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ほうる
2019年2月2日 11:59
こんな夢をみた。年上の恋人はさわやかで、なかなかに聡明だった。ぼくたちはデートをし、街の小さなビジネスホテルに行きついた。部屋のベッドに腰かけて話していると、突然全館に放送が響いた。「これにて大会は終了します。大会は終了します。大会は…」恋人はぼくのスマホを手にとり、ホーム画面のゲームアプリを指さした。「これ、やった?」ぼくは黙って首をふる。気が向いていれたものの、ほとんど放置
2020年4月21日 14:45
僕の恋人は完璧だ。 完璧というのは,もともと傷の全くない宝玉を表していたらしい。すべらかでなめらかで,ほんのり琥珀色をした完璧な玉。恋人を完璧,と思うたび,僕はその玉に思いを馳せる。 国王はビロウドの椅子に座って,手の中に収めたその玉をうっとりと眺める。戦国の時代 ――― 争いに,人に,時代に疲れた王を唯一癒すのは,手の中で冷ややかに眠るその玉であった。力こそ全ての時代において,案外国王
2020年8月2日 02:22
一番古い記憶は,窓から見る雨の景色だ。すりガラスの向こうにぼやけて見えるのは,湿った夜の空と窓に当たる雨粒,そして,等間隔で妙にきれいに揺らめく街灯の光だった。分厚いえんじ色のカーテンと,かび臭いレースのカーテンを順番にくぐり,僕は窓の前に立つ。雨の匂いに惹かれて顔を寄せると,鼻がガラスにくっついて,ひやり,とする。とても悪いことをしているような,それでいて誇らしいような気持ちで,僕は