『竜とそばかすの姫』【考察】忍君にはお母さんが乗り移っている-3行ポジティブ日記
細田守監督作品『竜とそばかすの姫』ネタバレ感想です。
◆ ストーリー
内向的な女子高生鈴は友人の勧めでスマホアプリ<U>に登録する。<U>は登録者数50億人を超える巨大SNSで、会員たちはバーチャル空間でアバター(仮の姿)で交流を楽しんでいます。
<U> 内での鈴は歌姫ベルとなり一躍人気者となります。バーチャル空間での初ライブ中に突如竜と言う名の獣人が乱入してきます。彼はネット世界で言う荒らし行為を働いていてバーチャル空間では暴力行為を振るい、暴れまわっています。
なぜ竜は暴力的なのか、なぜ竜は時折寂しそうな眼をするのか、そんな竜をベル(鈴)は放っておけずそのあとを追っていきます・・・。
◆ 本当に恐ろしいスマホ依存
子供は父性と母性の両方の影響を受けて育ちます。鈴には母親がいません。幼い頃に川の事故で亡くなりました。鈴の父親は物語中父親らしいところが一つもありません(影が薄く、出てきても同じセリフしか言わない)。ですから鈴が内向的に育つのも不思議ではありません。
(※もう一つ父性・母性の影響の例を挙げると、エヴァンゲリオンのシンジ君。彼も母親を早くに亡くしていますし、父親も厳格過ぎます。その影響を受けて彼も内向的な性格に育ちました。)
性格が内向的で塞ぎ込んでいると、自分の枠組みから中々抜け出すことが出来ずに他者との関りを失い、どんどん自己肯定感が低くなっていきます。
私は鈴も自己肯定感が低い子だと思います。両親の影響に加えて <U> 登録初日にベル(鈴)の歌がバズってフォロワー数が爆増しますが、鈴は「たくさんの人が自分を批判している!」と批判コメントに大慌てします。大きな成功体験よりも、ネガティブな出来事にフォーカスするのは自己肯定感が低い証拠です。
自己肯定感が低いと、お酒、ギャンブル、ゲーム、スマホと言った簡単に手に入る刺激や快楽にドップリ浸かり、抜け出せなくなります。
家に閉じこもってゲームばかりしている自己肯定感が低い人がある日突然外の世界に出て「よし!就職するか!」とはなりませんからね。
私は鈴が歌がバズって、フォロワー数が爆増し、ファンの承認欲求などによる “一時的な” 興奮・快感・熱狂 ―― いわゆるドーパミン的幸福の中毒になり、 <U>から抜け出せなくなっていく・・・・という展開になると思っていたのですが、実際はそんな展開にならなりませんでした。これには全く予想を裏切られましたね!
◆ つながり・愛による幸福=オキシトシン的幸福
鈴の周囲にはいつも人がいます。親友でありよき理解者のヒロちゃんや、所属している地域の歌唱サークルのマダム達、そして何かと気にかけてくれるイケメン男子の忍くん。
人間はリアルに人とつながっていると幸福を感じます。この時脳内からはオキシトシンという物質が分泌されています。友情による結びつきや、地域コミュニティに所属している帰属意識によりオキシトシンが分泌されるのです。
ギャンブル、お酒、スマホ、ゲームなどのドーパミン的幸福は幸福感が長続きせず直ぐに切れてしまいます。一方でオキシトシン的幸福は低減しません。
例えば、去年政府から特別定額給付金として10万円貰えるというニュースが流れた時や実際に貰えた時は興奮して喜んだものですが、いまだにあの時の「10万円うれぴ~~~~~~~!!!!!」といった幸福感が持続してる人はいませんよね?(むしろ「おかわりはまだか!」ともっと!もっと!の状態になっている人もいると思います。)
オキシトシン的幸福は低減しません。オキシトシンは赤ちゃんを抱っこしている時などにも分泌されます。例えば10日間連続で赤ちゃんを抱っこしても赤ちゃんはかわいいです。11日目に突然「赤ちゃんキッッモ!!!」とはなりません。
私は人とのリアルな繋がり、オキシトシン的幸福が鈴(ベル)の精神を健全に保っていたのだと思います。
◆ イチ推し!忍君!
忍君とは鈴のクラスメートで、学校中の人気者!イケメン!女子の憧れ!スポーツ万能!の男子です。しかし私は彼の魅力はそんなところではないと思っています。
忍君は何かと鈴のことを観察していて、微妙な変化に気づき「何かあった?何かあったなら言ってよ」と気にかけて声を掛けてくれます。多くの世の男性はこの辺り鈍感で観察眼がありません。(よく言う恋人が髪を切っているのに気づかないというやつです。)
学校イチのヒロイン、ルカちゃんも忍君を「よく気づくお母さんみたいだね」と彼を評します。
また、忍君は鈴がベルであることをいち早く見抜きます。男性でありながら、この観察眼の持ち主である所が彼の最大の魅力なのです!
