女の勘
【男性ターン】
男性二人。
「よう久しぶり」
「久しぶりだね…あれ?
何か雰囲気変わってない?
なに変わったか分かんないけど」
「何も変えてないよ。
気のせいだろ?
久しぶりだからでしょ」
「そうかあ。
で、急に話って何?」
「わるいな、急に。
実はさ…
オレ…彼女に浮気疑われてさ」
「浮気したの?!」
「してないしてない。
疑われただけ…
説明したら彼女も納得してくれたよ」
「何で疑われたの?」
「たぶん…
これ…彼女には内緒ね。
実は金曜日…
オレ、合コン行ったのよ」
「それ、浮気でしょ?!」
「ちがうんだって!
先輩が数足りないから、
お前も来いって…
無理やり連れてかれたの」
「そうなの?」
「仕方なく行っただけ」
「それ…彼女に報告した?」
「言わない言わない!
言ったら絶対、怒られるから」
「じゃあ、知らないはずなのに、
何で疑われたの?」
「そこが不思議なんだよ。
別に合コンで誰とも親しくなってないし、
連絡先も交換してないのに」
「移り香とか?」
「いやいや。
2日も残る香りってある?」
「ない…かなあ」
「それが不気味でさ。
それを聞いてほしかったんだよ」
「何なんだろうね。
女の人特有の、
第六感ってやつじゃない?」
「女の勘ってやつ?
だとしたら超怖いんだけど!
なに?
女性のオーラとか見えんの?!」
「それは分からないけど、
実は…
僕も同じようなことがあって…」
「合コン?」
「ちがうよ!
僕は…
たまたま…
ほんと、たまたま偶然…
成り行き上…
キャバクラに行ったのね」
「それアウトでしょ!
完全にクロでしょ!」
「ちがうんだって!
聞いて~!
会社の上司が…
取引先の人と盛り上がっちゃって…。
じゃあって…気付いたら、
そこがキャバクラだったの」
「行かなきゃいいじゃん」
「自分だけは無理でしょ?!
すいません、部長。
僕は彼女が怒るので帰ります…
って、言える?!」
「オレは言うね」
「合コン断れない人が、
それ言う?!」
「まあまあ…確かにそれは仕方がない。
でもそのキャバクラ行ったこと、
彼女にバレたってこと?!」
「いや、バレてないんだけど…
彼女が急に…
何かあった?…とか、
一昨日はどこ行ってたの?…とか、
聞いてくるんだよ」
「こわっ!
見られたんじゃないの?!
キャバクラ入るとこ」
「やっぱり、そうかな?
いや、僕も別に何事もなく、
帰宅して潔白だからいいけど…」
「いや。
それはウソだな」
「いやいや!
ウソじゃないよ!
お店を出て部長と取引先の人、
タクシー乗せて帰ったよ」
「キャバ嬢と…
ID交換したろ?」
「!!」
「やっぱり。
まあ、大体そうじゃねえ。
普通の男は」
「いや、だってあっちが強引に、
僕のスマホに入れちゃったんだよ」
「ほうほう。
それで?
そのID消した?」
「……消してない」
「それ、真っ黒じゃん!
期待してんじゃん!」
「いや、連絡が来るから、
返さないと悪いかなあと思って…」
「そんなの当たり前だろ。
キャバ嬢が客引きすんの」
「………」
「でも、何でバレた?
キャバクラに行ったでしょとは、
責めなかったのなら、
見られてないってことだよな?」
「そうか。
そうだよね…。
やっぱり、女の勘なのかなあ」
「こわっ!」
「こわいね!」
【女性ターン】
女性二人。
「久しぶり」
「久しぶりだね…って、あれ?
そのリップって…」
「これ、そう!
この前、話してたやつ!
やっと買えたの!」
「いい!
すごく似合ってる!」
「ありがとう。
そう言えば…前髪」
「あっ、これね…どう?
ちょっと変えてみた」
「印象変わった!
シースルーも似合う!」
「ありがとう…
彼には気付いてもらえなかったけど…」
「男性って…そうだよね」
「まあ…そうなんだけどね。
それで、どうしたの?
会って話したいって?」
「ごめんね。
実はさあ…何か…
最近…
彼が怪しんだよね」
「何、どうしたの?
浮気?」
「ちがう!…と思うんだけど…
ちょっと浮わついてる?…
というか…浮かれてる?」
「浮かれてる?」
「ご機嫌なの…彼。
何か、いいことあったっぽいけど…
その理由が分からないの」
「あれじゃない?
好きなゲーム買えたとか、
お腹いっぱい美味しいもの食べれたとか」
「それでは…ないと思う。
それはああいう感じじゃないの。
たぶん私は…
女性絡みだと思うの」
「やっぱり、浮気?!」
「ちがうの。
別に行動はいつもと同じなの。
でもね…」
「でも、なに?」
「眉毛が整ってたの。
先週の日曜日。
そんなの付き合い始めてから、
3回目のデートまでだったのに」
「それは怪しい!
絶対、女ね!」
「でも、浮気ではないっぽいんだよね。
愛情表現?…はいつも通りだし」
「じゃあなに?」
「分からないから、こうやって…」
「う~ん……
心配いらないんじゃない?」
「え!?
どうして?!」
「だって自分に対して、
いつも通りならそれでいいじゃない?
浮ついてたらどこかに、
ほころびが出るでしょ?」
「そうなんだけど…
何か気になるのよね…」
「それ言ったら私もあるよ」
「そうなの?」
「この前の金曜日かな?
夜中に彼に連絡入れたの。
でも、なかなか返信来なくて」
「うんうん」
「昔から…
マメに返信する人じゃないから、
その日は諦めて寝て…翌日。
急にそこから…
即返信が来るようになったの。
変じゃない?」
「う~ん、どうかな~。
それだけでは何とも~」
「でもね。
日曜日にデートしたの。
そしたらスマホ…
マナーモードにしてんの。
そして何回もトイレに行くの。
おかしいでしょ?」
「それは怪しい!
それは隠れて、
何かをしてる男性の特徴だよ!」
「そうだよね?!
でも決定的な証拠がないの」
「それは…難しい…」
「怪しいのは女の勘で分かるのよ。
でも、証拠までは辿り着けないの」
「じゃあ、あれね?」
「お願いできる?」
「いいよ。
私これ、ひとりじゃ使えないの。
真実を知るのが怖くて…」
「大丈夫。
私が付いてるから…。
安心して…
能力使ってちょうだい!
ほら、ちょうど2人が来た!
今よ!」
「………
………
………
さとりん さといも
すいっ すいっ すいっ!
さとっておとこが さとポッポ!
さとります!!」
「ん?どうした?」 「なになに?」
「………
………
………
2人とも…ギリギリセーフ」
「よかった~」
「???」 「???」
お疲れ様でした。