村上春樹さんの小説を図書館で順番待ちしている間に読みたい小説3選
こんばんは、古河なつみです。
村上春樹さんの新作小説『街とその不確かな壁』が発売されましたね。
私も書店へ行くのを楽しみにしているのですが、中には図書館で予約をして気長に待とう、と考えている方もいらっしゃると思います。けれど、人気の本はなかなか順番が回ってこないのが図書館の弱点でもあります……。
そこで、村上春樹さんの小説を待っている間にオススメしたい小説を3冊紹介します。
『最後の物たちの国で』ポール・オースター 白水社
主人公のアンナが兄を探しに行った国は、脱出できない悪夢ような国だった――というあらすじが添えられており、ディストピア小説と呼ばれる事が多い一作です。ただ、ディストピアと呼ぶには舞台となるこの国は静かで、ただじっと失われるのを待つだけの巨大なオブジェのようにも思えます。いなくなった人物を探しに行く、あるいは閉ざされた場所からの脱出を試みる、といった物語のエッセンスが村上春樹さんの新作『街とその不確かな壁』と響き合っている作品だと感じたので紹介しました(許諾済みの書影がなかったため割愛しております)。
『神秘大通り(上・下)』ジョン・アーヴィング 新潮社
メキシコのオアハカで育ち、やがて成功を収めた老作家が約束を果たすために旅に出て、過去の記憶を遡っていくお話です。サーカスのライオンに殺されてしまった妹や教会の掃除婦で娼婦でもあった母、等々、土地に根付く女神信仰や謎めいた美女との神秘的な体験が多く綴られている様子が、どこか村上春樹さんの『1Q84』を彷彿とさせる印象です。
『インディアナ、インディアナ』レアード・ハント twililight
村上春樹さんの代表作でもある『ノルウェイの森』の「僕」と「直子」の関係に深く通ずる繊細な愛の物語です。ノアという老人と彼の想い人オーパルについて語られる文章は、幻想的で深い余韻を残してくれます。うっかり流し読みをしてしまうと語られている内容や、込められている想いを見落としてしまうかもしれません。じっくり読書という行為に向き合いたいと感じている方におすすめの一冊です。
最後に……
上記のように図書館で村上春樹さんの新作小説を待っている方向けにおすすめしましたが、元図書館司書の立場から申し上げますと「本当に読みたい本が一年待ちなら買った方があなたのためになります」。長い間図書館業務に携わってきましたが、一年後に届いた人気の小説本を実際に借りに来てくださる方はとても少ないのです。図書館の本は忘れた頃に届く、という笑い話はよく耳にしましたが、忘れるくらいに待ってしまった本は、読んでみたい!と思える情熱すらも忘れ去られてしまっているので、読む気が起きなくなるのは当然です。他にも、長く待ちすぎたせいで期待値が上がってしまい、実際に読んだ時に「なんだ、一年待ったのにこの程度か」という抱かなくていいガッカリ感を覚えてしまったという方もいらっしゃいました。
読書はあくまで、その人が「この本を読みたい!」と感じた瞬間が一番身になる読書ができる時です。
どうかその機会を逃さずに、みなさまが楽しい読書ができるように元司書として願っています。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。
古河なつみ 拝