さらに物語の最後で難事件が解決して、少し大人になった鈴に忍君はこう言います。
「これでもう鈴のことを見守らなくてよくなった、これからは対等に付き合えるな。」
2人はまだ友達同士の関係で恋愛関係には発展していません。このタイミングでこのセリフは暗に、
「懸案事項も無くなったことだし、僕は君に安心した。これからは恋愛対象として踏み込んでいくからね。」
と言っているように聞こえます。もうね、キュンッッッッッッッッッッッッッッッキュンッッッッッッです!!!天才です!!!巧です!!!策士です!!!!!!!!!!!!エロいです!!!!!(?)
◆ 大人はアテにならない
鈴の父親は影が薄く、出てきても同じセリフしか吐きません。地域の合唱サークルのマダム達は鈴に「幸せってなに?」と問われるとみんな「えっと、えっと・・・」と慌てふためくだけで閉口してしまいます。サークル内で一番年長者のお婆さんも「この年になっても幸せなんて分からないわ」と答えます。老齢に達し、このサークルで一番の人生の先輩でも若者の素朴な疑問に答えられないのです。
物語最大の山場となる、鈴が一人で高知から東京の見知らぬ子供を救けに行くシーン。ここはかなりネット上でも賛否あるところですが、影の薄い父親が娘を信じて送り出すのは最大の功績だったと思います(現実的であったかは置いといて)。
なぜなら父性とは規律、規範を示すなどの他に「断ち切る」ものだからです。これが機能しないと子は地元や家にへばりつくようになってしまいます。(もし仮に鈴の父親が黙って飛び出して行った鈴に憤慨して「子供のお前のすることじゃない!!今すぐ戻ってこい!!」なんて展開になったら・・・恐ろしい事になっていたでしょうね。)アテにならない大人達の中でただ一度の最大の功績です。
◆ 人とのリアルな繋がりの大切さ
物語最大のトラブルも人とのリアルな繋がりによって乗り越えていきます。ここがこの作品の肝だったように思います。ご時世的に我々の日常生活はどんどん人とのリアルな繋がりが薄くなっていく一方で、ネットの方が重みを増しつつあります。ですが、ここで、今一度、リアルの繋がり、その大切さを見直す時だと私は思いました。
***2021/7/27追記***
本作品で賛否分かれるシーンについて私の感想を追記しました。
◆ ベルと竜がお城で歌いダンスするシーン
なぜかベルが竜を気に留める理由や、2人が親密な関係になったという描写も無く、ミュージカル映画さながらの歌とダンスのシーンが突然挿入された時は私も一瞬理解に苦しみました。
ベルの感情が論理を超越しています。これは女性脳的な感覚です。私は細田監督がこういう論理と感情をシームレスにつむぐ事が出来る物凄い感性を持っているのだなと思いました。
映画ならではの表現、細田監督の感性ならではの表現だと思います。そう思うと凄く美しいシーンです。
(※ 女性の脳は論理と感情のパイプが太いそうです。故にサプライズを喜んだり、突然のネガティブな出来事にヒステリックになったりします。
一方で男性は論理的に説明がつかないサプライズに理解出来ず、中には怒る人さえいると言います。)
(※ 全ての男性と女性を一括りにして物を言っているわけではないですよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!)
◆ 鈴がDVオヤジを追い払うシーン
「ただ突っ立ってるだけで、何もしてないのに敵が逃げ出すのはご都合主義」という感想も非常に多いですね。
あそこは精神的なバトルに打ち克(勝)ったシーンと捉えてます。ここに至るまでさまざまなことを経て辿り着いているので、抽象的なものからメッセージを汲み取ればとても胸を揺さぶるシーンでした。
「受けいれられない!」「意味が分からない!」と言う人は読解力や抽象的なものからメッセージを汲み取る能力が低いと言いたいわけではないです。
むしろ現実と照らし合わせてもある程度の整合性と納得感があり、伝えたいメッセージが込められた素晴らしい物語作品もあるので「それらと比べてこの作品は劣る!」という感想も凄く理解出来ます。
◆ 何が言いたいのかと言うと・・・・
映画は観終わった瞬間に始まります。(←私が大好きな名言、本の受け売りです。)賛否どちらであるにせよ、自分と違う感想を読むのはとても面白いです・・・!
※ 今回の映画感想は、下記の書籍を読んで得られた知識をもとに感想を書いています。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
ネット上でたくさんの感想を読みましたが、この方の感想はよく観察されていて凄い!!!!と感動しました。特にラスト3行!
参加希望者様、サークル概要はこちらを参照下さい!
< 3行ポジティブ日記(親切・感謝)>
・朝散歩気持ち良かった!
・映画面白かった~!
・映画観たあと久し振りに外食!お好み焼き食べた!美味かったぜ!
◆ 生活が困窮してでも本を買いたい私の欲しい本リスト ◆
もしご支援頂ければ優先順位を上げて必ず読了し、必ず自身にフィードバックさせ、このnoteにアウトプット記事を書きます。
https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/OW4CEODAEAJ7?ref_=wl_share