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『光る君へ』のために『ゴッドファーザー』を見た

北野武監督『アウトレイジ』はわりかし好きだった。『アウトレイジ 最終章』は劇場に見に行って、凄惨なシーンが近づく気配がすると薄目にし、いよいよの時にはバッチリ目を瞑っていたにも関わらず、なんとなく好き。ストーリーがどうこうというよりも、独特の台詞回しが生み出すリズム感が好きで見ていた。そろそろ帰ろう、とそれがわかる人に言う時は、アウトレイジから台詞を借りて「帰るぞ、木村。」と呼びかけたりする。もちろん、その人の名前は木村ではない。


そもそも最近アウトレイジシリーズのことを思い出したのは、『光る君へ』にハマりすぎて『ゴッドファーザー』を見たからだ。アウトレイジは日本のヤクザ、ゴッドファーザーはアメリカのイタリア系マフィアの話で、平安大河とはジャンルからして似ても似つかなそうだが、藤原道長役の柄本佑は、脚本の大石静から「ゴッドファーザーのアル・パチーノ」みたいな道長像にしたいとリクエストを受けたという記事を読んだ。さらば見ないわけにはいかないでしょう。


アマプラで「ゴッドファーザー」と検索してみると、どうやら3部作らしい。しかも昔の映画なので1本3時間ほどの長尺だった(第3作は少し短い)。仮に人に「ゴッドファーザーは良いよ、名作だよ!」と勧められたとしたら、確実に視聴の手を止めるレベルだが、わたしの『光る君へ』の入れ込み具合は相当なものなので、あっさり再生ボタンを押した。登場人物の数が多すぎる、かつ聞き慣れないイタリア系の名前のために、常々洋画で人の見分けがつかないわたしは途中かなり混乱しながらも、なんとなくで流すところは流し、5日かけて全作を見終えた。


発車させようとエンジンをかけた途端、爆発する車。高層階のガラス張りの窓の向こうから、ヘリコプターでの機銃掃射。あれ、これなんか見たことあるなというシーンがままあった。アウトレイジだったか、コナン映画でもこういうのあるよなあと思いながら見る。初作は1972年の名作映画を見て育った人たちが、今の映画を作っているんだということがよくわかる。


肝心の『光る君へ』との関連性については、主人公の兄弟関係が似通っている。主人公は、兄の死や自身の持つ類稀な才覚により、末っ子でありながら、なんなく父から「ファミリー」のトップの座を譲り受ける。同じく2人の兄(道隆・道兼)を持つ道長も、両人を抑えて政治のトップになっていくこととなり、ゴッドファーザーにおける兄たちの境遇や死と、道隆・道兼のそれが、どの程度オーバーラップされるのかが気になるところとなった。


また、既に過去の放送回で見えてきている通り、兼家は藤原家の「宿命」に生きるためならば手段を厭わないとんでもない父親であるが、道長は兼家のそのようなやり口を軽蔑する心がありながらも、彼を決して裏切らず、教えを乞い敬う態度を取る。はじめは父の生業からなるべく遠くで生きようとしたマイケル・コルレオーネも、ドンの座を引き継ぐにあたっては初代ゴッドファーザーたるヴィト・コルレオーネによくよくアドバイスを求めた姿に重なっている。


2作目の全体を通じて、ファミリーのドンとなって完全に目が据わったアル・パチーノの姿が印象に残っている。道長が藤原家の「宿命」であり、まひろから受け取った「使命」を果たすために、権力の座を上り詰めるにつれて、柄本佑の顔つきや眼差しがどのように変わっていくのかが楽しみである。


さて、今週末に公開されるクリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』のチケットを取らねばと、上映時間をいそいそと確認してみると、なぜか別スクリーンには「ゴッドファーザー」の文字が。なんと、「ギャングスター映画祭」と称して2024年3月29日(金)~4月4日(木)にゴッドファーザーシリーズと『アンタッチャブル』がリバイバル上映されるようだ。めちゃくちゃ疲れるだろうが、ゴットファーザーシリーズをスクリーンでぶっ通しで見たら、それはそれで楽しそう。洋画に強くておしりが強いゴッドファーザー未視聴の方がいたらおすすめしたい。


今回はあまりにとりあえずの全体把握のための視聴になってしまったので、頭が追いつかなかったシーンも見直すべく、あと1、2回は見直したいな〜と思う。それもこれも『光る君へ』のために…。(どんだけ好きなん)

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