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『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の思い出&オススメの桜庭一樹さん作品
こんにちは、古河なつみです。
お昼休憩中にTwitterを見ていたら懐かしい小説『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』がトレンド入りしていて、大変嬉しいです!
元図書館司書としても小説のタイトルが話題に上がるのは、非常ににやにやしてしまいます。
私は『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を最初に出版された富士見ミステリー文庫版と杉基イクラさんの漫画版を学生の時に読んだのですが「ひょ、表紙詐欺だ……!」とびっくりしたのは今でも覚えています。
何故なら初版の表紙デザインは……とっても可愛らしかったのです!
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当時、少女小説ジャンルでは『マリア様がみてる』のアニメが盛り上がっていたこともあり、オタク学生だった私は「この小説もきっと切ないシスターフッド物なんだろうな~」と思って読んだら物語冒頭で明かされるのは同級生のバラバラ死体が発見されるという……マリみてじゃなくて「ひぐらしのなく頃に」的な展開で食べたシュークリームが激辛仕様だったかのような衝撃を受けました(切ないシスターフッドなのは本当です)。
主人公のなぎさちゃんや藻屑ちゃんのやり取りの可愛らしさや、ヒリヒリするような問答がとても魅力的で「どうしてこの子が死んでしまうんだ……」と彼女たちの事を知れば知るほどラストで種明かしをされるのが嫌になった小説です。
何の力も持たないこどもが必死に弾丸を探している間にも、現実や大人が実弾を乱射してくる。
そんな世界で私たちは生き延びられるのだろうか?
そんな切実な声が、こどもの時に感じる焦燥が印象的で、きっと、学生時代に読んだからこそ共感できて、共感できた思い出を強く残してくれる物語だったと思います。
そして『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が刺さった方には桜庭一樹さんのこちらの作品もオススメしたいです。
『青年のための読書クラブ』桜庭一樹著
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聖マリアナ学園というお嬢様学校が舞台の小説です。
学園内でもちょっと浮いた存在である異端者だけが集う「読書クラブ」があり、代々受け継がれてきた「クラブ誌」に記されている過去の事件について、語られていく短編集となっています。
桜庭さんの描くシスターフッド&ボクっ娘を浴びるなら最初に挙げたい一冊です。
『少女七竈と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹著
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美しい少女「川村七竈(かわむら・ななかまど)」と彼女の存在によって人生が変わってしまった「七人の可愛そうな大人」を描いた作品。
とても耽美で、直木賞を受賞した『私の男』の片鱗が見え隠れしています。
タイトルから「ふむふむ七人の人生が狂わされるのか……」と思ってエピソードを読み進めながら人数を数えていると「おや?」と首を傾げる瞬間があるはず。その意味に気づいた時の「うわぁ……」な読後感は桜庭さんの真骨頂だと思います。
『小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集』桜庭一樹著
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そもそも桜庭一樹さんの強烈な世界観ってどこから来たんだろう?とディープなファンになろうとしている方へは桜庭さんが執筆された本の書評集をオススメします。「これが源泉だったのか……!」という発見や「この本面白そうだなぁ~」と新しいアンテナを立てられる一冊です。
最後に……
今回の記事で紹介した『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『青年のための読書クラブ』『少女七竈と七人の可愛そうな大人』の三冊は現在この表紙のバージョンが絶版になってしまっているのですが、学生の頃に読んだ思い出深い表紙だったのであえてこちらの表紙で紹介させていただきました。
現在も新しいデザインとなった文庫版は新刊でも買えるのでもし良ければお手に取ってみてくださいね(絶版バージョンはもしかすると……お近くの図書館で見る事ができるかもしれません)。
そして、桜庭一樹さんの特に初期作品の雰囲気がお好きな方は最果タヒさんの小説『星か獣になる季節』(こちらは男子学生が中心のお話です)もオススメです。
ここまでお読みくださりありがとうございました!
それでは、また。
古河なつみ
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