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小説集

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自作の短編、掌編小説を集めました。
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記事一覧

【小説】エターナルラヴァー

 わたしの妻は背が高い。女優でいうならアンジェリーナ・ジョリーに似ている。彫りの深い顔立…

【小説】はるかなる百名山

 「こんな美しい世界があったなんて・・・・・」  諏訪原は谷川岳の稜線から眺める大パノラ…

【小説】城ラン

 2009年、児玉義一は零細の家電メーカーに勤めている。自社では工場を持たない。商品企画だけ…

【小説】 ラッキー・ガイ

 山田耕助は5時半に起床した。今日は友人Aの結婚式である。山田はまだ結婚式と縁がない。独身…

【短編小説】 錆びたRK52

「いつ見ても、かわいそうになってきますね」 メカマンの佐藤良則が言った。 「なにがだ?」 …

【短編小説】 追憶のシルヴェスター・スタローン

 向井優(まさる)は映画館にいる。住んでいる市の中心地にあるシネマコンプレックスである。…

【短編小説】 祖父のコルベット

 「かっこいいよな、どの角度から見てもかっこいい」  橋本太一は感嘆のつぶやきを漏らした。太一は薄いブルーの車を凝視している。1965年式のコルベット・スティングレイである。通称C2コルベット。左右のフロントフェンダーが上に盛り上がっていて、リアはファストバック式のスポーツカーである。前から後ろまで流れるようなボディラインを持つ。  飽きずに眺めている太一の耳に祖父の言葉がよみがえる。  「この車は日系アメリカ人がデザインしたんだ。」  コルベットはアメリカのゼネラル

【短編小説】 白鳥の川

 「また今日も出勤するのか」  そう男は一人つぶやいて、壁の時計を見た。6時を指している…

【短編小説】 キックスタートのバイク

 男がバイクを走らせている。ここではライダーと呼ぼう。ライダーのバイクはヤマハSR400。先…

【短編小説】 父のGT-R

 わが家のガレージに一台の車がある。スカイラインGT-R、R32型。私が中学生のころに父が買い…

黄金の谷

 S男は走った。走る。逃げる。逃げつづける。足跡をなめるように銃弾が地に突き刺さっていく…

(ショートショート)数学ダージリン

 山田久夫は数学が嫌いである。小学生の時に3+6=36と答えて以来、数学アレルギーになった。…

(ショートショート) 信者ブラスバンド 

 「ブラスバンドを結成するんだ、この4人で」  急に閃いたように、山川が言う。  島田、…