので」
「わかりました…
よろしく…お願いします。
では…失礼します」
………
「行っちゃった…
何度来ても無駄なのに」
「実際、どうなんだろうね?
こうやって募集はしてるけど、
本当に入れ替えなんてあるのかなあ」
「あるわけないだろ?!
紀元前から変わってないんだぞ!
選手交代じゃないんだから!」
「だよね。
僕もそうだと思ってるんだけどね」
「ああ~これこれ」
「あっ!
神様!!
急にどうされたんですか?!」
「今しがた、応募の紙に目を通して、
この子はイケるかも…と思ってな」
「もしかしてさっきの子ですか?!」
「そうそう…
白黒の色合いで見た目も良いし…
目元とお尻がカワイイよね。
あと、あのおっとりした感じも」
「まあ…そうでしたね」
「そこで来年から、
あの子を採用しようと思っておるんじゃ」
「ウソだろ!!」
「ええ~!?
干支変わるんですか!?」
「だって…
パンダちゃん…カワイイから」
「いや、だからって!!
急に!!」
「そうですよ!
一体、誰と入れ替えるんですか!?」
「う~ん、そこなんじゃよ。
みんな代えがたいんじゃが…
ここは公平に…」
「公平に?」
「まさか…ジャンケン?」
「人気のないのに、
代わってもらおうかと」
「めっちゃ現実的!!」
「ええ~!!
血も涙もない決断!!」
「で、どうだろうね?
……ネズミくん」
「ウッソ~~!!
オレなの~!!」
ガンバレ~!
ネズミく~~ん!
負けるな~!
ネズミく~~ん!
つづく。
お疲れ様でした。